山﨑樹一郎監督作「やまぶき」がカンヌACID部門に日本映画で初出品!

「ひかりのおと」「新しき民」の山﨑樹一郎監督最新作「やまぶき」が、第75回カンヌ国際映画祭のACID部門に正式出品されることが決定。日本では2022年秋より全国順次公開される。

 

祷キララ(早川山吹役)

 

ACID部門30年の歴史で初の日本映画

ACID部門は、監督週間と批評家週間に並ぶカンヌ映画祭の3つの並行部門のひとつ。市場原理に抵抗する芸術的な作品を支援するために映画作家たちが創設した「インディペンデント映画普及協会(ACID)」が作品選定・運営をしている。

1993年の創設以来、毎年、世界の先鋭的な9作品を紹介してきた同部門だが、30年の歴史で日本映画が招待されるのは今回が初めて。選定委員の一人は「やまぶき」について「美しく、儚く、言葉に頼らずに、多くを伝えてくれます。類を見ない方法で隣人たちと生きる方法を探求する作品です。政治的主題を、声高にではなく、非常に繊細に捉えています。私にとって『やまぶき』は恩寵です」と称賛している。上映に合わせ、スタッフ・キャストはカンヌ渡航を予定している。

陽の当たらない「山吹」のように

「やまぶき」は、岡山県真庭市の山間で農業に携わりながら、地方に生きる人々に光を当てて映画製作を続ける山﨑樹一郎監督の長編第3作。再び地元でロケを行い、初めて16ミリフィルムで撮影に挑んだ野心作だ。

物語の舞台は現代。かつて韓国の乗馬競技のホープだったチャンスは、父親の会社の倒産で多額の負債を背負った。真庭市に流れ着き、今はヴェトナム人労働者たちと採石場で働いている。一方、刑事の父と二人暮らしの女子高生・山吹は、交差点でひとりサイレントスタンディングを始める。二人とその周囲の人々の運命は、本人たちの知らぬ間に静かに交錯し始める──。陽の当たりづらい場所にしか咲かぬ野生の花「山吹」をモチーフに、日本社会と家族制度の歪みに潜む悲劇と希望を描き出す群像劇だ。

チャンスを演じるのは、イギリスで演劇を学び、今回が日本映画初出演となる韓国人俳優カン・ユンス。山吹役は、「Dressing Up」「左様なら」「サマーフィルムにのって」など作家性の高い作品への出演が続く祷キララ。その傍に、川瀬陽太、和田光沙、三浦誠己、松浦祐也、青木崇高ら実力派俳優が集結し、田舎町に暮らす人々のほとばしる生を体現している。

フランスのSurvivance(シュルヴィヴァンス)との国際共同製作によって完成した本作。「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」でアヌシー国際アニメーション映画祭2冠に輝いたセバスチャン・ローデンバックがアニメーションパートを、オリヴィエ・ドゥパリが音楽を担当し、フランソワ・トリュフォーやモーリス・ピアラ、フィリップ・ガレルなど巨匠の作品を手がけたヤン・ドゥデが編集に協力している。

地方に生きる人々の慎ましい抵抗を、国際的な視座で描く「やまぶき」に注目だ。

 

カン・ユンス(ユン・チャンス役)

 

コメント

カン・ユンス(チャンス役)

山﨑樹一郎船長のやまぶき号がカンヌに着きました!おめでとうございます、船長!この素晴らしい旅の始まりを一緒にした全てのスタッフ、俳優の皆様にも心から感謝とお祝いの気持ちをお伝えしたいと思います。そして、これからも続いていくこの航海が、世界各国で出会う人々とどんな物語を続けていくのかをまだまだ楽しみにしています。

祷キララ(山吹役)

やったー!!映画「やまぶき」のカンヌ映画祭への選出、心から嬉しく思います。監督、スタッフの皆さま、キャストの皆さま、おめでとうございます。また新たにこの映画が広がってゆくことに胸を躍らせながら、わたしも精進します。

山﨑樹一郎(監督)

山吹が咲き誇る季節に朗報が届きました。キャスト、スタッフの皆さま、お金と物と時間と場所と思いと、、、支援していただいた皆さま、、、関わったすべての人の大きな力の成果です。そして「やまぶき」のような小さな小さな映画を数ある映画の中から見つけていただいたACID部門の選者の皆さまにも感謝しかありません。カンヌ映画祭は映画を知り始めた頃からの憧れです。そのころの自分に言ってあげたい。

 

「やまぶき」

監督・脚本:山﨑樹一郎
出演:カン・ユンス、祷キララ、川瀬陽太、和田光沙、三浦誠己、青木崇高、黒住尚生、桜まゆみ、謝村梨帆、西山真来、千田知美、大倉英莉、松浦祐也、グエン・クアン・フイ、柳原良平、齋藤徳一、中島朋人、中垣直久、ほたる、佐野和宏
プロデューサー:小山内照太郎、赤松章子、渡辺厚人、真砂豪、山﨑樹一郎/制作プロデューサー:松倉大夏
撮影:俵謙太/照明:福田裕佐/録音:寒川聖美/美術:西村立志
助監督:鹿川裕史/衣装:田口慧/ヘアメイク:菅原美和子/俗音:近藤崇生
音楽:オリヴィエ・ドゥパリ/アニメーション:セバスチャン・ローデンバック/編集協力:ヤン・ドゥデ、秋元みのり
製作:真庭フィルムユニオン、Survivance/配給:boid/VOICE OF GHOST
2022年/日本・フランス/16mm→DCP/カラー/5.1ch/1:1.5/97分

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