「伝七捕物帖 女肌地獄」のストーリー

江戸の町には花嫁誘拐事件が続発した。現場には獣の毛が落ちている以外に何らの手がかりもない。現場を検分に行った伝七は、帰路、女の変死に出会った。女は湯女・おしげで、下っ引の又八と駈け落ちの途中で難にあったことが分った。伝七はおしげの友人・おくめから事情を聞こうとしたが、おくめも見知らぬ男に狙われているという。--廻船問屋近江屋庄左衛門の娘おれんと伊勢屋菊太郎との祝言の夜、伝七の目の前で花嫁が掠われた。行方不明になっていた又七の死体も発見された。その腹巻には阿片が隠されてあった。同じ夜、吹矢で殺されたおくめの懐中からは、おしげから預ったという成田山のお札が失くなっていた。吹矢の猛毒と阿片から、伝七はその裏に大がかりな阿片密輸事件がひそんでいると睨んだ。奥山一帯を探索中、男の死体を見つけた。阿片中毒の権威として名高い医師・尾形玄庵の目利きの結果、男は阿片中毒者と分った。奇妙な守札も首にしていた。伝七は、かねてから目をつけていた奥山の酒場「長兵衛」が阿片窟であり、守札もそこから出ていることを知った。だが危険と感じた元締は、女将のお蝶に命じて店を閉め、地獄極楽の生人形の見世物に転向した。生人形の見物に出かけた伝七は、怪しい人形作り六兵衛を見つけこれを追ったが、お蝶配下の弥五郎たちに邪魔された上、折から突発した火事に阻まれ見失った。事件にお蝶一味が関係あることを見ぬいた伝七は「長兵衛」に駈けつけた。お蝶の姿はなく、複雑な仕掛けのある地下道が発見された。その内部には、さまざまなポーズの女肌人形、失心した花嫁たち、釜に薪をくべる六兵衛の姿があった。六兵衛の仮面をはぐと、それはなんと、尾形玄庵であり、近江屋庄左衛門であった。麻薬密輸の陰謀から彼は一人三役を演じていたのだ。間もなく一味が一網打尽となったのは云うまでもない。