深作欣二 フカサクキンジ

  • 出身地:茨城県水戸市千波町
  • 生年月日:1930/07/03
  • 没年月日:2003/01/12

略歴 / Brief history

【日本の戦後を暴力描写で総括したエース】茨城県生まれ。五人きょうだいの末っ子。水戸中学3年の時に工場へ勤労動員、米軍の艦砲射撃に「気が狂いそう」なほど怯えながら戦闘機の機関銃を作る。戦後、学業の意欲が湧かず鬱屈する時期に映画と出会い、1949年に日本大学芸術学部映画科へ。ロッセリーニの焼跡リアリズムに大きな衝撃を受ける。53年に東映入社。事務職が苦痛で現場を志願、翌年、東京撮影所助監督部に。40本近い現場で働くが巨匠の作品に付けず、メーデーに参加しても面白くなく、やはり鬱屈の日々だったという。61年、ニュー東映の中篇「風来坊探偵・赤い谷の惨劇」を撮る。デビュー後もしばらく身が入らなかったが、東撮に移籍して来た石井輝男の活躍に刺激を受ける。「誇り高き挑戦」(62)、「ジャコ萬と鉄」(64)と次第に手応えを?み、スラム育ちの三兄弟が憎み合う「狼と豚と人間」(64)を監督。これが会社を怒らせ、一年以上干される。この間に女優の中原早苗と結婚。東映と本数契約になった復帰後は、東撮で鶴田浩二主演の現代任侠物を手掛け、松竹で「黒蜥蜴」「恐喝こそわが人生」(68)などを撮る。舛田利雄に請われて協力した「トラ・トラ・トラ!」(70)のギャラで原作権を買い、独立プロ作品「軍旗はためく下に」(72)を監督。戦争の風化で弱者の声が抹殺される怒りを初めて存分に描き、高く評価される。任侠美学が理解できず東映の本流に乗れずにいたが、「一番悪い奴が主人公」という狙いと、任侠路線の次を模索する会社の方針がようやく一致。菅原文太主演「現代やくざ・人斬り与太」(72)が、大きな路線転換の起爆剤となる。【アクションといえば深作、最後まで疾走】実録路線の頂点は、広島やくざ抗争20年の記録を暴力による戦後史と捉えた「仁義なき戦い」(73~74)5部作。沈滞していた日本映画全体を活気づける大ヒットとなり、勢いに乗って新シリーズや「仁義の墓場」「県警対組織暴力」(75)などを連発。一躍カリスマ監督となる。以降は押しも押されぬ大家として「柳生一族の陰謀」(78)、「復活の日」(80)、「蒲田行進曲」(82)、「里見八犬伝」(83)、「火宅の人」(86)などを発表。どんな題材にも躍動感を注ぎ込むスタミナで、幅広い層の観客を呼ぶ。90年代に入ると野良犬アクション「いつかギラギラする日」(92)、落伍者の立場から描く「忠臣蔵外伝・四谷怪談」(94)で原点回帰の姿勢を見せる。珍しく劇中に死者の出ない文芸ドラマ「おもちゃ」(99)の次作は、中学生が殺し合う近未来バイオレンス「バトル・ロワイアル」(00)で、物議を醸しながら大ヒット。前立腺がんであることを公表して続編に臨むが、クランクイン直後に入院、2003年1月に死去。続編「バトル・ロワイアルII【鎮魂歌】」は息子の健太が引き継いで完成させた。

深作欣二の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 美輪明宏ドキュメンタリー 黒蜥蜴を探して

    制作年: 2010
    美輪明宏の数奇な人生を、インタビューやアーカイブ映像を交えながら追うドキュメンタリー。1968年の深作欣二作品「黒蜥蜴」で妖艶なヒロインを演じていた彼はジェンダー問題に果敢に立ち向かい、俳優、歌手、テレビ出演、エッセイの執筆など50年にわたる活動を通して、魅惑的な人物のアイコンであり続けている。2011年11月19日より、シネマ・ジャック&ベティにて日本初のプレミア上映をした。
  • バトル・ロワイアル3D

    制作年: 2010
    高見広春の同題小説を映画化し、2000年に大ヒットしたバイオレンス・アクションを3D化。無人島で殺し合いをすることになった中学生たちの死闘と運命を描く。監督は「おもちゃ」の深作欣二。出演は、「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」の藤原竜也、「最終兵器彼女」の前田亜季、「アウトレイジ」のビートたけし。
  • バトル・ロワイアルII 鎮魂歌

    制作年: 2003
    新法の下、戦うことを余儀なくされた子供たちの苦悩を描いた青春アクションの続編。監督は、本作撮影中に他界した「バトル・ロワイアル 特別篇」の深作欣二と、後を引き継ぎ監督デビューした深作健太。脚本は、深作健太と「記憶の音楽 Gb」の木田紀生の共同。撮影を「卒業」の藤澤順一が担当している。出演は、藤原竜也、前田愛、忍成修吾、竹内力ら。後に20分の未公開シーンを加えた再編集版「バトル・ロワイアルII【特別篇】REVENGE」が製作され、2005年にDVDで発表されている。
  • バトル・ロワイアル 特別篇

    制作年: 2001
    様々な話題を呼び、興行収入25億円、180万人以上を動員した大ヒット作「バトル・ロワイアル」に、未公開シーンと追加撮影されたシーンを加えた特別篇。主人公・七原の友情や哀しみ、光子の過去などが、より深く描かれている。
    70
  • バトル・ロワイアル

    制作年: 2000
    新法の下、無人島で殺し合いをさせられることになった中学生たちの混乱と、やがてそこから生まれる生きる力を、メッセージ色豊かに描いたバイオレンス・アクション。監督は「おもちゃ」の深作欣二。高見広春による同名小説を、深作健太が脚色。撮影を「菊次郎の夏」の柳島克己が担当している。主演は、「仮面学園」の藤原竜也と「風を見た少年」の前田亜希、「御法度」のビートたけし。第24回日本アカデミー賞最優秀編集賞、第74回キネマ旬報日本映画ベストテン第5位、第43回ブルーリボン賞作品賞、新人賞(藤原竜也)受賞作品。
    70
  • おもちゃ

    制作年: 1999
    昭和33年の京都の花街を舞台に、置屋で下働きする少女が様々な経験を通して、やがて舞妓となるまでを描いたドラマ。監督は「忠臣蔵外伝 四谷怪談」の深作欣二。原作・脚色は「生きたい」の新藤兼人。撮影を「時雨の記」の木村大作が担当している。主演は、新人の宮本真希と「あ、春」の富司純子。第11回東京国際映画祭最優秀女優賞(宮本真希)、第43回アジア太平洋映画祭最優秀助演女優賞(富司純子)受賞、芸術文化振興基金助成作品。