日活ロマンポルノ50周年記念「艶笑夜噺 古今東西」イベントレポート

11/ 27(土)と11/ 28(日)の2夜にわたり日活主催のイベント、日活ロマンポルノ50周年記念の演芸会「艶笑夜噺 古今東西」が数々のクラシック映画の上映で知られる池袋の名画座、新文芸坐で開催された。

本公演は1971/11/20に日活ロマンポルノを銘打った作品が公開されてからの50周年を記念して始動している、【ロマンポルノ50周年記念プロジェクト】の一環として、ロマンポルノにまつわる演芸会を落語家の柳家喬太郎、活動写真弁士の坂本頼光を交えて、作品の上映も併せて行うといったもの。尚、ロマンポルノ50周年記念プロジェクトとしては、シネマヴェーラ渋谷にて特集上映企画「私たちの好きなロマンポルノ」(2021/12/17まで開催)も開催中。また、金子修介、白石晃士、松居大悟といった3人の監督によって新作の製作も発表している。その特別な演芸会の11/27(土)の様子をお届けしたい。

映画館のスクリーンいっぱいに公演タイトルが表示され、軽快なお囃子のBGMが観客を迎え入れる。このBGMは、艶笑落語(落語の中でも大人向けの艶っぽい噺)をテーマとしたロマンポルノ作品『江戸艶笑夜話 蛸と赤貝』の音楽からの選曲。通常の名画座上映企画とは違い、寄席に来たような雰囲気の中、二番太鼓(寄席で開演前に流される太鼓)の音と共に、開演5分前のアナウンスが流れる。

いよいよ開演、お囃子さんが奏でる音楽と共に、活動写真弁士(サイレント映画の解説者)として活躍する司会の坂本頼光が舞台袖より登場。開演の宣言を行う。

「今からさかのぼること半世紀。1971年、昭和46年、この年は、NHKが全番組のカラー化放送をはじめたことでもわかるように、日本全国に普及したテレビが人々の新しい娯楽の中心となり、それまで日本のエンターテイメントの中心であった映画産業を取り巻く環境は、非常に厳しい時代でした。」

弁士ならではの語り口で、斜陽をむかえていた映画産業の中で、日活も含めた各社が非常に厳しい時代であったという時代背景が解説される。

「そんな1971年11月20日。後の日本映画史に足跡を残す2本の作品が公開されました。

西村昭五郎監督・白川和子主演 『団地妻 昼下りの情事』、そして林功監督・小川節子主演『色暦大奥秘話』。ここから日活ロマンポルノ歴史がはじまるわけでございます。」

日活が経営戦略としてロマンポルノ路線に踏み込み、それ以降17年にわたり、多数の作品が生み出され、若手監督の登竜門となっていたという、映画史におけるロマンポルノの立ち位置を分かりやすく解説が続く。そして、本日の演芸会の演目内容が説明され、ご自身の発掘したブルーフィルムの活弁を披露することが伝えられる。

【1演目目】活弁「ぶるうふぃるむ:監督と女優(仮題)」坂本頼光

坂本の師匠が持っていたというアメリカの古いサイレント映画の作品のブルーフィルム(成人向け作品)を上映。ストーリーは、映画の都に明日のスターを夢見る新人の女優がオーディションにやってきた、するとそれを待っていた監督と女優の間に何がおこるのか?といった内容。あくまでも成人向け作品として作られた作品であり、今回の上映用に特別にボカシの処理を行って編集されたものであるが、そこは活弁師ならではの話芸として、面白おかしく紹介。作品のクライマックスに向かうにつれ、会場の笑いの声も大きくなっていく。

 

【2演目目】落語「艶笑小噺、欣弥め(きんやめ)」柳家喬太郎

スクリーン前に設置された高座に2演目目は柳家喬太郎が登場。青春時代に映画雑誌のロマンポルノの写真を見て、ドキドキした思い出話や、特撮好きとして日活映画『大巨獣ガッパ』特集に呼んでいただきたいと、お客様の笑いを誘う。そして、普段はお座敷芸としてしかなかなかかけることのない、艶笑噺の小話を次々と披露し、最後に古典落語で艶笑噺のひとつ「欣弥め」を口演。大きな拍手を背に受けて、高座を後にし、仲入り(休憩)へと入る。

 

【3演目目】映画『性談 牡丹燈籠』監督:曽根中生

仲入り後は、坂本頼光が再び登場。上映作品の解説として、原案となった「牡丹燈籠」が落語などの演芸作品となり成立していった過程や、監督の曽根中生監督について詳しく解説がなされる。本作の見どころとして、曽根を情念を描くのが上手な監督として取り上げ、落語の演目をうまく映画として昇華させ演芸ファンにも楽しめる作品ではないかとの解説を入れる。さらに、当時、日活が時代劇ドラマ「大江戸捜査網」を製作していたこともあり、本格時代劇セットや衣装を活用できた点や、主演の小川節子、脇役のバイプレーヤーとして活躍した榎木兵衛の演技など、映画の見どころを幅広く説明し、本作の上映に入る。

『性談 牡丹燈籠』より

映画上映後は会場が拍手で包まれ、太鼓の音と共に2時間半にわたった50周年記念の演芸会の第一夜は終了。

会場ロビーでは演芸会らくし本日の演目が表示され、多くの観客が帰り際自身のスマホなどで撮影していた。

尚、第二夜(11/28)は、坂本頼光がオリジナルアニメ作品の活弁、柳家喬太郎が大爆笑の艶笑噺「吉田御殿」、そして落語家が多数出演している時代劇ロマンポルノ作品『江戸艶笑夜話 蛸と赤貝』と第一夜とは全く違った演目で開催、趣の違った会となった。

 

■開催概要

開催日時:2021 年 11 月 27 日(土)& 28 日(日)

会場:池袋 新・文芸坐+ PIA Live Stream

出演:柳家喬太郎(落語家) & 坂本頼光(活動弁士)

上映:第一夜 『性談 牡丹燈籠』 / 第二夜 『江戸艶笑夜話 蛸と赤貝』

尚、本公演はアーカイブ配信のチケットが、各2,200円にて、それぞれ公演の1週間後(第一夜は、12/4、第二夜は12/5まで購入可、それぞれの販売最終日まで視聴できる。)

詳しくは https://w.pia.jp/t/nikkatsu-romanporno/

 

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