5年ぶり、9作目となる三谷幸喜監督作「スオミの話をしよう」は、失踪した女性とその5人の元夫たちによるミステリー・コメディ

三谷幸喜脚本・監督、主演の長澤まさみと、西島秀俊、松坂桃李、瀬戸康史、遠藤憲一、小林隆、坂東彌十郎ら超豪華キャストで贈る映画「スオミの話をしよう」のBlu-rayとDVD が、2月26日(水)に発売された。大富豪の屋敷を舞台に、ミステリアスな女性スオミの失踪をめぐる、演劇的な世界観も楽しめる三谷ワールド全開の大ヒット・ミステリー・コメディだ。

失踪したスオミと5人の元夫と夫たちのミステリー

「記憶にございません」から5 年ぶり、9作目となる三谷幸喜監督作「スオミの話をしよう」は、昨日から行方不明の詩人の妻スオミをめぐる物語。舞台は、スオミの夫で詩人の寒川しずお(坂東彌十郎)の豪邸。大事にしたくないという寒川の意向で、非公式に駆けつけたのは彼の知り合いの警察官、デカ長こと草野圭吾(西島秀俊)と、その部下で寒川ファンの小磯杜夫(瀬戸康史)。寒川の屋敷には他に、彼の担当編集者兼秘書の乙骨直虎(戸塚純貴)と、寒川宅で庭師と料理人として働く魚山大吉(遠藤憲一)がおり、そこにさらに、草野の上司で係長の宇賀神守(小林隆)と、怪しげなYouTuber・十勝左衛門(松坂桃李)が現れる。

彼らは性格も年齢もバラバラ。でも小磯と乙骨を除く男たちには、共通点があった。それはスオミと結婚したことがあるということ。三谷監督は、そんなスオミを演じる長澤まさみが、一番魅力的に見える脚本を書いたという。ちなみにスオミとはフィンランド語で“フィンランド”という意味だそう。スオミと名付けられた理由は、本当かどうかは別として、映画のなかで彼女の母親によって語られる。映画の後半で登場する、5人の夫から見た5通りのスオミを、長澤が瞬発力をもって演じ分けるシーンは圧巻。彼らとともに長澤が歌い踊るカーテンコールともいえる『ヘルシンキ』も必見だ。

三谷幸喜監督がこの映画を撮ろうとしたきっかけは?

夫たちが語るスオミ像には、驚くほど違いがある。ある夫には気弱な女性に見え、ある夫には押しの強い女性に見え、ある夫には国籍すら違う人物に見えているようだ。これはスオミに、相手が望むように自分を変えられる特技があるからだ。夫たちが語るスオミ像は、たぶん自分が“妻”という存在に望む理想の姿なのだろう。本当のスオミとはいったいどんな人物なのか? なぜ行方不明になったのか? そして彼女が現れるところに必ず登場する女性(宮澤エマ)とは?

「人は誰しも相手によって違う一面を持っている」。「スオミの話をしよう」は、そこにインスピレーションを得た三谷幸喜がオリジナル脚本として書き上げた。三谷監督がそう気づいたきっかけは、「家族の前の自分と、仕事の場での自分では、在り方が異なる」と思ったからだという。その場の雰囲気によってカメレオンのように自分を変える。それはきっと人が生き抜くための一つの術なのだろう。

三谷演劇の感覚も楽しめる本作

この作品は、これまでの三谷作品より、舞台鑑賞的な楽しみ方もできる作りになっている。5人の夫たちの回想シーン以外、舞台はほぼ寒川邸。そこで繰り広げられるのは台詞劇、それをワンシーンワンカットの長回しで撮影し、ラストは華やかな歌と踊りのカーテンコールで締める。実際、映画には珍しくクランクインの前、約1カ月の稽古をしたという。

映画館では、長回しで撮影された豪華な俳優陣による芝居のアンサンブルや、サバイバルゲーム場やセスナ機上での見たことのない愉快な戦闘シーンやアクションシーン、そしてミステリーの謎解きと、映画ならではのダイナミズムを楽しんだ。

Blu-rayではさらなる楽しみ方もある。それは、三谷作品を舞台感覚で楽しむということ。しかも特等席で。あのチケットの取れない三谷演劇の世界を特等席で味わえると考えると、劇場とは異なる楽しみ方となる。スピーカーとモニターを揃え、照明を落とした部屋で観る「スオミの話をしよう」は、没入感たっぷり。いや、特等席というより、その世界――、寒川邸で巻き起こる事件の謎を、解き明かす一人になったかのような気持ちになれる。

スペシャルエディションの映像特典も見どころたっぷり

スペシャルエディションの映像特典は、約3時間半におよぶ。まずは、企画「スオミの話をする前に ○○ の話をしよう」。5人の夫を演じた俳優が抜けたすきに、三谷監督を含むキャスト(ほぼ)全員で、その人物に関する撮影時の裏話を展開する。なんといっても、映画作りを満喫した感覚を共有してくれる、三谷監督のテンションが楽しい。

三谷監督が山崎怜奈を誘ってセットを案内する「三谷幸喜が山崎怜奈を案内 映画 『スオミの話をしよう 』 セットツアー」では、その豪華さを山崎の驚きとともに楽しめる。どのような観点から広い寒川邸のセットを作ったか。そのどこにカメラを据えることで、どんな効果を狙いたかったか。映像とともに監督がじきじきにセットについて語るのはとても珍しい。映画ファンならずともワクワクする企画だ。

本作が特別招待されたヘルシンキ国際映画祭を三谷監督が訪ねる「三谷 監督 in ヘルシンキ」や、映画公開に向け、場所やシチュエーションを変えて、何度となく行われるイベントの数々を時間軸で紹介していく映像も興味深い。

このようなイベントには、映画を紹介するサイドの我々も、取材者として参加する。イベントに登壇した俳優や監督たちが、撮影(本作の場合、約1年前)や自分の役作りを思い出し始める初期の段階から、取材を受けていくうちに役に対する答えが固まった公開直前まで並走することもしばしば。イベント映像の数々を見ていると、その感覚を思い出す。記者のように、監督や俳優たちと並走し、映画が公開されるまでの感覚を味わってみる。それもまた興味深い発見があるはず。いろいろな方向から三谷映画を楽しんでほしい。

文=関口裕子 制作=キネマ旬報社

『スオミの話をしよう』

●2月26日(水)Blu-ray&DVDリリース(レンタル同時)
▶Blu-ray&DVDの詳細情報こちら

●Blu-ray スペシャル・エディション 価格:7,920円(税込)
【ディスク】<2枚>※本編114分+映像特典
★音声特典★ ※Blu-ray&DVDスペシャル・エディション共通
オーディオコメンタリー 三谷幸喜×長澤まさみ
★映像特典★ ※スペシャル・エディション共通
・映画『スオミの話をしよう』公開記念特番「スオミの話をする前に○○の話をしよう」
・三谷幸喜が山崎怜奈を案内!映画『スオミの話をしよう』セットツアー
・三谷監督inヘルシンキ
・イベント映像集
・相関図で『スオミの話をしよう』
・公開直前!スペシャルPV
・予告編集
・CM集

●DVD スペシャル・エディション 価格:6,930円(税込)
【ディスク】<3枚>※本編114分+映像特典
★音声特典★ ※スペシャル・エディション共通
★映像特典★ ※スペシャル・エディション共通


Blu-ray スタンダード・エディション 価格:5,170円(税込)
【ディスク】<1枚>※本編114分+映像特典
★映像特典★ ※スタンダード・エディション共通
・相関図で『スオミの話をしよう』
・公開直前!スペシャルPV
・予告編集
・CM集

● スタンダード・エディション 価格:4,180円(税込)
【ディスク】<1枚>※本編114分+映像特典
★映像特典★ ※スタンダード・エディション共通


●2024年/日本/本編114分
●脚本と監督:三谷幸喜
●出演:長澤まさみ
西島秀俊 松坂桃李 瀬戸康史 遠藤憲一 小林隆 坂東彌十郎
戸塚純貴 阿南健治 梶原善 宮澤エマ
●発売元:フジテレビ 販売元:ポニーキャニオン
©フジテレビ 東宝

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