「伊豆の艶歌師」のストーリー

伊豆の温泉町を流す艶歌師たちの常宿春風楼という安宿は彼等の親分格飛島の経営だったが、実際はスイバレの力という男が縄張りをおさえて、横暴の限りをつくしていた。力は土地の売っ子芸者もとめをつけまわしていたがもとめは同じ艶歌師の潤を愛していた。潤は力にたいして弱い仲間をかばってやって皆から親しまれていたが、殊に胸を冒されている相棒の新吉のことを心配していた。その新吉も、愛人の菊江と妹美也子と一緒に住めるようになったが、潤を眼の敵にする力と最後の対決を迫られたとき、新吉が重態の体でとび出して来て力を刺殺してしまった。それが新吉の潤への感謝の気持ちだった。新吉の死は、美也子や菊江には深い悲しみだったが、潤はもとめと新しい生活へ出発し、力のいない春風楼には明るい空気がただようようになったのだった。