「ダニエル・シュミット 思考する猫」のストーリー

1941年、グリソン山脈の観光都市フリムスにあるホテル経営者の一族に生まれたダニエル・シュミットは、祖母がしてくれる話に刺激され、ホテルのロビーをステージに国際色豊かな客たちをキャストに見立てて物語をつくった。やがてシュミットは波乱の多い人生を過ごし、独特な作品を残す物語作家となる。本作は、フリムス山の灰色の岩、パリの古い映画館の光溢れるスクリーン、東京のぎらぎらした摩天楼など数多くの貴重な映像と、異色の経歴を物語る数々の記憶からなる映画的な旅である。映画はグリソン山脈にあるベルエポックのホテルで過ごした幼少期に始まり、平和なアルプスから1960年代の騒乱吹き荒れるベルリンへの逃亡、映画への愛、ニュー・ジャーマン・シネマの担い手の一人である映画監督ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーとの出会いを描く。さらに1970年代パリの歓楽街、モロッコ、ポルトガル、故郷グリソン山脈での撮影の模様と足跡をなぞる。また、彼のミューズであったイングリッド・カーフェン、カメラマンのレナート・ベルタ、親友であり映画監督のヴェルナー・シュレーター、女優ビュル・オジエ、映画研究者の蓮實重彦らがシュミットについて証言するインタビューも収録。そしてシュミット自身の声で、彼の人生と作品の映画的探求についても語られる。