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【第9回】みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ
2021年4月2日2021年に、日活ロマンポルノは生誕50年の節目の年をむかえました。それを記念して、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げる定期連載記事を、本キネマ旬報WEBとロマンポルノ公式サイトにて同時配信いたします。 第9弾は、衛星劇場の協力の下、みうらじゅんがロマンポルノ作品を毎回テーマごとに紹介する番組「グレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」の過去の貴重なアーカイブから、公式書き起こしをお届けしたします。(隔週更新予定) 2012年6月放送、第9回のテーマは「ロマンポルノ界の○○」 どうも、みうらじゅんと申します。「グレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」第9回目の特集は「ロマンポルノ界の○○」。何でしょう?お楽しみにご覧くださいませ。 生まれた瞬間から始まる、余生へのカウントダウン。残された人生をよりハッピーエンド&グレイトにすごすため、男たちの永遠のバイブル!日活ロマンポルノ青春ロードショー!今晩のオカズは「ロマンポルノ界の○○」。その容姿に秘められたスターの面影。最強の称号を手に入れたセクシーヴィーナス大集合。官能の世界に舞い降りた奇跡!妄想と現実の世界が織り成す、夢のバーチャルエロス!行けなくてもいい。無理やりでもいい。俺の息子よ大きくなれよ! 今回はですね、第9回「ロマンポルノ界の〇〇」。〇〇って書いただけで、かつて山城新伍さんはコレを「チョメチョメ」と読んだ時代がありましたけど。あれ「XX」でしたっけ? 〇〇二つ続くと、何が入るのかなって。三つ〇〇○と続くと、あれだなぁなんて思う人いると思うんですけども。 今回はですねこういうことですよね。山科ゆりさんの『真夜中の妖精』をおかけするんですけども、山科ゆりさんが1973年製作の『真夜中の妖精』に出てた頃に、ロマンポルノ界のなんて呼ばれてたということですよね。これは、全国模試に多分出ると思いますんで、是非ともこれ覚えていって下さい。「ロマンポルノ界の吉永小百合」ということで、時代をちょっと感じますけども。まあ清純なイメージのうたい文句なんでしょ。山科ゆりさんの『真夜中の妖精』、かなり見た後、気持ちがドンヨリしてしまいます。それだけは言っときます。ちょっと若い方はトラウマになってしまう可能性があるので、気をつけてください。 さあ、次でございます。日向明子さん。日向というのは、おそらく宮崎県の方なんじゃないかなと当時から思っていたんですけど。この方は、「ロマンポルノ界の百恵ちゃん」。髪型なんですかね。当時ショートでパーマを少しかけておられました。唇のポッテリ度もあり、「百恵ちゃん」って当時呼ばれてたんでしょう。『百恵の唇 愛獣』。「あいじゅう」って読むんですかね?当然、怪獣の次は、愛獣になるんでしょ。そこに出られているもう一人の方が、泉じゅんさん。泉さんも「ロマンポルノ界の○○」と呼ばれておりました。「ロマンポルノ界の水沢アキ」。いまではどちらもご存知ない方が多いかと思いますが、この方は本当、かわいくて、脱ぎっぷりがよくて、大変お世話になりました。 次は、『ひと夏の体験 青い珊瑚礁』に主演されていた寺島まゆみさん。ちょっと前にスキャンティーズの特集もしましたけれども。「ロマンポルノ界の聖子ちゃん」でしたね。やっぱり百恵ちゃん、聖子ちゃんに集中しているということがわかると思います。 そして『ズームアップ 暴行白書』。風祭ゆきさん「ロマンポルノ界の松坂慶子さん」って呼ばれていたんですね。この作品観てましたけど、当時話題になっていた「美人すぎる深夜放送のDJ」と呼ばれていたあの方がモデルになっているんじゃないかという作品だと思って観ておりました。この作品のオープニングにもかかっていますけれど、梶芽衣子さんの「怨み節」っていう曲がかかります。いい曲ですよね。梶芽衣子さんの「女囚さそり」シリーズ(東映作品)にかかっていた曲なんですけど、その曲が意味深にかかってきます。 この4作品はですね、色んな時代の影響下にある作品で、『真夜中の妖精』のオープニングは、多分そうだと思うけど三善英史さんって「雨」って曲をヒットされた方ですね。とてもATG っていう映画のニオイがプンプンしている映画でございました。監督が田中登さんですからもう、プンプンしている。『百恵の唇 愛獣』はこれはもろ百恵ちゃんの「赤いシリーズ」大映ドラマの赤いシリーズのニオイがプンプンしてる。『ひと夏の体験 青い珊瑚礁』の場合はもう、沖縄返還随分が経ってから海洋博とかのニオイがプンプンしております。 ■もっと知りたい〇〇界の〇〇 緊縛界の〇〇 SMの緊縛の中にもアイドルの名前が入ってるということで。谷ナオミさんは「緊縛界のマリリン・モンロー」ですよね。団鬼六さんがおつけになったんだと記憶しております。その二代目のSM 女優の麻吹淳子さんも、これも団鬼六さんの発言で僕知りました「緊縛界のイングリッド・バーグマン」ってことでさらに遡ってるってことですよね。時代は古くなってますね。その後、出てきた高倉美貴さん。団鬼六さんが惚れ込んで、出演してもらったという触れ込みがあります。「緊縛界のオリビア・ハッセー」ってことで。 その他にもポルノ界には色々おられました。 「ロマンポルノ界の百恵ちゃん2」というのが井上麻衣さん。 「ロマンポルノ界のジャンヌ・ダルク」が田中真理さん。もうコレ歴史上の人物になっているというのがすごいですよね。 「ロマンポルノ界の栗原小巻さん」ある世代の人はグッとくると思いますけど。野平ゆきさんでした。 「ボディビル界の百恵ちゃん」、西脇美智子さん。これ覚えているでしょう、映画がありました『お嬢さん探偵ときめき連発』(1987年製作)。「ときめき連発」って表現もななかななものだと思っております。 さらに、ボードでまとめてきておりまして、 将棋界の聖子ちゃん→林葉直子 グラビア界の黒船→リア・ディゾン 文学界の聖子ちゃん→田辺聖子 この方『ポセイドン・アドベンチャー』という映画が流行った時、「お聖どん・アドベンチャー」(1977年作)という本を書かれておりました。 民謡界の百恵ちゃん→金沢明子 仏像界のアイドル→阿修羅像 ?(首をかしげる)コレ、いります? サッカー界のベートーヴェン→ペレ ロック界のモーツァルト→ザ・ビートルズ いくつの世代の方が名付けたかわからないですが。浪速のモーツァルトはキダ・タローさんですよね。 魚界のプレスリー→イトヒキアジ これ調べてもらったんですけど、プレスリーの「エルヴィス・イン・ハワイ」の頃の衣装に似ているっていう(笑)。 70年代から80年代の半ばくらいまでですかね、〇〇界の〇〇とつけるのが大流行だったという。 『真夜中の妖精』(1973年) 『百恵の唇 愛獣』(1980年) 『ひと夏の体験 青い珊瑚礁』(1981年) 『ズームアップ 暴行白書』(1975年) ※各作品はFANZAをはじめする動画配信サービスにて配信中です いかがだったでしょうか次回第10回のテーマですけども、「長い黒髪の女の子」っていうことで、日活ロマンポルノ中の長い黒髪が、もう最高に似合ってた人の特集をさせていただきたいと思います。楽しみ待っていてくださいそれではあなたも、グレイト余生を! 出演・構成:みうらじゅん プロデューサー:今井亮一 ディレクター:本多克幸 製作協力:みうらじゅん事務所・日活 ■2021年4月 放送予定 【衛星劇場】(スカパー!219ch以外でご視聴の方) ・『団鬼六 薔薇地獄』 ・『薔薇のためいき』 ・『黒薔薇昇天』 ・『白薔薇学園 そして全員犯された』 【衛星劇場】(スカパー!219chでご視聴の方) ・『団鬼六 薔薇地獄』(R-15版) ・『タクシー野郎 夜の淫花』(R-15版) ・『トルコ最新テクニック 吸舌』(R-15版) あわせて、衛星劇場では、サブカルの帝王みうらじゅんが、お勧めのロマンポルノ作品を紹介するオリジナル番組「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ♯95」を放送! ※人気コーナー「みうらじゅんのグレイト余性相談室」では、皆様から性のお悩みや、疑問を大募集! 【日活ロマンポルノ】 日活ロマンポルノとは、1971~88年に日活により製作・配給された成人映画で17年間の間に約1,100本もの作品が公開された。一定のルールさえ守れば比較的自由に映画を作ることができたため、クリエイターたちは限られた製作費の中で新しい映画作りを模索。あらゆる知恵と技術で「性」に立ち向い、「女性」を美しく描くことを極めていった。そして、成人映画という枠組みを超え、キネマ旬報ベスト・テンをはじめとする映画賞に選出される作品も多く生み出されていった。 日活ロマンポルノ公式ページはこちらから -
マイノリティの立場からこういう考え方もあるんだよと提示できるのが、ピンク映画の魅力です 「花と沼」 七海なな、麻木貴仁 20年公開の「アルプススタンドのはしの方」が、小誌キネマ旬報ベスト・テン10位、映画芸術ベストテン&ワーストテン3位に輝いた城定秀夫監督。 さらなる一手として登場した珠玉の新作が「花と沼」(R18+版「キモハラ課長 ムラムラおっぴろげ」)であった。昨年の初上映を皮切りに現在も各地での劇場公開が続いており、3月30日にはUPLINK吉祥寺にて音楽×映画の祭典MOOSIC LAB [JOINT] 2020-2021特別招待作品として舞台挨拶付きの上映が決まっている。 そこで小誌2020年11/1号の特集「現代ピンク映画への招待」の際に行った城定秀夫監督インタビューのロングバージョンをここに公開してみたい。 城定監督は、新作「花と沼」、そしてピンク映画について熱く語ってくれた。 取材・構成=金子恭未子[映画ナタリー編集部] ユーモアは大切です ────「花と沼」では、“キモい”ものに性的な興奮を覚えるOLの一花と彼女が思いを寄せる課長の沼田が描かれています。どこから着想を得たのでしょうか? 城定 一時期Twitterで「負の性欲」という言葉がバズったんです。その言葉を初めて知ったときに、普通なら欲情しないもの、例えば気持ち悪いものを見たときに性欲が湧くというようなことを意味するのかな?と想像したんです。実際は、まったく別の意味だったんですが、勘違いしたほうの解釈を映画にしてみたらどうだろう?というのが初期アイデアでした。 ────沼田は、彼の言動に不快感を感じる女性社員から「キモハラ課長」と呼ばれ、全社員から敬遠される存在として描かれています。 城定 難しい題材だと思いました。ハラスメントは社会問題ですから、面白おかしく茶化してはいけない。沼田が真面目なだけのキャラクターだったら、女子社員から疎まれる描写がかわいそうに映ってしまう。笑いを交えつつ、周りから“キモい”と思われてしまう沼田の言動を作る必要があった。ユーモアは大切です。 ────「恋の豚」を制作されたときも、観ている人に不快感を与えないように物語のバランスを考えたとおっしゃっていました。城定監督は社会の空気をつかんだうえで、マジョリティとは別の視点から物事を切り取っているように感じます。 城定 マイノリティの立場からこういう考え方もあるんだよと提示できるのが、ピンク映画の魅力です。「花と沼」であればキモいものに興奮する一花と、キモいと嫌われてしまっている沼田の視点ですね。今は女性に対して「髪切った?」と声を掛けることも問題になる場合がある。デートに誘ってもセクハラなわけですから、社内恋愛も成立しない。そういったコミュニケーションの難しさについても何かこの作品で示すことができればと思いました。もちろんハラスメントを軽んじたりバカにしてはいけない。バランスが難しいんです。 ────セクハラで沼田が会社をクビになったとき、一花が上司に告発したきみと歩実さん演じる同僚をビンタするシーンがありました。沼田を追って物語を観ていたので、あの場面はスカッとしました。 城定 同僚が決して悪いわけじゃないんです。あんなことしたら沼田がクビになるのは当然。でも一花の視点で物事を切り取るとああなる。今まで僕の作品は悪い人が出てこないと言われていましたが、そこにも反発したかった。「花と沼」はいい奴は1人も出てこない。一花も沼田も、一花の同僚もみんなちょっとずつ嫌な奴なんです。「嫌な奴もがんばって生きよう!」ということが描きたかった。 脚本の書き方 ────新作「花と沼」は城定監督にとって「恋の豚」(18年)以来となるピンク映画です。脚本はどれくらいの期間で執筆されたのでしょうか? 城定 集中して書いたのは1週間ぐらいなんですが、トータルで約1カ月掛かりました。ここ数年はずっとあらすじは決めずに頭から書き始めて、キャラクターが動き出したら途中から構成を決めています。だんだん固まってきたら、前に戻って書き直しますね。伏線も回収するかどうか決めないでとりあえず出しておく。「花と沼」なら万年筆がそれです。書いているうちに回収できればするし、できないものはあとで削ります。変な書き方ですよね(笑)。 ────理系の学校ご出身だと聞いていたので、しっかり構成を立てて脚本を執筆されているのかと思っていました。 城定 脚本の構成って詰将棋みたいなものではあるんです。でも理系脳で書いちゃうと記号的なものになってしまう。ちょっと崩したくて、こういう書き方になりました。でもできあがるとやっぱりカチッとしているなと思います。憧れるのはいまおかしんじ監督が書くような柔らかい脚本。ああいうものはなかなか書けないので尊敬しています。 ────城定監督はどのように脚本を勉強されたのでしょうか? 城定 特に勉強はしていないんです。助監督の頃、初稿が2稿~3稿と重なるうちにどう直っていくのか、現場で学びました。師匠である北沢幸雄監督の書き方を一番参考にしたと思います。当時のピンク映画は使用できるフィルムに限りがあったので、北沢監督はシナリオにもカット割にも無駄がなかった。そういう部分で、とても影響を受けていると思います。 麻木貴仁、その魅力 ────城定監督の作品によく隠れキャラのように登場する(いまおかしんじ監督作における佐藤宏さんを彷彿とさせる)、麻木貴仁さんが沼田を演じています。麻木さんが演じる沼田には、どこか憎めないかわいらしさも感じました。物語のバランスを取るために、麻木さんを起用したという意図もあったのでしょうか? 城定 そういうところはありますね。ピンク映画に出ている役者さんの中には、もっと強く不快感を与える演技ができる方もいます。でも、沼田が本当に気持ち悪く映ることは僕の狙いではないんです。 ────麻木さんはこれまで「悦楽交差点」(15年)「ミク、僕だけの妹」(18年)など城定監督の作品で重要な役どころを演じてきました。監督から見た麻木さんの魅力をどんなところでしょうか? 城定 魅力ですか?……貴仁大好きとか思われたくないんですよね(笑)。 ────今回はぜひお伺いしたいです(笑)。 城定 貴仁は役者ではなくスタッフなんですが、エキストラをやってもらうと昔からうまかったんです。それで僕の「悦楽交差点」に出てもらったら、成人映画館のお客さんから予想以上に反響があった。お客さんは彼に自分を投影して観ているのかなと。プロはみんな芝居が上手いんだけれど、素人にはそれとはまた別の味があって、役者じゃない人を使う面白さがあります。例えば古澤健監督の「たわわな気持ち」では監督自身がヒロインの彼氏を演じていましたが、役者には出せない魅力がありましたよね。 抑圧からの解放 ────麻木さん以外のキャスティングについてもお聞かせください。「花と沼」では監督と何度もタッグを組んできた七海ななさんがヒロインの一花を演じています。 城定 七海さんは芝居の基礎ができてるし、すごくやりやすいんです。頭もいいし、なんでもできる。最近はピンク映画やVシネマにはあまり出ていないので、ダメもとでオファーしたら、受けてくれました。 ────七海さんが眼鏡を掛けた写真をSNSに投稿されていて、城定監督の作品に参加しているんだなとうれしく思いました。 城定 よく見ていますね(笑)。七海さんはかわいらしい人なので地味な女性を演じてもらうために最初は眼鏡を掛けてもらいました。それが定着して、地味で奥手な女性キャラを描くときは七海さんが浮かびます。 ────城定監督の作品には重要なアイテムとして眼鏡が頻繁に出てきます。 城定 抑圧されている女性が解放されていくというエロスに興味があるんです。そういうものを描くときに眼鏡はアイテムとして使っていますね。 ────今回は七海さん以外に、何度も一緒に仕事をされてきたしじみさん、初タッグのきみと歩実さんがキャスティングされています。 城定 ピンク映画を撮る監督の中で、最初は僕しかしじみさんを起用していなかったんです。でも彼女は仕事がしやすい女優さんなので、みんなが組むようになった。逆に僕はあまりオファーしなくなりました。でも、たまにはいいかなって(笑)。コロナもあって難しい時期の撮影だったので、信頼できる人と一緒にやりたいという気持ちが働いた部分もあると思います。きみとさんは前々から一緒に仕事をしたいと思っていたんですが、なかなかチャンスがなかった。今回一緒に仕事をしてみて、ほかの監督が組みたいと思う気持ちがわかりました。 女性の性欲をテーマに据える ────「ピンク映画全体」についても質問させてください。「花と沼」はテアトル新宿ほかでR15+版を公開する「OP PICTURES+フェス2020」にラインナップされていました。ここ数年一般映画館でピンク映画を上映して広く届けようという動きが活発化していますよね。 城定 正直、僕としてはR15+にすることをあまりよくは思っていないんです。R18+のピンク映画をそのままお見せしたい。ただ、10~20年前から「ピンクはあと5年持たない」なんて言われてきたのがまだ続いている。これは広める努力をしてきたからだと思うんです。今まで通りにやっていたらとっくに潰れていたかもしれない。 ────若手監督が新規参入したり、ピンク映画を取り巻く環境も変わってきています。 城定 はたから見ていると大蔵映画さんはピンク映画に対して文化事業みたいな意識があって、守ろうとしているように見える。利益を優先するほかの会社にはできないことです。ただ個人的な意見ですが、経済を回していないのは罪だと思うんです。ある程度利益を享受できるようになってほしいと願っています。 ────最後のピンク映画大賞で城定監督の盟友でもある久保獅子プロデューサーが、「ピンク映画を作ってきたのはVシネマをバカにされた復讐でもあった」と仰っていたのが印象的でした。 城定 あれは半分冗談みたいなものですよ(笑)。ただ確かにVシネマは文化としてバカにされてきた部分はあります。僕はピンク映画では食べられないと判断して、Vシネマの業界にいきましたが、デジタルになる前のピンク映画業界はフィルムで撮っているという選民意識が高かった。「Vシネなんか撮りやがって」と言われたこともあります(苦笑)。だからピンク映画に戻ってきたときに、反発心がモチベーションになったという部分は少しあったかもしれません。 ────城定監督もフィルムの現場は経験されていますが、フィルムへのこだわりはなかったんでしょうか? 城定 ワンカットワンカット意思を持って撮っていたフィルム時代の映画のほうが好きではあるんです。今は撮りたいものを決めずに、いろんなところから撮ってあとから編集するという手法もありますが、僕はデジタルでもワンカットワンカット意思を持って撮影したい。そういう意味でフィルム時代の撮り方には思い入れがあります。一方でVシネマの業界に入ってから、フィルム撮りとビデオ撮りの何が違うんだろう?と思っていました。質感の違いについては、カメラマンだったら思うこともあると思うんですが、演出家として監督がすべきことは変わらないです。 ────城定監督はピンク映画の中で「性を描くこと」をとても大切にされています。今後ピンク映画というジャンルの中で描いてみたいものはありますか? 城定 実は性欲の強い女性は主人公になりづらいんです。だから女性の性欲をテーマに据えることをほかの監督はあまりやらない。でも、僕はそういうものを描いていきたいと思っています。何か隠し持ったものが解放されていく様子を撮りたい。それは僕の作品の一貫したテーマかもしれません。最近は、「作品の核としてセックスを置く」ピンク映画らしいものがなくなってきている気がしています。だから、ジャンルの枠の中でもっと描けるものがあるというのを見せていきたい。オールドスタイルでもまだまだやれるんじゃないかと思っています。 プロフィール 城定秀夫/じょうじょう・ひでお 1975年生まれ、東京都出身。大学在学中から8ミリ映画を製作。ピンク映画助監督を経て03年、「味見したい人妻たち」で監督デビュー、同年度のピンク大賞で新人監督賞を受賞する。その後、ビデオオリジナル作品や一般映画にも活躍の場を広げ、ジャンルを問わず100本以上の作品を監督するほか、脚本家として手がけた作品も多い。 「花と沼」(R15+)[R18+版「キモハラ課長 ムラムラおっぴろげ」] 2020年・日本・70分 監督・脚本:城定秀夫 撮影・照明:田宮健彦 録音:弥栄裕樹 音楽:林魏堂 出演:七海なな、麻木貴仁、きみと歩実、しじみ、山本宗介、久保獅子、守屋文雄、森羅万象 配給:オーピー映画 ©️OP PICTURES [上映情報] MOOSIC LAB [JOINT] 2020-2021 ■3月30日(火)[ME③]「花と沼」 舞台挨拶:七海なな、朝木貴仁、しじみ、きみと歩美、城定秀夫監督 https://joji.uplink.co.jp/movie/2021/8365
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世界最大の辞典「オックスフォード英語大辞典」は、どのようにして生まれたのか?
2021年3月24日世界最大の辞典「オックスフォード英語大辞典」は、どのようにして生まれたのか? 天才学者×哀しき殺人犯が世紀のプロジェクトに挑む、驚きの実話を映像化した『博士と狂人』 41万語以上の収録語数を誇る世界最大の辞典「オックスフォード英語大辞典」は、どのようにして生まれたのか? その誕生秘話に迫ったノンフィクション小説に惚れ込んだ名優メル・ギブソンが、20年以上の歳月をかけて待望の映画化を実現させた渾身作『博士と狂人』。貧しい家に生まれ学士号を持たない天才学者マレーと、戦争でPTSD(外傷後ストレス障害)を患い誤殺事件を起こしてしまった優秀な従軍医のマイナーの運命が“世紀の辞典づくり”という一大プロジェクトによって引き寄せられていく。 しかし、辞書の編纂に殺人犯が関わっているという事実は世間の反感を買い、プロジェクトは中断。やがて内務大臣のウィンストン・チャーチルや王室をも巻き込む事態へと発展していくのだが――。本作は、そんな一大プロジェクトに身を捧げた2人の男の固い絆を描いたヒューマン・ドラマである。 メル・ギブソンとショーン・ペン、ハリウッドの二大演技派俳優が初共演! 愛する家族との時間を犠牲にし、生活の全てを辞書づくりに費やす信念の男マレーを演じるのは、『ブレイブハート』(’95)や『ハクソー・リッジ』(’16)など映画監督としても高い評価を得るメル・ギブソン。戦争のPTSDで幻覚に悩み、誤殺事件を起こして精神科病院に収容される犯罪者マイナーを『ミスティック・リバー』(’03)と『ミルク』(’08)で二度アカデミー賞主演男優賞を獲得したショーン・ペンが熱演している。 また、マイナーに夫を殺されるも次第に心を許していく未亡人イライザ役に『ゲーム・オブ・スローンズ』(’12~’16)のナタリー・ドーマー、マイナーの良き理解者となる看守のマンシー役に『おみおくりの作法』(’13)のエディ・マーサンといった豪華実力派俳優が集結。マレーとマイナーの物語を軸に、それぞれの登場人物のドラマにもしっかりと焦点が当てられ、群像劇としての見どころも多い。 「言葉」を介して出会った男と男の強い絆を丁寧に描出 辞書をつくる人々を描いた映画というと、三浦しをんの小説を映像化した石井裕也監督作『舟を編む』(’13)を連想する人も多いだろう。言葉をひとつひとつ拾い集め、定義付けていくという気が遠くなるような作業。そんな辞書づくりの過程や苦労は本作でも十二分に描かれる。「英語を生活言語とする人」1,000人から、単語と、その単語が最初に使われた文献の引用文を送ってもらうというのだ。無謀な作業に行き詰まっていたマレー。そんな彼のボランティアを募る声明文を偶然目にしたマイナーは、辞典づくりこそが自らの病を改善させる糸口になるのではないかと協力を申し出る。何の接点もない2人が、それぞれの目的を胸に「言葉」という大海に舟を漕ぎ出した瞬間である。 しかし、それ以上に観る者の胸を打つのは、マレーとマイナーの立場も境遇も超えた固い友情だ。無限の可能性を秘めた「言葉」を介して出会った2人の絆は、人生であり得ないことなど何ひとつないこと、愛することや許すことの大切さを私たちに教えてくれる。また、狂気を抱え贖罪に押しつぶされそうになりながら希望を捨てなかったマイナーを鬼気迫る演技で体現したショーン・ペンにも、心からの拍手を贈りたい。 文=原 真利子/制作=キネマ旬報社 『博士と狂人』 ●3月24日(水)デジタル配信・Blu-ray発売・DVDレンタル開始 Blu-ray情報はこちら 配信サービス情報はこちら ●Blu-ray 5,280円(税込) ●2018年/イギリス 、 アイルランド 、 フランス 、 アイスランド/本編124 分+特典映像 10 分 ●監督・脚本/P.B. シェムラン、共同脚本/トッド・コマーニキ 出演/メル・ギブソン、ショーン・ペン、ナタリー・ドーマー、エディ・マーサン、ジェニファー・イーリー、スティーヴ ・ クーガン ●発売元:カルチュア・パブリッシャーズ/販売元: ポニーキャニオン/レンタル販売元:カルチュア・パブリッシャーズ ©2018 Definition Delaware, LLC All Rights Reserved -
こんな時だから改めて“家族”の良さを実感。 『浅田家!』を始め、優しく温かい家族の物語!
2021年3月19日こんな時だから改めて“家族”の良さを実感 『浅田家!』を始め、優しく温かい家族の物語! ©2020「浅田家!」製作委員会 新型コロナウイルス感染対策による自粛生活も1年が過ぎ、これまでの日常が大きく変わる中、家族と過ごす時間が増えた方も多いのではないでしょうか。今回は、ユニークな家族写真を撮り続けた写真家・浅田政志の実話を基に、温かい家族の絆をユーモアを交えて描いた『浅田家!』を始め、じんわり温かな気持ちになる家族の姿を描いた作品をご紹介します。 1.映画「浅田家!」 映画「浅田家!」の作品概要 二宮和也主演、中野量太監督による実在の写真家と彼を支えた家族の物語。父の影響で幼い頃から写真を撮っていた政志は、家族全員でなりたかった職業などに扮したユニークな家族写真で権威ある賞を受賞。それを機に各地の家族写真を撮るようになるが、東日本大震災が発生し…。 映画「浅田家!」の見どころ 予測不能な次男坊を受け入れる家族と、好きなことをする苦労と幸せを活写! 摑みどころがなく突拍子もない次男坊の主人公、政志。弟に巻き込まれその無茶なお願いにも協力する兄ちゃん、大らかで少し天然な母に、家族のために主夫となり温かく見守る父。二宮和也を始めとする芸達者な役者陣が、近所にいそうな家族を自然体で演じ、映し出されるその日常が愛おしくなります。ここに幼馴染みで腐れ縁の、黒木華演じる女性が注ぐ愛情が加わり、つくづく政志は幸せ者だなと羨望の念が湧くほど。家族の温かさと、好きなことを続ける苦しさと幸せについて考えさせられる珠玉の物語です。 発販:東宝より3月17日リリース 2.映画「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」 発販:バップよりリリース中 映画「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」の見どころ ゲームから始まる不器用な親子の交流に涙 突然会社を辞めた父を息子がオンラインゲーム「ファイナルファンジー」の世界へ誘い、自分の正体を隠して一緒に冒険に出るという実話を実写化。息子はゲームの世界で今まで知らなかった父の姿に触れていくうちに、現実の家族、仕事にも変化が訪れます。終盤のラスボス戦はゲーム、現実共に感動必至です。 3.映画「湯を沸かすほどの熱い愛」 発販 ・セル:クロックワークス/TCエンタテインメント ・レンタル:クロックワークスよりリリース中 映画「湯を沸かすほどの熱い愛」の見どころ 母の愛は無限大! 無上の愛が家族を結ぶ感動作 余命僅かであることを知った母が、その日から“絶対にやっておくべきこと”を実行していく姿を描いた、中野量太監督の渾身の1作。見た目は儚げな宮沢りえ演じる母の、無上の愛溢れるパワフルな行動に終始感情が揺さぶられていきます。そしてそれに応えた、残された家族の母の“葬り方”。鑑賞後に見るタイトルに震えます。 4.映画「海街diary」 発販:フジテレビジョン/ポニーキャニオンよりリリース中 映画「海街diary」の見どころ 鎌倉を舞台に丁寧に綴られる四季と四姉妹の営み 吉田秋生の人気コミックを是枝裕和監督が実写化。鎌倉に住む三姉妹と、そこにやって来た腹違いの妹が織り成す日常を丁寧に描いた本作は、個性の異なる姉妹が時に衝突しながらも重ねていく日々の尊さを感じます。また、末娘を演じる広瀬すずの無垢で鮮烈な、魅力溢れる姿を見られるのも◎。 今回ご紹介した作品は、誰にとってもいちばん身近な家族という存在を題材にした秀作ばかりです。コロナ禍が続き家族と過ごす時間が増えている今、これらの作品をご覧になって改めて家族について考えてみてはいかがでしょうか。 映画「浅田家!」 制作=キネマ旬報社 -
【あの頃のロマンポルノ】第7回 田中登監督の「人妻集団暴行致死事件」
2021年3月19日2021年に、日活ロマンポルノは生誕50年の節目の年をむかえました。それを記念して、「キネマ旬報」に過去掲載された記事の中から、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げていく特別企画「あの頃のロマンポルノ」。「キネマ旬報WEB」とロマンポルノ公式サイトにて同時連載していきます。 今回は、ロマンポルノ作品として1978年第52回「キネマ旬報ベスト・テン」の日本映画第9位に選ばれた『人妻集団暴行致死事件』をピックアップ。1978年8月下旬号より、寺脇研氏による『田中登監督の「人妻集団暴行致死事件」』を転載いたします。 1919年に創刊され100年以上の歴史を持つ「キネマ旬報」の過去の記事を読める貴重なこの機会をお見逃しなく! 若者たちの〈甘え〉とそれを許す中年の男女 いかにも直裁な題名だ。登場人物たちが紹介され情況が説明された段階で、すでにして物語の結末は明らかになってしまう。その「人妻集団暴行致死事件」へ向けて、映画は小気味よいほどの調子で進んでいく。次に何が起きるか、という期待を観る側に持たせる方法ではなく、あらかじめ示した終結点へ力強く運んでくれるのだ。 そもそも事件の発生自体、蓋然性からのものというよりは必然的に起きるべくして起きたといえる。中年男は、ついていなかった、と述懐するけれど、決してそうした偶然の所産ではない。彼が若者たちの〈甘え〉を許したこと、そればかりか仲間意識を持って同化しようとしたことが悲劇的結末を生むのは予測に難くあるまい。三人の若者たちを取りまく環境、社会、そして何より〈甘え〉に満ちた軟弱な性格、それと反比例して強烈な性欲は、犯罪を惹起せずにはおかなくなる。 若い心の中には、誰しもある種の獣性が宿っている。自ら馴致できるかどうかは紙一重だ。たとえば同じ日活・白鳥信一監督「課外授業・熟れはじめ」は、高校生の性と生活を楽天的に明るく描いた好篇だったが、そこに現われている健全な青春を送る少年たちにしても、一歩まちがえれば歪んだ欲望の深淵に落ちるに違いない。だから、三人組も、中年男の言うように「そんなに悪い奴じゃない」のであり、〈甘え〉や獣性は若さの切り離せない附属物なのだ。 男ばかりではない。性犯罪の上では被害者の立場になりがちな若い女たちの方にも、〈甘え〉と獣性はある。三人が放縦な交渉をする相手になるスケ番あがりの娘たち。さらに靴工場で働く少女ですら、挑む若者をいったんは退けながら、独り暮らしの寂しさを露呈してしまい、男を招き入れる。組みしかれて大仰に悔んでみせても、意識下に働いた欲望を否定することはできない。 こうした若者の〈甘え〉と獣性を、正面から取り上げるのでなしに、中年の男女とからませて相対化して扱っている。田中登監督の前作「女教師」ではオトナたちと少年たちの対比はさほど鮮明ではなかった。それがこの作品では、くっきりと対照され、中年夫婦を鏡にして若さの実像が写し出される。この構造のありかたは、同じものを法や裁きという鏡に写し出そうとしてみせた野村芳太郎監督「事件」を想起させる。 しかし、この田中登監督会心の一作の方が、はるかに鋭くきびしく若さの陰の部分を頚上に載せている。法だの裁きだの、いわば血の通っていない無機質のものと相対させても、〈甘え〉や獣性の醜さは浮き彫りにされてこない。若者たちと同じく血の通った、まさに集団暴行されれば死んでしまうような生身の人間たちの生きざまと対峙させて、はじめて正しく認識させ得るのだ。まして、中年夫婦は、昔同じように〈甘え〉と獣性たっぷりの青春を送ってきている存在だ。二十年後の彼ら若者たちが二重写しになっているといえる。「野良猫ロック・マシンアニマル」など旧日活青春映画で不良少女を好演していた黒沢のり子が中年の女であるだけに、なおさらその感が強い。 毒を喪くした男の異様なまでの嘆きと哀しみ。死に致らしめた若者たちへの怒りよりも、自身への悔恨の思いが先立っている。心臓の病を知らせることさえ容易にできなかった妻、気取ることのできなかった自分。自責の念に追われて若者たちへの憤怒は没却される。〈甘え〉にまみれた彼らは過ぎた日の自分でもあるわけなのだから。 若さは強い。中年男女の生活をふみにじっても、平気で先へと進み続ける。うちの一人は、靴工場の少女と同棲し、結語の部分では笑いさざめきあう楽しい暮らしぶりを見せるほどだ。醜い面なんかふっとばして若さを謳歌する。だが、彼らもまた死んでいった中年夫婦のように、〈若さ〉からしっぺ返しを食う日が、いつか来る 文・寺脇研 「キネマ旬報」1978年8月下旬号より転載 「人妻集団暴行致死事件」 監督: 田中登 脚本:佐治乾 価格:3,800円+消費税 発売:日活株式会社 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング 日活ロマンポルノ 日活ロマンポルノとは、1971~88年に日活により製作・配給された成人映画で17年間の間に約1,100本もの作品が公開された。一定のルールさえ守れば比較的自由に映画を作ることができたため、クリエイターたちは限られた製作費の中で新しい映画作りを模索。あらゆる知恵と技術で「性」に立ち向い、「女性」を美しく描くことを極めていった。そして、成人映画という枠組みを超え、キネマ旬報ベスト・テンをはじめとする映画賞に選出される作品も多く生み出されていった。 オフィシャルHPはこちらから