フランソワ・トリュフォー生誕90周年を記念した特集上映【生誕90周年上映 フランソワ・トリュフォーの冒険】が、6月24日(金)より角川シネマ有楽町ほかで全国順次開催。上映作とスケジュールが決定し、メインビジュアルが到着した。

 

 

メインビジュアルにある「映画が彼の人生すべてだった。」のコピーの通り、映画を愛し、映画に愛されたトリュフォー。上映作品群はそんな彼の人生を反映し、冒険と多様性を体感させる。

ラインナップは短編含め全12本。主軸となるのはカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した初長編「大人は判ってくれない」(1959)をはじめ、監督自身を投影した“アントワーヌ・ドワネル”シリーズの本邦初4Kデジタルリマスター版上映だ。期間中には前東京国際映画祭ディレクターの矢田部吉彦氏、アンスティチュ・フランセ日本の坂本安美氏のトークあり。

スケジュールは公式HPでご確認を。

 

【上映作品】

★は4Kデジタルリマスター版で上映

「あこがれ」(短編)「私のように美しい娘」と併映 *初デジタルリマスター版での上映!
「大人は判ってくれない」★
「アントワーヌとコレット<二十歳の恋>より」(短編)★「夜霧の恋人たち」と併映
「夜霧の恋人たち」★
「家庭」★
「逃げ去る恋」★
「恋のエチュード」*初デジタルリマスター版での上映!
「私のように美しい娘」*初デジタルリマスター版での上映!
「終電車」
「突然炎のごとく」
「野性の少年」
「アデルの恋の物語」

 


【作品概要】

 

[caption id="attachment_10939" align="alignnone" width="652"] © MK2[/caption]

「大人は判ってくれない」4Kデジタルリマスター版
カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、 トリュフォーの名を一躍国際的に知らしめた名作にして、 「ヌーヴェル・ヴァーグ」映画を代表する一本。

1959年/フランス/モノクロ/99分/原題:Les Quatre Cents Coups
©1959 LES FILMS DU CARROSSE/ SEDIF
家庭にも学校にも居場所がなく、ついには非行に走って感化院送りになる14歳の少年アントワーヌ・ドワネルを主人公とした半自伝的作品。静止画を用いて解釈を宙吊りにする開放型のエンディングは、その後の映画にさまざまな影響を及ぼした。撮影開始直前に亡くなったアンドレ・バザンに捧げられている。

 

[caption id="attachment_10941" align="alignnone" width="652"] © MK2[/caption]

「アントワーヌとコレット〈二十歳の恋〉より(短編) 」 4Kデジタルリマスター版
「アントワーヌ・ドワネルの冒険」第2弾となる短編。 思春期を迎えたドワネルの、初恋から失恋へ至る悲喜こもごもが描かれる。

1962年/フランス/モノクロ/30分/原題:Antoine et Colette
©1962 LES FILMS DU CARROSSE
監督として石原慎太郎やアンジェイ・ワイダも参加した(人選にはトリュフォーの意見が反映されている)全5話オムニバス映画「二十歳の恋」(62)の一挿話として製作された短編。連作「アン トワーヌ・ドワネルもの」の2作目でもある。レコード製造会社に勤務し自活している17歳のアントワーヌが、古典音楽のコンサート会場で女子学生コレットに一目ぼれするも、彼女からは恋愛対象と見なされない悲喜劇。

 

[caption id="attachment_10924" align="alignnone" width="567"] © MK2[/caption]

「夜霧の恋人たち」4Kデジタルリマスター版
「ドワネルの冒険」第3弾にして、同連作初のカラー映画。語り口がより軽やかになり、笑いの要素も強まって映画作家トリュフォーの成熟を感じさせる。

1968年/フランス/カラー/91分/原題:Baisers Volés
©1968 LES FILMS DU CARROSSE/ CONTACT EDITIONS / LES PRODUCTIONS ARTISTES ASSOCIES
「ドワネルもの」3作目。20代前半になったアントワーヌは、兵役を終えてさまざまな職に就くが、どれもクビになって⻑続きしない。他方で彼は恋人クリスチーヌとの愛を育んでいるが、雇用主の魅力的な細君にフラフラとよろめいてしまうなど、危なっかしい。前2作以上に楽天性と喜劇色が強まり、演出に余裕と円熟味が感じられる一篇。

 

[caption id="attachment_10930" align="alignnone" width="567"] © MK2[/caption]

「家庭」4Kデジタルリマスター版
「ドワネルの冒険」第4弾。結婚し、⻑男をもうけたドワネルだが、一家の大黑柱となるにはほど遠い未熟ぶりで……。「快活で可笑しいが、その背景に哀しみと思慕も感じられる映画」(ノア・バームバック)。

1970年/フランス/カラー/97分/原題:Domicile Conjugal
©1970 LES FILMS DU CARROSSE / VALORIA FILMS / FIDA CINEMATOGRAFICA
「ドワネルもの」4作目で、前作の最後で婚約したアントワーヌとクリスチーヌが結婚し、子どもをもうける姿が描かれる。しかしアントワーヌは家庭生活に落ち着くどころか、日本人女性と不倫するなど相変わらずフラフラとして頼りない。作中に散りばめられたゴダール、アラン・レネ、ジャック・タチ、ジョン・フォード、ジャン・ユスターシュ、ジャンヌ・モローらへのオマージュや目配せを探してみるのも一興。

 

[caption id="attachment_10933" align="alignnone" width="567"] © MK2[/caption]

「逃げ去る恋」4K デジタルリマスター版
「ドワネルの冒険」5作目。「本物の大人になれず、子どものままでいる」(トリュフォー)中年に差し掛かったアントワーヌ・ドワネルを軽快に、だが苦悩を滲ませつつ描く完結編。

1979 年/フランス/カラー/95分/原題:L'Amour en Fuite
©1979 LES FILMS DU CARROSSE
「ドワネルもの」5作目にして最終作。相変わらずさまざまな職と女性を転々としているらしいアントワーヌも今や30代半ばで、クリスチーヌとも離婚。そんなある日、彼はかつて失恋したコレットと再会し……。過去四本からの抜粋を回想場面として利用しつつ、かつてコレット役を演じたマリー=フランス・ピジェを再び起用してレオーと共演させるなど、完結編にして総集編と呼ぶにふさわしい作品となった。

 

[caption id="attachment_10931" align="alignnone" width="567"] ©Pierre Zucca[/caption]

「私のように美しい娘」
ベルナデット・ラフォンの陽気な魅力が遺憾なく引き出され、男性社会に対する諷刺的視線を秘めた軽やかな犯罪喜劇。

1979 年/フランス/カラー/98分/原題:Une Belle Fille Comme Moi
©1972 LES FILMS DU CARROSSE/ SIMAR / COLUMBIA FILMS
アメリカ人作家ヘンリー・ファレルの同名犯罪小説を翻案した諷刺喜劇。女性犯罪者をめぐる著作を準備中の若手社会学者が、殺人罪で服役中の娘カミーユへの取材を試みる。自らの半生をめぐるカミーユの談話を聞くうちに、学者は彼女に夢中になり、無実を証明しようと躍起になるが……。男たちを手玉にとって生き延びる元気いっぱいのヒロインを、トリュフォーとの協働は最初期の短編「あこがれ」(57)以来となるラフォンが溌剌と演じた痛快篇。

 

[caption id="attachment_10935" align="alignnone" width="567"] ©Pierre Zucca[/caption]

「恋のエチュード」
「突然炎のごとく」の原作者ロシェの小説を翻案した、もう一つの親密にして激しい三角関係の物語。トリュフォー自身、本作を「傑作」と考えていたといわれる。

1971年/フランス/カラー/130分/原題:Les Deux Anglaises et Le Continent
© 1971 LES FILMS DU CARROSSE / CINETEL
20世紀初頭。パリ在住のフランス人⻘年クロードは、母の旧友である英国婦人の娘アンに誘われ、ひと夏をウェールズで過ごすことに。英国でクロードは、アンの内気な妹ミュリエルと惹かれ合う
が……。原作となったアンリ=ピエール・ロシェの小説は、カトリーヌ・ドヌーヴとの別れが原因で鬱状態になったトリュフォーが、診療所に持ち込んだ唯一の書物だったとされる。

 

[caption id="attachment_10945" align="alignnone" width="680"] ©LES FILMS DU CARROSSE - SEDIF[/caption]

「突然炎のごとく 」
「『突然炎のごとく』は生と死への賛歌であり、カップル以外にはいかなる愛の組み合わせも不可能であることを歓びと哀しみを通じて表明した作品である」(トリュフォー)。

1962 年/フランス/カラー/106分/原題:Jules et Jim
©1962 LES FILMS DU CARROSSE/ SEDI
トリュフォーが敬愛してやまないアンリ=ピエール・ロシェの半自伝的小説を翻案した、どこか宿命論的な三角関係の物語。第一次大戦前後の仏・墺・独を舞台に、ボヘミアン的生活と芸術愛好を共有する親友同士のジュールとジムが、気まぐれで奔放な女カトリーヌと出会ったことで始まる、3人の⻑きにわたる奇妙な愛情生活が描かれる。

 

[caption id="attachment_10925" align="alignnone" width="567"] ©DR MK2[/caption]

「あこがれ(短編)」
ブリュッセル映画祭で最優秀監督賞を受賞した、トリュフォーにとって「真の初監督作」。ベルナデット・ラフォンの映画デビュー作でもある。

1957年/フランス/モノクロ/18分/原題:Les Mistons
©1957 LES FILMS DU CARROSS
習作短編「ある訪問」(54)に続く2本目の短編監督作だが、トリュフォー自身は本作を「真の初監督作」と呼んでいる。舞台は南仏の田舎町。小僧っ子たち(「小僧っ子たち」は本作の原題でもある)がひとりの若い娘にのぼせあがり、気を惹くために彼女とその恋人に悪戯を仕掛ける姿を描く。娘を演じるのはこの後ヌーヴェル・ヴァーグ映画を代表する女優の一人となるベルナデット・ラフォン。

 

[caption id="attachment_10932" align="alignnone" width="567"] ©Jean-Pierre Fizet[/caption]

「終電車」
ナチスに抵抗しながら上演活動を続ける劇団の女座⻑の奮闘を、スリルとロマンスを絡めて描いた、トリュフォー映画で最大の世間的成功を収めた一本。

1980年/フランス/カラー/131分/原題:Le Dernier Métro
©1980 LES FILMS DU CARROSSE / TF1 / SEDIF / SFP
1942年、独軍占領下のパリ。モンマルトル地区を拠点とする女優マリオン率いる小劇団が、検閲、反ユダヤ主義、物資不足に抵抗しながら上演を継続し、文化の灯を絶やすまいと奮闘する姿を描きつつ、ヒロインを中心とする三角関係もサスペンスフルに綴っていく。セザール賞10部門(最優秀作品賞と最優秀監督賞を含む)で受賞し、フランスのみならず米国でもヒットした。トリュフォーがフランス映画界を代表する正統派作家として認められたことを印象づけた作品。

 

[caption id="attachment_10934" align="alignnone" width="567"] ©Pierre Zucca[/caption]

「野性の少年」
「精神的父親」アンドレ・バザンと「孤独な非行少年」トリュフォーの関係を重ねたような、医師と野生児の感動物語。

1969年/フランス/モノクロ/85分/原題:L'Enfant sauvage
©1969 LES FILMS DU CARROSSE / LES PRODUCTIONS ARTISTES ASSOCIÉS
フランス人医師ジャン・イタールが19世紀初頭に発表した「アヴェロンの野生児」をめぐる諸論考 基づくモノクロ作品。もともとトリュフォーは家庭や社会に受け入れられない子ども、他者との意思疎通が困難な子どもに深い関心を寄せていた。トリュフォー自らイタールを演じ、見捨てられた子どもに教育を授け、愛情を注ぐ姿を見せる。本作を観たスピルバーグは、「未知との遭遇」に俳優としてトリュフォーを起用した。

 

[caption id="attachment_10926" align="alignnone" width="567"] ©Bernard Prim[/caption]

「アデルの恋の物語」
新進女優イザベル・アジャーニの⻤気迫る演技に世界が注目した、(狂気の)愛をめぐる厳しくもロマンティックな内省。

1975年/フランス/カラー/97分/原題:L'Histoire d'Adèle H.
©1975 LES FILMS DU CARROSSE / LES PRODUCTIONS ARTISTES ASSOCIÉ
文豪ヴィクトル・ユゴーの次女アデルの日記に基づき、19世紀半ばに彼女が経験した出来事を描いた作品。「野性の少年」で歴史的事実に基づく映画作りの楽しさに気づいたトリュフォーは、本作で再びそれを試す機会を得た。アデル役には当時20歳のイザベル・アジャーニを抜擢。その演技で、史上最年少のオスカー主演女優賞候補になるなど高く評価された。また作品自体、批評家に絶賛され、国内外の映画賞を多数受賞している。

 

▶︎ トリュフォー生誕90周年! “ドワネルもの”初の4K版などを特集上映

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