制作年: 2009
自作の潜水艦を作って黒海に潜ることを夢見るウクライナの男性の姿を追ったドキュメンタリー。監督はヤン・ヒンリック・ドレーフスとレネー・ハルダー。ウクライナの中央に位置するエヴゲイニフカ村に住むウラジーミル・ピリペンコさんは62歳の年金生活者。現役時代、彼は集団牧場でクレーン車の運転手をしていたが、今では村の皆と同じように、地に足の着いた物静かで家庭的な人間である。だが、彼は自分で作った潜水艦で黒海に潜ることを30年も前から夢見ていた。技術者としての訓練は全く受けていなかったピリペンコさんだったが、70年代の雑誌“水中スポーツマン”の記事を参考にして、独力で潜水艦を作ってしまう。貯めた年金をやりくりし、古い部品を買い集め、自家栽培のキュウリと交換したスペアパーツや、キュウリを謝礼に依頼した修理によって成り立った潜水艦は、細部に至るまで小さな歴史が刻まれている。やがてその潜水艦は、クリミア沿岸に広がる草原に、古くてガタのきた穀物運搬車に引かれて辿り着く。この場所と黒海の海底の間には1000メートルの高度差がある。ピリペンコさんと潜水艦は、いま新たな挑戦に乗り出そうとしていた……。