「情炎峡」のストーリー

浪曲界の権威立花春月の門下で未来を嘱望されていた右近は、師匠筋の曲師光江と愛し合い、光江が右近へ走ったことから、破門され、全国の浪曲界から閉め出しを喰って流浪の旅をつづけた。その苦しい旅寝に、彼は「情炎峡」の新曲を作るのに精進した。光江は無理な生活がたたって病をえたが、右近のあたたかい看病に光江は幸福だった。しかし偶然に会った春日とその曲師トミ子にすすめられ、右近を世に出すため、光江はひとまず姿を消した。光江を失った右近は自棄におちいったが、網元の長谷川清蔵に救われ、自分の浪曲に素朴な賛美を送ってくれる漁師たちの姿を見て心機一転、やがて浪曲名人会で「情炎峡」を語って絶賛をあびた。トミ子のはからいで、右近は臨床の光江に再会し、成功のよろこびをわかち合うのであった。