神木隆之介(主演)×野木亜紀子(脚本)×塚原あゆ子(監督)×新井順子(プロデューサー)が明かす『海に眠るダイヤモンド』ディレクターズカット版本編と特典の魅力

2024年 第98回キネマ旬報ベスト・テンで日本映画第9位&日本映画脚本賞受賞の映画「ラストマイル」を大ヒットさせた、脚本・野木亜紀子×監督・塚原あゆ子×プロデューサー・新井順子の強力チームによるテレビドラマ『海に眠るダイヤモンド』。昭和の高度経済成長期と現代を結ぶ70年にわたる愛と青春と友情、そして家族の壮大な物語を描き、石炭産業で躍進した当時の長崎県・端島を再現することにも挑戦した、この超大作ドラマのBlu-ray&DVD BOXが、未公開映像を含む全話ディレクターズカット版本編や3時間以上の特典映像を収録して、3月28日に発売される(レンタルDVD同時リリース)。本作の魅力やディレクターズカット版と特典のお薦めポイントなどを、主演の神木隆之介と野木、塚原、新井の4人のコメントも交えてお届けする。

ギャラクシー賞月間賞も受賞したTBS日曜劇場ドラマ

『海に眠るダイヤモンド』は、ドラマに定評のあるTBSの看板枠の日曜劇場で、2024年10月20日~12月22日に放送された連続ドラマ。約70年前の長崎県・端島と、現代の二つの舞台を描き、双方の時代の主人公である鉄平と玲央を、神木隆之介が一人二役で演じている。野木脚本ならではの緻密な伏線や、杉咲花・池田エライザ・土屋太鳳のトリプルヒロインを配した先の読めない恋模様なども視聴者を惹きつけて毎回の放送時に考察なども盛り上がり、多数のヒット作・話題作を輩出している日曜劇場枠としても2015年の『天皇の料理番』で受賞以来9年5カ月ぶりにギャラクシー賞月間賞(2024年12月度)を受賞する高い評価を受けた。

物語は、売れないホストとして自分をすり減らしながら生きている無気力な青年・玲央が、2018年の新宿・歌舞伎町で、偶然出会った謎の老婦人・いづみ(宮本信子)に声をかけられたところから始まる。会社社長で玲央の太客となったいづみは、突然に玲央を長崎に連れ出し、通称・軍艦島こと端島へ向かう遊覧船に乗り込む。端島を見て泣き崩れるいづみは、昭和の高度経済成長期に石炭産業で日本を支えた端島が、多くの人々で賑わっていた当時のことを玲央に語り始める。

そうして時を遡った1955年の端島。そこには玲央とそっくりな顔の明るく真っ直ぐな青年・鉄平がいた。端島の炭鉱員の家に生まれ、中学卒業後は長崎の高校・大学へと進学したが、大好きな端島のために働きたいという一心で帰郷し、端島の炭鉱業を仕切る鷹羽鉱業の勤労課外勤として働いていた。端島には、鉄平と共に長崎大学を卒業後に帰郷した賢将(清水尋也)と百合子(土屋太鳳)や、食堂の看板娘の朝子(杉咲花)らの幼馴染たち、そして鉄平の兄・進平(斎藤工)、父・一平(國村準)、母・ハル(中島朋子)らそれぞれの家族たちが、活気溢れる狭い島の中で暮らしていた。そこに博多のクラブから逃げ出してきた女性歌手リナ(池田エライザ)がやってきたことから、鉄平の人生は大きく変わっていく。

瓜二つの玲央と鉄平の関係とは、端島に縁のあるいづみの正体とは……。ミステリーも交えて、端島で生きる人々の生活を丹念に描き、70年にわたる愛と友情、家族の壮大な物語が、現代と過去を行き来しながら複雑に絡み合い綴られていく、時代を超えたヒューマンラブエンターテインメントだ。

第6話のオーディオコメンタリーの見所

3月28日に発売されるBlu-ray&DVD BOXの第6話には、特典音声として主演の神木、脚本の野木、監督の塚原によるオーディオコメンタリーを収録。この収録後の3人にプロデューサーの新井も交えて、取材をさせていただいた。※ここからの発言の一部にはネタバレが含まれます。

まずは初出しの制作秘話がたっぷり語られたというオーディオコメンタリーについて。第6話では二組のカップルの告白シーンが放送当時に大きな話題となった。その鉄平の告白シーンでアイデアを出したという神木は、「撮影順も、賢将の告白シーンを見た1週間後くらいに、僕らの告白シーンのロケ撮影でした。前の二人のシーンがすごく素敵でロマンチックだったし、プロポーズという大きな告白の後だから、自分たちはどういうアプローチの仕方をしたらいいんだろうと考えた時に、鉄平自体がロマンチックな奴じゃないし、前の二人の真逆でいくと、心の中でずっと挑戦してみたいなあと思っていた恋愛リアリティショーの『あいのり』っぽい感じはどうかなと。そもそも僕は鉄平や玲央を演じている時、過去の端島に生きる炭鉱会社の職員と現代に生きるホストのそれぞれが生活している一部分を切り取って撮っているドキュメンタリーのような気分で、ドラマだと思わずにやりたいと塚原さんにも話していたんです。それで、塚原さんにご提案をさせていただくと、『いいじゃない』と言ってもらえて」と振り返る。

恋愛リアリティショーっぽい感じとは、プロが撮ったスムーズな画でなく、手ブレがあったり動きが遅れても無骨に対象を追う、例えば運動会で家族が撮影した映像のようなドキュメントっぽい告白シーンで、普通に撮ってしまうと「W告白になるので、後半戦の鉄平(神木)の方が不利なわけですよ(笑)」と神木のアイデアを採用してみた塚原は、カメラマンに「プライドを捨てて、下手に撮って!」とお願いしたそう。この脚本について「前の二人は背負っているものがあるから重さがある。その後なので、プロポーズなんだかそうじゃないんだかわかんない、ふんわりした感じにしたかった。ここでプロポーズが成立すると終わっちゃうので(笑)」という野木は、「下手くそには見えなかったし、いい塩梅だった」という完成品でこのシーンの芝居を見て「なんだこのピュアさは(笑)!」とびっくりしたそう。

「私の脚本はやりようによってはコミカルに振れる感じもあったけど、2人のキャラが素朴だとはいえ、まさか本当にあんな純度120%みたいな、そこまでピュアな芝居で来るとは思わなかった。だって2人とも泣いちゃうんですよ、すごくないですか。告白しながら鉄平が泣くなんて、神木さんも困るでしょうから、脚本家としてはさすがに書けません(笑)」(野木)

「泣かなきゃいけないんだよな~と思っちゃうと、プレッシャーがかかったかも」と明かす神木のこの告白シーンは、実際の撮影では完成品よりも長尺で撮っており、塚原は「がんばれ鉄平! 早く言わないと!」と思ったそうだが、神木は「でも『あいのり』ってそうじゃないですか(笑)」とのこと。新井も「他人の告白を盗み見てるような感じで、スタッフもずっと最初は集中してモニターや現場を見てたんですけど、いつ好きっていうかわかんないから、だんだんみんな『ん?』『いつ言うんだろうこれは?』みたいな感じだったし、どう編集するのかなと思った(笑)」と、現場の様子を振り返る。このシーンについては、神木がこのオーディオコメンタリーで初出しの鉄平の涙の秘密を詳しく明かしているのに加え、映像特典では5分以上のノーカットのマルチアングルで収録されているので、ぜひBlu-ray&DVD BOXで楽しんでいただきたい。

ディレクターズカット版を収録した本編の見所

総計10分以上の未公開映像を交えて再編集されたディレクターズカット版本編が収録されているのも見逃せない。特に変わっているのは4話だそうで、「音楽のつけ方から変わっています」(新井)、「オンエア版だと、現代パートがだいぶ切られていて、なぜかわからないけど、いきなり玲央といづみが庭で盆踊りをしているシーンも、本当は前段があったことがわかります(笑)」(野木)、「見た人が『こんなに切ってたの?』と驚くほど長くなってます……」(塚原)ということで、3分以上増えている。各話とも尺が長く、最短で30秒の追加だそうだが、カットによっては僅か数秒でも大きな意味を持つことを描けるだけに、その印象はかなり異なるはずだ。

前述した特典映像は総計3時間以上にもおよび、『話題の超大作 製作の舞台裏に迫る徹底ガイド』、『キャストインタビュー(神木隆之介・斎藤工・杉咲花・池田エライザ・清水尋也・土屋太鳳)』、『豪華出演者大集合スペシャル(神木隆之介・斎藤工・杉咲花・土屋太鳳)』、『未公開&ハプニング集』、『オールアップ集』、『神木隆之介×杉咲花×土屋太鳳 スペシャルインタビュー』、『神木隆之介×斎藤工が第1話 注目のあのシーンを徹底解説!!』、『杉咲花と土屋太鳳が第1話の推しポイントをご紹介!!』、『神木隆之介×斎藤工 端島のミニチュア模型でドラマの魅力を深掘り!』、『神木隆之介×土屋太鳳×池田エライザ×脚本家・野木亜紀子 最終回直前スペシャルトーク』など、放送・配信された番組も含めて多彩な映像を収録。

さらに封入特典のブックレットには、野木による作品解説『ノギノート』、演出担当の各話解説『ディレクターズノート』、撮影・美術・衣裳などのこだわりインタビュー、鉄平の日記一部公開、セット図解説、オフショット集などを全56Pにわたって掲載。そんな全話鑑賞済の方も初めて見る方も、誰もが楽しめる今回のBlu-ray&DVD BOXについて、4人は何度でも見返して欲しいとアピール。

野木「最初から見直すと、いろいろより深く、意味合いがだいぶ違って見えるはず。歯車がちょっとずつ狂っていく感じなどもわかるし、そもそも最初の1話目で、なぜ端島を見ただけでいづみが泣き出すのかも、最終話まで見た上で見直すと、また新たな物語が見えると思います」

塚原「結末まで知った上で見ると、例えば第6話の告白シーンも、『早くここで言っておけば良かったのに!』なんて、いろんな感情が溢れるはず」

新井「ストーリーを全部知った上で見返すと、『だからこういうこと言うんだ』という伏線がわかるのもありますが、やっぱり今回は、かつての端島を再現した美術も見ていただきたい。実は端島を訪れるシーンは、最初の方にまとめて撮っていますが、初めて上陸して奥まで行かせてもらった時に、ロケセットと全く一緒でそっくりだったことに全員が驚いたし、テンションが上がりました。初めて訪れた場所なのに、『ずっと見てきた』『ここかー!』みたいな。細かいところまですごく細やかに作り込まれている美術のすごさも、ぜひ注目していただけたら」

神木「僕自身もそうでしたが、軍艦島という通称は知っていても、端島を詳しく知らない方も多いはず。今回、初めて調べたり、実際に行かせていただき、鉄平という役を通して生活させていただいて、本当に活気があってパワーをもらえる島だったんだろうなと思いました。それもたった数十年前で、すごく昔の話ではない。誰かの実家でもあったと思うと、すごく大事な場所に思えてくる。このドラマを見て興味を持っていただけたら、ぜひ調べてみたり、実際の長崎県の端島や資料館などに行ってみていただきたい。その上で見直すと、またこのドラマの見方も変わってくると思うんです」

端島を再現した圧巻の美術も楽しめる、“野木朝ドラ大河”ともいうべき歴史もの

東京ドーム1.3個分程度の小さな人工島に、海底炭鉱で栄えていた最盛期には人口密度世界一の5300人が暮らしていたという端島を再現した美術は、まさに圧巻。木々など緑の全くないロケのできる無人島など存在せず、ロケ場所探しから困難を極めたが、全国を飛び回ったロケ撮影とセット撮影に、テレビドラマのスケジュールで制作可能な効率的な最新CG映像技術も駆使して再現した。その苦労の裏話は山ほどあるそうで、超大作映画でもこれほどの再現は難しいだろう。また、一人二役を演じ、順撮りでもない中でそれぞれの変化も表現しなければならなかった神木の心境など、様々な興味深い話を伺った。本作への実現に多大な協力を果たした長崎県・長崎市への感謝の想いもみな強く、野木・塚原・新井の3人は、1月24日に長崎県庁を、翌25日に長崎市長を表敬訪問。神木も4月18日にベネックス長崎ブリックホールで、「感謝の気持ちを直接伝えたい」と、トークイベントを開催予定。「とあるゲストも呼ぼうと計画していますし、長崎の方々に少しでも喜んでいただけたら」とのことで、本作への想いの深さが窺える。

塚原が「“野木朝ドラ大河”的な歴史もの」と称する本作は、全編に張り巡らせた伏線やミステリーもあれば、男女や家族の愛もある。友情や日常生活を描く群像劇やホームドラマでもあり、1955年からの端島で暮らし、育った人々の人生を描く大河ドラマで、それを見事に現代社会まで繋げて描ききった、野木ならではの社会派エンタメでもある。様々な要素を交えており、これまで野木が培ってきたものを全力投入した現時点の集大成ともいうべき作品ともいえるので、ぜひともお薦めしたい。

 

文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社

『海に眠るダイヤモンド』

●3月28日(金)Blu-ray&DVD BOXリリース(レンタルDVD同時)
Blu-ray&DVD BOXの詳細情報こちら

●ディレクターズカット版 Blu-ray BOX 価格:32,340円(税込)
【ディスク】<4枚組(本編ディスク3枚+特典ディスク1枚)>
●DVD BOX 価格:26,400円(税込)
【ディスク】<6枚組(本編ディスク5枚+特典ディスク1枚)>

【Blu-ray&DVD共通】
<特典映像>

◆話題の超大作 製作の舞台裏に迫る徹底ガイド
◆初回放送直前!キャストインタビュー(神木隆之介・斎藤工・杉咲花・池田エライザ・清水尋也・土屋太鳳)
◆豪華出演者大集合スペシャル(神木隆之介・斎藤工・杉咲花・土屋太鳳)
◆未公開&ハプニング集
◆オールアップ集
◆神木隆之介×杉咲花×土屋太鳳 スペシャルインタビュー
◆神木隆之介×斎藤工が第1話 注目のあのシーンを徹底解説!!
◆杉咲花と土屋太鳳が第1話の推しポイントをご紹介!!
◆神木隆之介×斎藤工 端島のミニチュア模型でドラマの魅力を深掘り!
◆神木隆之介×土屋太鳳×池田エライザ×脚本家・野木亜紀子 最終回直前スペシャルトーク
◆SPOT集
<特典音声>
◆第6話オーディオコメンタリー(神木隆之介×脚本家・野木亜紀子×監督・塚原あゆ子)
<封入特典>
◆ブックレット全56P
脚本・野木亜紀子による作品解説「ノギノート」、演出担当の各話解説「ディレクターズノート」、鉄平の日記一部公開、セット図解説、オフショット集などを掲載!


●2024
年/日本/本編512分/特典192
●脚本:野木亜紀子
●音楽:佐藤直紀
●主題歌:King Gnu「ねっこ」(Sony Music Labels Inc.)
●プロデュース:新井順子 松本明子
●演出:塚原あゆ子 福田亮介 林啓史 府川亮介
●製作:TBSスパークル TBS 制作協力:NBC長崎放送

●出演:神木隆之介 斎藤 工 杉咲 花 池田エライザ 清水尋也 ・ 中嶋朋子 / 國村 隼 / 土屋太鳳 沢村一樹 宮本信子

●発売元:TBS/TBSグロウディア 販売元:TCエンタテインメント
©TBSスパークル/TBS

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