解説
旅回りの道化師と一人の女をめぐって人生の哀歓をつく、五四年ヴェニス国際映画祭サン・マルコ銀獅子賞、五六年ニューヨーク映画批評家協会最優秀外国映画、五六年アカデミー最優秀外国映画賞各受賞の話題作。「無防備都市」「戦火のかなた」のシナリオを執筆したフェデリコ・フェリーニとトゥリオ・ピネリが原案、脚本を書き、同じくフェリーニが監督した。撮影は「恋愛時代」のオテロ・マルテリ、音楽は「戦争と平和」のニーノ・ロータ。主演は「ノートルダムのせむし男」のアンソニー・クイン、フェリーニ監督夫人のジュリエッタ・マシーナ、「白鯨」のリチャード・ベイスハート、「ファビオラ(1948)」のアルド・シルヴァーニ。
「道(1954)」のストーリー
貧しい上に少々足りない娘ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)は、オートバイで旅まわりをする曲芸師ザンパノー(アンソニー・クイン)の助手となって旅に出た。ザンパノーの呼びものは、胸の力で鎖を切ること、それに疑い深く、狡猾と欲情にこりかたまった男である。彼はさっそく暴力によってジェルソミーナを妻にし、金ができれば他の女を追いかけまわしている。ジェルソミーナのやさしい心も彼には通じない。脱走してもつかまってしまう。ちょうどその頃、二人は小さな曲馬団に参加した。ところが、その一団にいる若い綱渡り--人々から「キ印」と呼ばれている青年(R・ベイスハート)が、ことごとにザンパノーをからかい、彼が怒るのを見て手をたたく。本能的に、彼はザンパノーが気にくわないのだ。しかしジェルソミーナは、「キ印」がひくヴァイオリンの哀しいメロディに引きつけられ、彼と親しく口をきくようになる。「キ印」は彼女に、この世のどんなつまらないものでも、役に立つ時があるのだ、と語った。頭の足りないジェルソミーナも、この言葉には胸をうたれた。自分の運命はザンパノーと共にある……。「キ印」とけんかし、再び旅に出たザンパノーについて、彼女も苦しい日々を送りつづける。ところがある日、途上でザンパノーと「キ印」は顔をあわせた。そしてザンパノーは、怒りのあまり「キ印」を殺してしまった。誰も見てはいない。ザンパノーのオートバイは旅から旅へと逃避行をつづける。しかしこの事件はジェルソミーナに大きな打撃を与えた。昼も夜も泣き通しである。遂にもてあましたザンパノーは、雪の埋った山道に、彼女を棄てて去った。それから数年後、年老いたザンパノーは、ある海辺の町で、ジェルソミーナが好んで歌った「キ印」のヴァイオリンのメロディをきいた。聞けば、四、五年前この町で病死した気違い娘が、いつもこのメロディを聞かせていたという。その夜、酒に酔ったザンパノーは、海浜に出て、はじめて知る孤独の想いに泣きつづけるのであった。
「道(1954)」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
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キャスト | 役名 |
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「道(1954)」のスペック
基本情報 | |
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ジャンル | ドラマ |
製作国 | イタリア |
製作年 | 1954 |
公開年月日 | 1957年5月25日 |
上映時間 | 108分 |
製作会社 | ポンティ=デ・ラウレンティス |
配給 | イタリフィルム=NCC |
レイティング | |
カラー/サイズ | モノクロ |
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