制作年: 2007
1973年ルー・リードはアルバム『ベルリン』を発表。それは商業的に失敗に終り、彼は33年間ライブでの演奏を封印した。2006年の12月、5日間に渡りブルックリンのセイント・アン・ウエアハウスでルー・リードは、この名作を初演した─。そのライヴの模様を記録したドキュメント。監督は「潜水服は蝶の夢を見る」のジュリアン・シュナーベル。彼自ら『ベルリン』の独特の世界を再現すべくステージセットも担当している。ヴェルベット・アンダーグラウンドを脱退後、ソロ・アーティストとしてのキャリアのピークを迎えようとしていたルー・リードは1973年、まさに時代を先取るような野心的なアルバムを発表する。『ベルリン』─バイセクシャル、ドラッグ、暴力に彩られた背徳の愛の物語りが、10曲の収録曲に散りばめられた、正に“ロックオペラ”と呼ぶにふさわしいコンセプチャルなものだった。東西に分断されたベルリンの夜を、男女の無限の夜へと置き換えた小説のごとき内容に聞き手はショックを受けた。一部批評家の賞賛を得ながらも商業的には失敗し、ルー・リード自身、『ベルリン』に収録された楽曲をステージで演奏する事は、その後なかった。しかし、このアルバムはルー・リードの最高傑作としてだけでなく、70年代のロックを代表する伝説的な作品として語り継がれていく。2006年、真冬のニューヨーク。33年の年月を経て、その伝説が再現される。5日間に渡りルー・リードは『ベルリン』の全曲ライブ・パフォーマンスを敢行したのだ。またエマニュエル・セニエが出演するショート・フィルムをシュナーベルの娘ローラが手がけ、ステージで繰り広げられるすさまじきエネルギーにあふれるパフォーマンスを彩ると同時に、その“背徳の愛の物語”を映像として表現している。