「暗殺 リトビネンコ事件」のストーリー

2006年11月23日、ひとりの男がロンドンで放射性物質ポロニウム210を飲まされて暗殺された。彼の名は、アレクサンドル《サーシャ》・リトビネンコ。イギリスに亡命中の元FSB(ロシア連邦保安庁)中佐である。リトビネンコは、チェチェン戦争の裏側にある、FSBとプーチン政権の腐敗を告発した男であった。「悪夢以上のことがサーシャの身に起きてしまった」監督であるアンドレイ・ネクラーソフは語り始める。1998年、リトビネンコはテレビでFSB上司の汚職や殺人指令を告発。翌年、第2次チェチェン戦争の引き金となったモスクワでのアパート連続爆破事件もFSBの工作だと主張し、その後イギリスへ亡命する。ネクラーソフは、政商ボリス・ベレゾフスキーを介してリトビネンコに連絡を取り、インタビューを開始。汚職、暗殺計画、そして国家を戦争へと駆り立てるFSBの実態を語るリトビネンコ。彼の言葉は、そのまま歴史の回想と交差する。一方、ネクラーソフはチェチェンの戦争犯罪を報道・告発してきたジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤにもインタビューを試みる。「劇場占領事件の犯人のひとりが今プーチン政権で働いているの」「書いていて吐き気がしそうだったわ」と語った彼女は、2006年10月、自宅のアパートで何者かに銃殺される。ロンドンのバーで、リトビネンコの紅茶にポロニウム210を注いだと容疑を掛けられているアンドレイ・ルゴボイは、モスクワでのインタビューで暗殺の関与を否定した。イギリス捜査当局は、ロシアに対してルゴボイ容疑者の引き渡しを求めているが、ロシア政府はそれを拒否している。リトビネンコの妻マリーナは「ポロニウムはどこから来たの?」と一筋の涙を流しながら訴えるが……。