「大阪の風」のストーリー

大川清吉は、関西食品KKの実直な社員である。ある日、壷田課長から呼び止められた。越年資金の組合運動に対する不参加の勧告だった。長男の一郎を東京のメリヤス問屋に推薦してくれたこともあり、清吉はしたがわざるを得なかった。また、課長夫人の紹介で、娘の久子と関との見合話が起った。が、この見合いは当日関が現れずお流れとなった。その上、清吉は組合運動に参加したとの理由で東京支社に転勤を命ぜられた。清吉は、妻と一郎とともに上京した。久子は知合いの旅館で帳場の手伝いをすることになり、高校生の次郎は大阪へ残った。家は緒方花子という派手な女性に貸すことになり、次郎は二階へ住んだ。花子は豊太という男の妾だった。そんな二人の男女の空気に、感じ易い年頃の次郎は傷ついた。が、彼も同級生の京子には好意を持っていた。その京子も、次郎の上京中に転校して姿を消した。しばらくして、一郎が会社をやめて帰って来た。二人は豊太の追放を策した。権利金十万円を返さねばならない。その金は、父の退職金で返済することになった。清吉は会社から勇退を勧告されたのだ。花子は引越して行った。ある時、久子は関に会った。見合の日は、関の子供が交通事故を起して出席できなかったのだという。関は再婚なのだ。関は壷田を通して、見合いのしなおしを頼んできた。だが、久子は東京へ移って以来交際している香山との結婚の意を明らかにした。それでも、関は近く消火液販売を始める店を清吉に任せるといった。一郎の新しい就職先も決まった。次郎には京子から便りが来た。ただ一人清吉だけは、なぜか苦虫顔で関の店へ出勤して行ったのである。