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  • 毎月リリースされる未公開、単館系作品の中から、「観たら必ず誰かに教えたくなる」作品を厳選してご紹介。劇場で見逃した作品や隠れた名作が多く並ぶレンタル店だからこそ出会える良作、小規模公開ながらの傑作など、様々な掘り出し映画との出会いを提供します!   8月リリース作品   美少年がついた嘘の行方 映画『ジュリアン』 アンプラグド/ポニーキャニオンより7月17日リリース (C) 2016 - KG Productions - France 3 Cinéma 『ジュリアン』あらすじ 離婚したベッソン夫妻は、11歳になる息子・ジュリアンの親権をめぐって争っていた。母のミリアムと姉と暮らすことになったジュリアンだったが、隔週の週末ごとに別れた父と過ごすことを余儀なくされてしまう。   【オススメCOMMENT】 離婚協議中の両親の間で揺れるジュリアンは、明らかに悪意のある父親の面会という苦行に直面する。姉にも衝撃的な問題が発覚し……と非常に良くない家族の形をスリリングに見せつけられる。ジュリアンを使って母の居場所を無理やり聞き出そうとする父、母を守るため嘘をつきまくり、隙あらば逃げ出そうとする少年ジュリアンの終始ビクついた顔が極めて美しい。伏線を張り巡らした悲劇のオンパレードが静謐に繰り広げられ、ラスト、追いつめられてバスタブで息を潜めるホラーな場面には失神寸前。   感染家族、“奴ら”に監禁される 映画『ゼイカム-到来-』 インターフィルムより7月26日リリース (C) Further Instructions Ltd 2018 『ゼイカム-到来-』あらすじ クリスマスを祝うため集まったミルグラム一家だったが、各々に問題を抱える彼らは不穏な雰囲気の中、眠りにつく。翌朝、黒いメタルのようなものが家を包み込み、家族は監禁状態であることに気付くとパニックに陥る。   【オススメCOMMENT】 息子が連れてきた彼女がインド系であることを気に入らず、冒頭から不穏な雰囲気を醸し出す父。家が世界と断絶されたことに気付くと、TV画面に謎の命令や警告が映し出され、言われるがまま漂白剤を体に塗りたくり、ワクチンを打って狂っていく家族たち。本当に“感染”しているのは、一体誰なのか。疑惑とパニックで荒れる家の中と、信頼関係が壊滅する様はまさに地獄絵図。『リング』より怖い何かがTV画面から這い出してくるトドメの一発と、最後に救世主として現れる“ある存在”に震撼。   あらゆる壁は越えていけるのだ! 映画『バジュランギおじさんと、小さな迷子』 フルモテルモ/ハピネット・メディアマーケティングより8月2日リリース (C)Eros international all rights reserved (C)SKF all rights reserved 『バジュランギおじさんと、小さな迷子』あらすじ インドからの帰りの列車で母親とはぐれてしまった、声を出せないパキスタンの少女シャヒーダー。見知らぬ土地に独り取り残された少女を家に送り届けようと、インドの正直者の青年は彼女と共に、国境を越えた旅に出る。   【オススメCOMMENT】 インド映画らしい歌と踊り満載のエンタメ作品であり、主演ふたりの凸凹コンビに心温まる。主人公の青年は、身分、宗教の壁を乗り越え、少女と共に国境までも越えてみせる。その青年の極端ともいえる愚直さは、すべて最後の布石になっていることが分かるのは最終盤。印パ両国の融和の願いをも込めたラストには、彼のような人間でなければならなかったのだ。劇中唯一鳴り響く、終盤の銃声が象徴する現実に屈せず、作り手たちが想いを託すように紡いだその後の展開、最後の奇跡に涙。 子供のための良作ファンタジー 映画『クエスト・オブ・キング 魔法使いと4人の騎士』 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパンより8月7日リリース (C)2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. 『クエスト・オブ・キング 魔法使いと4人の騎士』あらすじ ごく普通の少年アレックスはある日、伝説の聖剣エクスカリバーを引き抜いてしまい世界を救う使命を負う羽目に。古代からやってきた魔法使いのマーリンと共に仲間を結集させ、邪悪な魔女モーガナを倒す冒険の旅に出る。   【オススメCOMMENT】 クリーチャーも世界観も妥協なく作り込まれ“子供だまし”なところが一切ないのが良い。聖剣を手にしたイケてない中学生が、魔法使いの導きによりいじめっ子たちを仲間に組み入れ、次第に成長していく姿は馴染みのあるRPGのよう。4人の仲間と魔法使いでラスボスを倒すと思いきや、学校を最終決戦場にした大バトルも意外性があり楽しい。子供を置いてきぼりにするような小難しいファンタジー作品と違い、ストレートに子供が楽しめる良作として小学生から中学生、その親にもオススメ。   唯一成功したナチス高官暗殺の裏側 映画『ナチス第三の男』 バップより8月7日リリース (C)LEGENDE FILMS - RED CROWN PRODUCTIO NS - MARS FILMS - FRANCE 2 CINEMA - CARMEL - C2M PRODUCTIONS - HHHH LIMITED - NEXUS FACTORY - BNPP ARIBAS FORTIS FILM FINANCE. 『ナチス第三の男』あらすじ 海軍基地の通信将校だったハイドリヒは、ある時不名誉除隊を余儀なくされてしまう。怒りに震える中、ナチ党支持者である婚約者の励ましにより、彼はナチス党親衛隊指導者ヒムラーとの面接の機会を得ることになり……。   【オススメCOMMENT】 前半で描かれる若き日のハイドリヒが纏う異色の雰囲気や、海軍の不名誉除隊を受け荒れ狂う姿などを見ると、それらが後に恐ろしい男となる兆候に思えて既に恐ろしい。彼の残虐さや、立ち向かった若者の死闘に胸が締め付けられる中、垣間見えた若者たちの青春のひとときには心を救われる。ただそれも長くは続かなかったことを思うと切なく苦しい気持ちに。本作を通して我々は何を感じ、どう生きていくべきか。目を背けてはいけない歴史と向き合う機会として観ておくべき作品。   パワフル母ちゃんの愛情に感動! 映画『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』 東映ビデオより8月21日リリース (C)宮川サトシ/新潮社 (C)2019「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」製作委員会 『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』あらすじ 心優しいが故に頼りないところがある息子・サトシの、明るくてパワフルな母親・明子がガンによりこの世を去ってから1年。やっと家族が新たな人生を歩み始めた時、サトシの元に母からあるプレゼントが届く。   【オススメCOMMENT】 30歳を過ぎても実家暮らしで母の存在に救われ続けてきた男が、突如訪れた母との別れを不器用ながらも力強く乗り越えていく。入院中の彼に病室でこっそりカレーを食べさせたり、年頃の息子に精子を提出させたりと、母親の突拍子もない行動には驚くが、そのすべてに込められた彼女の愛情には涙。そんな母を失った彼とその家族が子供のように泣き叫びながらも必死に前を向こうとする姿も目頭を熱くさせる。辛い別れと向き合い、受け入れ、前に進むことの大切さについて考えさせられる1本だ。   ■前回の誰シネ(7月リリースタイトル)はこちらから
  • ガールの、この先は峻厳にも薔薇色に染まる (c)Menuet 2018  『ガール』という映画に予備知識もないまま興味をもったのは昨年5月、カンヌの映画祭公式ページで授賞セレモニーの中継を見た時のことだ。カメラ・ドールを受賞した監督ルーカス・ドンと共に登壇した金髪のひとりは、小公子のような黒いリボンで襟元を飾り、消え入りたげな微笑みを湛えてそこにいた。少年とも少女とも見える美しい人の、周囲の空気をしんと澄み返らせるような清冽なたたずまいに惹きつけられてそのまま受賞者たちの会見も見逃せない気持ちになっていた。会見の席でもまた監督の脇にどこまでも控えめにいた彼、ヴィクトール・ポルスターが質問に真摯な答えを返しつつ青白い頬から首筋まで、みるみる痛ましいほどに紅潮させる様がくっきりと目に焼きついた。  薔薇色に染まった肌が象る純真。その痛々しさとも映る記憶。それが、一年を経て見ることの叶った映画『Girl /ガール』のみつめるトランスジェンダーのヒロインの抱えた幾層もの痛みと向き合ううちにふるふると蘇ってきた。トウシューズを着け爪先立ちで踊る女性の踊り手としてバレエを究めること。心身共に女の子になること。そのどちらが欠けても真の自分になれないと思いつめて、文字通り血のにじむレッスンに励み、ホルモン療法、さらには性別適合手術をも希求するララを、水面下のあがきを見せない白鳥の清雅で体現し得るひとり、ポルスターと出会えた監督と映画の幸福を改めて嚙みしめた。 (c)Menuet 2018  実在のダンサーに触発されたドンの映画は、ララの16歳の誕生日に父が語る「いろいろ大変なことはあった」とのひとことで、性のアイデンティティをめぐる外界との闘いをかいつまみ、潔く脇に置く。それよりは、思う通りの自分となるためにララがかいくぐる彼女自身との闘いに焦点を合わせることを選ぶ。確かにララの新人生を祝福する誕生パーティで「3人目の男の子」を妊娠中と実母がきめる脳天気な発言(インタビューで監督も不在と述懐している母をこの場面に敢えて見出してみたいのは、その発言がララ/ヴィクトールをまだ「一人目の息子」と捉える彼女の無意識の罪を示唆すると見ても面白いかもと思えるからだ)のように、悪意なき人のむごさや鈍さ、世界の厳しさを垣間見せはするものの、映画はそれより理解を湛えた大人たちの中で、すべてをひとりで抱え込み「大丈夫」と日々の痛みを裡(うち)に裡にと沈殿させるヒロインの辛さこそを辛抱強くみつめようとする。 ドキュメンタリーのように演技を超えるポルスター (c)Menuet 2018  シングルファーザーとして子供たちと暮らす父とララとの関係はとりわけ印象的だ。「君の名前で僕を呼んで」や「ビューティフル・ボーイ」の父とも通じる彼が注ぐ大きな愛。ゆっくりと思春期を愉しめ、あっという間に終わるから――と投げ掛けられる励ましの言葉。その100パーセントの善意ゆえに、もしかしたら紋切型の反抗も封じこめずにいられなくなるララの辛さがいっそう胸に迫る。そんな父やセラピストや医師の前で、ララは鎧のように微笑みの仮面を纏い続ける。そういえばと思い出すのは20世紀の初め、世界初の適合手術を受けた“デンマークの娘”リリー・エルベを描いた『リリーのすべて』のことだ。妻に後押しされて画家アイナー・ヴェイナーがトランスジェンダーの生を生き始めた自由と、身についた抑制の狭間で臆病な微笑みに閃光然とした瞬きをよぎらせる様。やがて手術によって身体的にも真の自分を全うする時、その瞬きがみごとに駆逐されていく様。演じたエディ・レッドメインはそんなひとりを英国俳優ならではの外側からのアプローチで完璧に形にしてみせていた。  かたやドンの映画はドキュメンタリー然とポルスターの演技を超えた佇まい、さらには肉体そのもののありさまを掬い上げていく。トウシューズを脱いではがされるテープ、血まみれのつま先の赤。レオタードの下の性器のふくらみを押さえつけるテープをはがすとその肌が鞭打たれたように赤く染まっている。そこで目を撃つ痛み。蛇口で水を含み、高窓に風を呼んで耐えるララを苛む肉体的な痛みが心のそれをも射抜き、ひりひりと見る目にも沁みてくる。そうやって日々繰り返される苦闘を記録する映画にやがて痛みの記憶を背負い込むように赤バックの場面がじわじわと増殖していくことも見逃せない。そうして開幕部分、諌める父をしり目に「もう遅い」と望み通り耳にピアスの穴をあけていたララが静かに選ぶデスパレートなその先の一歩――。 『無防備』(市井昌秀監督)と通じる「共感と衝撃」 (c)Menuet 2018  実は本稿をと送って下さった編集の川村さんのメールには市井昌秀監督の『無防備』を見た時の「共感と衝撃」と通じるとあって、最初はひとつもぴんとこなかったのだけれど、事故で子供を生めなくなった女(木下)と臨月の女、ふたりの関係を日々の暮しの中で丹念にみつめた挙句、走り出す映画の先に置かれた無修正の出産シーンを振返る時、目からうろこのような感覚がじわじわと襲いかかってきた。その時の原稿を少し長いが抜粋してみたい。「無論、新たな命の誕生を見届けることで殺意も憎悪も突破して自らも再び新しく生き始めた木下の笑顔のストップモーションに癒しや救いや赦しばかりを探るのはあまりに安易というものだろう。映画は終わり、そこで終わる筈もない世界に向けて観客はまた歩み出さずにはいられない。それでも、苛酷な世界に向けて小さな頭をはみださせた赤ん坊の無防備、その強さをまざまざと目撃した事実は残る。目撃させた映画が、むきだしの命の源を世界に向けて突きつけて露悪趣味とも感傷とも無縁の真空地帯、その峻厳をそこでもぎとっていた事実もまた観客の胸に美しく刻まれているだろう」  ララの薔薇色の痛みの先、選ばれた一歩も同じ峻厳をもぎとっていると思う。 文=川口敦子/制作:キネマ旬報社 この記事は『キネマ旬報』7月下旬号に掲載。今号では『Girl /ガール』の特集をおこなった。川口敦子による寄稿記事はじめ、ルーカス・ドン[監督・脚本]への取材記事を掲載している。(文中敬称略) 『キネマ旬報』7月下旬号の詳細はこちらから↓
  • 石橋静河「映画はひとりで作るものじゃない」 映画『いちごの唄』インタビュー 撮影:興村憲彦 数々の名ドラマを手がけてきた脚本家の岡田惠和と、俳優としても活躍するアーティスト、銀杏BOYZの峯田和伸が、銀杏BOYZの楽曲をモチーフにした小説を発表、映画化した話題作『いちごの唄』。年に一度、七夕の日にだけ会う男女のロマンチックなラブストーリーで、石橋静河は、織り姫もといヒロインの天野千日(ちか)を演じた。七夕の黄昏時、故郷を離れて若者の街・東京高円寺で、千日は、彦星にしてはいさかか頼りない青年・笹沢コウタ(古舘佑太郎)と偶然出会う。二人にとって七月七日は、十年前に千日をかばって交通事故で亡くなった、コウタの親友・伸二の命日でもあった。思いがけず楽しいひと時を過ごした二人は、来年もまた七夕の日に会う約束をして別れる。 どのように千日像を造形したのか ◎7月5日(金)より新宿ピカデリーほか全国にて (c)2019「いちごの唄」製作委員会 「役が決まる前に、岡田さんの脚本を読ませていただいたのですが、なんて素敵な物語なんだろう! と思いました。その後はじめて岡田さんとお会いした時、きっと嘘をつかない人だろうなと。そういう人がこういう本をお書きになるんだって納得しました。役が決まってからは、岡田さんの紡いだ世界が愉しみな反面、私にとっては挑戦になるだろうとも思っていました。脚本を読んだ時、物語全体として、これまでやってきたものとは違う空気を持った作品だなと感じたので」 どのように千日像を造形したのか。 「中学三年生の時に、自分のせいで同級生が死んでしまったと思っていること、十年経ったいまも、そこからまだ立ち直れずにいること……脚本に書かれてあることがすべてなので、それを手がかりにして。最初はやっぱり、心の中に抱える苦しみの重さに引っ張られすぎて、彼女の主観で役について考えるうちに、お腹が痛くなっちゃうことも多々ありました」 観客の想像力をかき立てる、難しい役どころ (c)2019「いちごの唄」製作委員会 前述の通り、千日とコウタは年に一度しか会わない。作中、七夕の日を心待ちにするコウタの描写こそあるものの、千日がどのような日々を過ごしていたのかは一切描かれない。さらに言えば、コウタと再会するまでの十年間を彼女はどう生きてきたのだろうか? と観客の想像力をかき立てる、難しい役どころだ。 「その年々の七夕の日のトーンの違いは、脚本にしっかりと描かれていたので、監督とも『一年の間にいろんなことがあったんだろうね』って話しながら撮影していきました。ただ、一年に一度の逢瀬だけで過ぎてゆく時間は結構長く、その一年の間に彼女に何があったのかは脚本に書かれていないので、想像しきれない。それまで自分がやってきたアプローチでは役を理解しきれず、どこか手放しながら演じている感覚でした。核心が摑めないままやっていたので、すごく不安でしたね。泳げないのに、海に出てるみたいな(苦笑)」 「映画はひとりで作るものじゃない」 (c)2019「いちごの唄」製作委員会 中でも石橋の印象に残っているのは、ある七夕の夜、千日がコウタに自分の気持ちを吐露するシーンだ。 「撮影後に落ち込みました。正直に言うと、できなかったなって思ったんです。脚本を読んでいた時は、読むうちに必ず涙が出てきたのに、実際に撮影した時は全然違う気持ちになっていて。“あれ、これでいいのかな?”と不安になってしまって。何テイクかしてOKが出たんですけど、千日の気持ちを伝えきれてない気がして……。でも完成作を観たら、自分の心の中で起きていたことも含め、千日の気持ちを、監督をはじめスタッフの方々がちゃんと切り取ってくれていました。特に音楽に助けられているなって。世武(裕子)さんの音楽が千日に寄り添い、彼女の思いをやさしく拡張してくれたというのか。あのシーンを観た時に“あ、映画はひとりで作るものじゃないんだな”とあらためて強く思いました」   記事の続きは『キネマ旬報』7月下旬号に掲載。今号では石橋静河の取材記事はじめ、巻頭特集は「追悼 京マチ子」、企画・作品特集は『Girl/ガール』『工作 黒金星と呼ばれた男』などを掲載している。(敬称略) 取材・文=石村加奈/制作:キネマ旬報社 『キネマ旬報』7月下旬号の詳細はこちらから↓
  • PTSDに苦しむ男性の空想世界を描いた感動の実話 映画『マーウェン』 (c) 2018 UNIVERSAL STUDIOS 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ(1985—90年)、『フォレスト・ガンプ 一期一会』(1994年)などで知られるロバート・ゼメキス監督。その最新作『マーウェン』は、ヘイトクライム(憎悪犯罪)の被害に遭った男性が、アートとイマジネーションで自身を癒すというストーリーである。PTSDに苦しむ男性の空想世界―そこでは5人の美女そっくりのバービー人形が戦士となってナチス相手に大暴れする!―を、最新のVFXを駆使して映像化。ヒューマンドラマを軸としながら、エンタテインメントの巨匠・ゼメキスらしいファンタジーたっぷりの一作に仕上がった。 ドキュメンタリー映画をドラマチックに映像化 草むらに置かれたフィギュアに指示を出す(?)R・ゼメキス ことの始まりは2010年、ゼメキスがPBSネットワークで放送されたあるドキュメンタリー映画を見たことがきっかけだった。それは、ジェフ・マルムバーグ監督の“Marwencol”(2010年)。ある性的志向(嗜好)がもとで5人の男からリンチを受け脳に障害を負うも、リハビリのために始めた写真でアーティストとして成功をおさめた男性、マーク・ホーガンキャンプを追った作品だ。この映画を見たゼメキスは、初めてマークという数奇な人物の存在を知り、ただちにその映画化を思いつく。「すぐに魅了されたよ。誰もが生きることに苦悩している現代において“癒し”は普遍的なテーマだ」とゼメキスは語る。 マークは異性装者(クロスドレッサー)だった。周囲には秘密で、ときどきストッキングやハイヒールを身につけていたのだ。だが、それが心無い連中に知られ、彼はひどい暴行を受ける。そして、襲撃の後遺症(PTSD)による不安に悩まされ、まともな仕事をできなくなった彼は、近所のホビーショップで買ったアクション・フィギュアやバービー人形を使って、自宅の庭に作ったジオラマのなかで写真撮影を開始する。「マーウェン」と名付けられたその架空の村は、マークが受けた傷を自ら癒すための空想世界だ。ゼメキスはなによりこの写真がもつ独特の世界観に惹きつけられたという。 人形に“生”を与えることが大切だった (c) 2018 UNIVERSAL STUDIOS ロバート・ゼメキス監督(以下、ゼメキス監督):「マークは1/6スケールのアクション・フィギュアとグラマーなバービー人形で自分や友人、近隣の人々、そして加害者までもを表現した。自分の顔と同じ場所に傷を描いたニコラス・ケイジのフィギュア“ホーギー大尉”は、まさしく彼の分身だ。アーティストならではの方法で現実世界の人々をアレンジしたキャラクターに、映画監督として、脚本家として、大いに創作意欲を掻き立てられたよ」 そうしたフィギュアたちが縦横無尽に暴れまわる空想世界を、パフォーマンス・キャプチャーを駆使したVFXによって再現しているのが、本作ならではのオリジナリティだ。 ゼメキス監督:「映画なら一枚一枚の写真が持つ物語を繋げられるし、彼の想像した世界をもとに、人形たちに“生”を与えられたら、パワフルで壮大な、今まで見たことのない映画が誕生すると思ったんだ。むしろ、映画でなければこの本当のおもしろさは伝わらないとさえ思ったね」 人生の悲劇に決着をつける (c) 2018 UNIVERSAL STUDIOS これまでも最新技術を駆使し新たな映像表現に挑戦してきたゼメキスだが、実写とパフォーマンス・キャプチャーが融合した『マーウェン』は、まさに面目躍如といった内容だ。その一方で、ゼメキスはこの物語のポイントを、アートを生み出すこと、表現することを通して、人生を生き抜く強い意志を語っている点だという。 ゼメキス監督:「人生で起きた悲劇に決着をつけられるのがアートであり、それはアートの重要な役割の一つだと思う。マークは人生のもっとも苦しい期間に終止符を打つために、自分の苦悩を表現する必要があった。彼がそうしたこと、そうしなければならなかったことに、私は心から共感できたんだ」 主人公のマークを演じたのは、『バイス』『バトル・オブ・セクシーズ』など、芸達者ぶりで知られるスティーヴ・カレル。彼もまたドキュメンタリーを見てすぐにこの映画化に興味を持った。ゼメキスのことを「レジェンドであり、唯一無二の存在」と絶賛するスティーヴとの仕事は、ゼメキスにとっても意義深いコラボレーションとなったようだ。 ゼメキス監督:「スティーヴはマークと、彼の分身であるホーギー大尉――スティーヴ・マックイーンを彷彿させる向こう見ずなアクションヒーロー―という二役を見事に演じてくれた。心に傷を負った男の深い感情と、ちょっとおバカなヒーローの痛快さ、この両方を演じ切れる俳優を、彼以外に思いつかなかったよ。私が考え得る、もっともこの役にふさわしい俳優だったね」   構成・文=「キネマ旬報」編集部/制作:キネマ旬報社   この記事は『キネマ旬報』7月下旬号に掲載。今号では『「作家」たちのランダム・ウォーク』特集をおこなった。この7月から8月にかけて、世界的に有名な3人の監督による最新作がたて続けに公開される。ロバート・ゼメキス監督の『マーウェン』はじめ、ヴィム・ヴェンダース監督の『世界の涯ての鼓動』、ジャック・オーディアール監督の『ゴールデン・リバー』を掲載している。 『キネマ旬報』7月下旬号の詳細はこちらから↓
  • キネマ旬報が選ぶ 子供たちに見せたいオススメ映画 (C) 2016 Universal Studios. All Rights Reserved. 「映画感想文コンクール2019」応募受付中!! 全国の小中学生を対象に開催している「映画感想文コンクール」が今年も始まりました!今回は、コンクールの参加を考えている子供たちに向けて、この夏休みに是非見て欲しいオススメ作品をご紹介。創刊100年の歴史を持ち、伝統ある映画雑誌として日々たくさんの映画に携わっているキネマ旬報社の社員たちが、子供たちに心からお薦めしたい作品をピックアップしました。各作品のお薦めコメントと合わせて、一挙ご紹介します! SING /シング 発売元・販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメントジャパン合同会社 【あらすじ】 動物だけが暮らす世界。取り壊し寸前の劇場の支配人でコアラのムーンは、劇場を守るため歌のオーディションを開催する。しかし、集まってきたのは自信家で傲慢なネズミや、美しい歌声を持つもステージを恐れる内気なゾウなど、個性溢れる面々ばかりで……。 【お薦めコメント】 随所で流れる音楽がどれも本格的かつノリノリなので、家族で楽しめる事間違い無しの本作。そして色々な想いを抱えていた動物たちが、感情や想いを歌にのせ、夢見る舞台で自由に歌う様には感激。自分の殻を破り、好きな事へ飛び込む勇気を与えてくれます! 走れ! T 校バスケット部 発売元:テレビ朝日、東映ビデオ/販売元:東映 DVD(4,700円+税)好評発売中 【あらすじ】 バスケットボールの強豪校でエースとして活躍するも、いじめが原因で自主退学した陽一。T校に編入しバスケを辞めることを誓うが、弱小バスケ部の仲間たちとの出会いが再び彼をコートへと駆り立てる。陽一を迎えたT校は、全国大会に向けて走り出し……。 【お薦めコメント】 主人公が新たな環境で素晴らしい仲間と出会い、再びバスケに情熱を注いでいく姿は大人にとっても感動もの。自分の居場所はどこかに必ずあるということ、そして本当に信頼できる仲間と共に、目標に向かって駆け抜ける日々は一生の宝物になるということを教えてくれる。今まさに人間関係を学んでいる子供たちに、是非見て欲しい作品。 響 -HIBIKI- 発売元:小学館/販売元:東宝 DVD通常版(3,800円+税)好評発売中 【あらすじ】 活字離れなどの影響により出版不況に陥った文学界に、響という天才少女が現れる。まだ15歳ながら圧倒的な才能を持ち、自分の生き方を絶対に曲げない彼女は、過去の栄光にすがる有名作家や売れない小説家など、様々な人々に計り知れない影響を与えていく。 【お薦めコメント】 秀でた文学的才能に驕らず、その才能に自分を捧げて、一途に突き進むヒロイン・響のカッコ良さ。才能があるから小説を書くのではなく、ただ好きだから書くというその思いに打算はなく、ひたすら純粋でシンプル。暴力も躊躇わない生き方の危なっかしさも含めて、わが道を行く彼女から刺激を受けることはきっと多いでしょう。 LIFE!/ライフ 発売元・販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン 【あらすじ】 雑誌「LIFE」の写真整理の仕事をしながら、平凡な毎日を過ごすウォルター。ある時、「LIFE」の廃刊が決定し、最終号を飾る表紙の写真のネガが無いことに気付いた彼は職場を飛び出し、その写真を撮った著名なカメラマンのショーンを訪ねる旅に出る。 【お薦めコメント】 人知れず“日陰”で生きていた男が、ある日を境に自分の妄想の世界から現実へと飛び出していく爽快のアドベンチャー。探し求める写真のネガがやがて自分の人生の“ピース”となる様と、元々スキルを兼ね揃えている心優しい男の人生が開花していく様には、超絶感動! ルパン三世 カリオストロの城 発売元・販売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン 【あらすじ】 盗み出した金が「ゴート札」という偽札だったことを知り、その真相を探るためにカリオストロ公国にやって来たルパンと次元。そこで花嫁姿の少女が武装集団に追われているところに出くわしたルパンたちは、少女を救おうと試みるが彼女は連れ去られてしまい……。 【お薦めコメント】 アニメでしかできないダイナミックな描写に、緊迫するシーンと笑いの緩急、練り上げられた脚本と忘れられない名台詞の数々。今から40年前(!)の作品なのにまったく色褪せない宮崎アニメ。子供がまだ見ていないなら、何をおいても絶対見せたい名作です。 若おかみは小学生! 発売元・販売元:ギャガ DVD スタンダード・エディション(3,800円+税)好評発売中 【あらすじ】 事故で両親を亡くし、おばあちゃんに引き取られることになった小学6年生のおっこ。そこで、彼女にしか見えないユーレイのウリ坊に出会い、彼のお願いでおばあちゃんが営む旅館の若女将として働くことになる。慣れない女将の仕事に、おっこは奮闘するが……。 【お薦めコメント】 旅館にひとりでやって来たおっこが不思議な仲間たちと出会い、“若おかみ”として成長していく冒険の毎日に、わくわくとハラハラが止まらない! 同じく旅館の娘であるライバルとの友情、知られざる祖母の旧友、そしておっこの人生を変えた人物との思いがけない出会い……。大粒の涙がこぼれる中、明日に進む勇気をくれる1本。   いかがでしたか? 是非、感想文を書く際の作品選びの参考にしてみてくださいね。 コンクールの応募方法など詳しい情報は公式サイトに掲載しています。この夏、「映画」を題材にした学びの機会として、皆さんのご参加を心よりお待ちしています! 制作:キネマ旬報社 今年の夏は、「映画感想文コンクール」に挑戦してみよう! 過去のグランプリ作文をはじめ、今年の開催概要は『映画感想文』で検索