「君を想って海をゆく」のストーリー
2008年2月、17歳のイラク国籍のクルド難民ビラル(フィラ・エヴェルディ)は、恋人ミナが住むロンドンを目指し、フランス最北端の都市カレにやってくる。イギリス渡航を望む多くの難民が、カレの港で住居を持たずに暮らしていた。ビラルは偶然再会した同郷の友人とともに密航を図るが、失敗する。イラクが戦争により荒廃しているため送還を免れたビラルは、英仏海峡を泳いで渡る決心をする。かつては高名な水泳選手だったフランス人シモン(ヴァンサン・ランドン)は、今は市民プールで子供や老人に指導している。妻マリオン(オドレイ・ダナ)とは別居しており、離婚調停中だ。ビラルはシモンにレッスン料を払い、クロールの指導を仰ぐ。シモンはビラルの目的を知ると、真冬の海を10時間も泳ぐことはできないと忠告する。しかし、ビラルは練習を続ける。シモンは、難民支援のボランティアをするマリオンの心を取り戻すために、ビラルの手助けをしているに過ぎなかった。そんなシモンの家に招かれたビラルは、イギリスでマンチェスター・ユナイテッドに入団したいという夢を語る。翌日、隣人の通報により、シモンは警察に呼び出される。警官代理官(オリヴィエ・ラブルダン)は、シモンの行為は不法入国者に手を貸すことであり、犯罪であると警告する。しかし、シモンはビラルの指導を続け、いつしか2人の間に父子のような感情が芽生える。そしてついに、ビラルの出発の日がやってくる。