解説
幕末から大東亜戦争に至るまでの日本の歩みを、北九州のある一族の姿を通して描く。監督は「歓呼の街」の木下惠介。出演は田中絹代、笠智衆。戦意高揚映画として制作されたが、クライマックスでの出征する息子を追いかける母の描写でそれを完全に裏切った。これにより木下惠介は軍に睨まれる。
ユーザーレビュー
「陸軍」のストーリー
慶応2年。九州小倉では、城下が長州の奇兵隊による攻撃に晒されていた。それを下関海峡で虎視眈々と漁夫の利を狙う英米欄仏の軍艦。奇兵隊の上陸におびえ逃げ出す準備をしている商家・高木屋に旧知の手傷を負った武士・竹内が転がり込んでくる。竹内は形見として水戸光圀編纂の『大日本史』を亭主の友助に譲り、息子の友之丞に「自分は殿への忠義のため死ぬが、これからの若い者はもっと大きなものに忠義を尽くしてくれ」と言い残し立ち去る。30年後の明治28年。日清戦争直後のある日、生き延び成長した友之丞は、三国干渉によって遼東半島を清に返すことになったことを聞かされ、大いに憤慨する。その抗議に旧知の山県有朋を訪ね東京に出た友之丞だったが、そこで倒れる。急遽見舞いに上京した息子の友彦は自分は軍人になりたいと伝え、友之丞を喜ばせる。宮城への挨拶をすませた友彦は病院に戻るが、既に父は亡くなっていた。「立派な軍人になれ」が父の遺言であった。そして10年後の明治37年。日露戦争が勃発。友彦も陸軍歩兵大尉として出征したが、病気のため前線で働くことが出来ず、失意のまま帰国する。高木屋は友彦が保証人としてかぶってしまった借金のため傾いていたが、せっかく助力を買ってきた小松屋とは、航空機に関して軍を批判されたことに腹を立てた友彦が喧嘩別れをしてしまう。友彦は借金を清算し質屋を辞め一から出直すことを決める。それを聞いた妻のわかも賛同する。十年後。福岡に居を移した一家は雑貨屋を営んでいた。長男の伸太郎は心優しいが気弱な性格に育つ。友彦とわかは、時に厳しくも優しく見守るのだった。友彦は地元の実業家で愛国者の櫻木常三郎が設立した工場の奉公団の指導者となることを進められる。面接に上がった友彦だったが、櫻木も友彦と同じく頑固者だったため二人は些細なことで喧嘩をする。が、その頑固さを気に入った櫻木は友彦を雇うことを決めるが、臍を曲げている友彦は固辞する。祭りの夜、偶然櫻木一家を見かけた友彦は、櫻木の親孝行の様を見て、明日から出社することを櫻木に伝える。さらに10年後、家業を手伝っていた伸太郎は晴れて陸軍に入隊する。それを喜ぶ両親。友彦は奉公団の指導者の仕事を続けていが、櫻木とはまたも些細なことで口論となり職を辞する。そして日中戦争が勃発。上等兵となった伸太郎が帰宅する。喜びながらも、先に櫻木の子供・常吉が出征したことを知った友彦は伸太郎を叱責する。伸太郎は自分や常吉のためにも、友彦が櫻木と和解することを請う。櫻木は志願して下関で軍事物資の荷揚げを手伝っていた。そこを訪ねた友彦は戦友の仁科と出会う。友彦と櫻木は和解する。伸太郎の出征が決まる。最後の家族団らんの夜、伸太郎は母の肩を叩き、父は軍人として立派に死ぬことを諭すのだった。翌朝。わかは出征の見送りに出ずに店の準備をしていた。悲しさを紛らわすわかの耳に出征の行進曲が聞こえてくる。わかは居ても立っていられずに走り出す。大通りを進む隊列と、それを日の丸を振りながら見送る群衆。追いついたわかは伸太郎の姿を探す。伸太郎を見つけたわかは必死に追いかける。ようやく追いついたわかの姿を見て伸太郎は微笑む。わかは必死に付いていくが群衆の波に巻き込まれ引き離されてしまう。離れていく息子の背中に涙を流しながら拝み続けるわかだった。
「陸軍」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
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キャスト | 役名 |
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