“女性あるある” とともに綴るひと夏の優しい出会い。「セイント・フランシス」
- セイント・フランシス , アレックス・トンプソン , ケリー・オサリヴァン , ラモーナ・エディス・ウィリアムズ , チャーリン・アルヴァレス , マックス・リプシッツ , リリー・モジェク
- 2022年06月01日
生理、避妊、中絶などのタブー視されることの多かった女性の負担、セクシャルマイノリティが直面する差別といったリアルをユーモアに包んで軽やかに描いた「セイント・フランシス」が、8月19日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネクイントほかで全国公開。予告映像が到着した。
主演も務めるケリー・オサリヴァンの脚本デビュー作であり、グレタ・ガーウィグに続く才能と称えられた「セイント・フランシス」。SXSWフィルムフェスティバル2019で観客賞と審査員特別賞を受賞した。
34歳で独身、大学は1年で中退、レストランで給仕として働く、身も心も未だ不安定なブリジット。“質問 30代半ばで何をすべきか?”と切実すぎる悩みをPCに打ち込むシーンから予告編は始まる。やがてブリジットは夏のナニー(子守り)という短期仕事を得るが、喜びも束の間、子どもとの慣れない日々に加え、予期せぬ妊娠、両親からのプレッシャーなど〈厄介ごと〉ばかり降りかかる。
そんなブリジットだが、ナニー先の6歳の少女フランシスや、その両親であるレズビアンカップルと過ごす中で、人生に光が差してくる──「夏が終わる頃、私はもっと強くなる」。
グレタ・ガーウィグの「レディ・バード」(17)での女性の描き方に触発され、俳優として多くの脚本を読んできた経験を生かして自伝的要素を織り込みつつ本作の執筆を始めたというケリー・オサリヴァン。「女性に生理がなかったら地球には誰も存在しないのに、若い頃から生理のことは隠すように教育されている」ような世の中に疑問を抱き、女性の心身の本音を見せたかったという。
きっかけは「20代の頃にベビーシッターをしていて、いつかこれについて書きたいと思っていたの。だってこんなに奇妙でエモーショナルな仕事はないから」だと明かす。「お世話をする子どもを本当に愛おしく思うようになるし、ある意味その家族の一員になるのだけど、一方で部外者のままでもある。家にいれば時々、その家族のとてももろい部分を目撃することもある。だけど仕事が終われば自分の家に帰るというね」「その後、30代のときに私は中絶をして、この2つの経験、つまり中絶とベビーシッターが重なったらどうなるのかなと考えたの。だから映画のほとんどはフィクションだけど、リアルな場所から始まっている」。
ちょっぴり生意気な大人っぽさと子どもらしさが同居する少女フランシスを演じるのは、これが俳優デビューとなるラモーナ・エディス・ウィリアムズ。実際のラモーナはアイススケートとバレエが大好きな女の子で、将来の夢はアイススケートのアメリカ代表としてオリンピックに参加することだという。劇中にはその滑りも収められている。
そのフランシスを赤ちゃん扱いせず、一個人として接するレズビアンカップルの両親にチャーリン・アルヴァレスとリリー・モジェク。ブリジットのボーイフレンドでミレニアル世代の考えを代弁するジェイス役は、やはりこれが俳優デビューとなるマックス・リプシッツ。そして繊細で時に重くなりがちなテーマをテンポよく料理し、それぞれの怒りや悲しみ、不安や喜びといった感情を巧みに引き出したのは長編初監督となるアレックス・トンプソン。今作は私生活のパートナーであるケリー・オサリヴァンたっての願いで引き受けたそうだが、相性の良さは作品を観れば一目瞭然だ。
不安だらけの人生に向き合う人々への優しいエール。そんなひと夏の物語に期待したい。
「セイント・フランシス」
監督:アレックス・トンプソン 脚本:ケリー・オサリヴァン
出演:ケリー・オサリヴァン、ラモーナ・エディス・ウィリアムズ、チャーリン・アルヴァレス、マックス・リプシッツ、リリー・モジェク
2019年/アメリカ映画/英語/101分/ビスタサイズ/5.1chデジタル/カラー
字幕翻訳:山田龍
配給:ハーク 配給協力:FLICKK
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