「瞼の母(1952)」のストーリー

武州金町生れの半次郎は飯岡身内のものを斬ったため、喜八、七五郎の二人に追われ、江戸柳島妙見堂地内の水熊という料理屋へ逃げ込んだ。故郷の母に一眼会ったら斬られようと命乞いする半次郎の必死の言葉をきいた水熊の女主人おはまはなかにはいって彼を逃がしてやった。その時おはまが五歳のとき江州番場宿へおいて来た忠太郎という男の子が、いまはやくざに身を落としているときくが、忘れたことがないといった言葉を半次郎は忘れなかった。そしてくすしい縁で、再び喜八、七五郎に追いつかれたとき、助けてくれて、無事母親や妹に会わしてくれた旅人がその忠太郎だった。半次郎の言葉で忠太郎は、瞳をとじればその裏に浮かぶなつかしい母を訪ねて水熊をおとずれるが、折から一人娘のお登世の婚礼の日だった。木場の大家へもらわれて行くお登世にやくざの兄があってはと、おはまは心を鬼にして忠太郎を冷く追いかえした。忠太郎はこの婚礼に横槍を入れる無頼漢の弥八を追うっぱらってやったことに、兄らしいよろこびを感じて立ち去ろうとするが、折から聞こえるおはまのうつ法華太鼓に、思わずひきつけられて引きかして行った。もうあえないとあきらめた忠太郎の姿に、おはまは最草自分をおさえることが出来なかった。二人はひしと抱き合ったのだった。