日本映画界が誇る名優たちとスタッフのプロの仕事の結晶ともいえる、見応えたっぷりのサスペンス・ミステリー

自然豊かな美しい島に、たった一人の人間の悪意がノイズとなって広がっていく、新感覚のサスペンス・ミステリー「ノイズ」。藤原竜也と松山ケンイチが、2006年の「デスノート」シリーズ以来、約15年ぶりに本格共演したことでも話題となった本作のブルーレイとDVDが、6月22日にリリースされる。

 

“ノイズ”というタイトルに込められた様々な意味

舞台となるのは、過疎が進む愛知県の絶海の孤島・猪狩島。泉圭太(藤原竜也)の生産した黒イチジクが人気となり、国からの交付金5億円が内定した同島は、久々に明るい話題で盛り上がっていた。そんな矢先、農園に現れた見知らぬ不気味な男に家族を狙われた圭太は、揉み合ううちに誤って男を殺してしまう。その場に居た幼馴染の猟師・田辺純(松山ケンイチ)と新米警官・守屋真一郎(神木隆之介)は、島の未来のために隠蔽を決意。しかし、圭太が殺した男は、出所したばかりの凶悪犯・小御坂(渡辺大和)で、その保護司の死体が島内で発見されたことから、畠山努(永瀬正敏)、青木千尋(伊藤歩)ら愛知県警本部の刑事が大挙して島を訪れ、24時間体制で小御坂の捜索が開始される。圭太は、妻の加奈(黒木華)と娘との幸せな生活や、活気を取り戻しつつあった島の未来を守ろうと、純と真一郎と共に死体を隠す方法を探るが、島中には刑事の姿が溢れている。畠山と青木が圭太たちに疑惑の目を向ける中、小御坂が起こした悪意のノイズは島中に広がり、さらなる事件も引き寄せてしまう…。

序盤で主人公が意図せず殺人事件を起こしてしまうため、本作は犯人探しではなく、“いかに事件を隠すのか”が、極限状態の中の犯人側の視点から描かれる。さらには警察の捜査が進む中、様々な人々の思惑が絡み合い、予測不能な思わぬ事態に発展。不快な雑音や異音を指すタイトルロールの“ノイズ(noise)”とは、出所したばかりの凶悪犯・小御坂の悪意が起こした不協和音だけでなく、そこから派生して伝播していくあらゆるものを指し、島民たちにとっては島の生活を乱す警察たちも“ノイズ”となる。何が正しく、何が悪なのかも曖昧となっていく人間ドラマがサスペンスフルに描かれ、ラストにはさらに驚愕の真実も判明。“ノイズ”というタイトルに込められたさらなる意図も明らかとなっていく。

 

芝居の上手い俳優ばかりが揃い、迫真の演技で激突

本作は、『グランドジャンプ』(集英社刊)で連載された筒井哲也の同名漫画(コミック全3巻)の映画化となるが、舞台設定を島に変更することで緊迫感を増すと共に、ラストもオリジナルとなっているため、原作を読んでいる人でも驚きをもって楽しむことができる。

また、物語自体の面白さが最大の見所なのはもちろんだが、日本映画界が誇るプロフェッショナルばかりが結集した作品であることも、本作の大きな魅力となっている。出演俳優は、とにかく芝居の上手い俳優ばかり。親友同士を演じたW主演の藤原竜也と松山ケンイチ、二人と幼馴染の新米警官役の神木隆之介、藤原演じる圭太の妻役の黒木華、刑事役の永瀬正敏と伊藤歩、偏屈な老人役の柄本明、島の町長役の余貴美子らを始め、渡辺大知、酒向芳、迫田孝也、鶴田真由、波岡一喜、菜葉菜、寺島進らが出演。自由劇場の先輩後輩である柄本と余がまさに激突するほか、名優たちによる痺れるような迫真の演技のぶつかり合いを全編で見ることができる。

そんな高い演技力を持つ俳優たちの力を最大限に引き出してみせているのが、「ヴァイブレータ」(03)「余命1ヶ月の花嫁」(09)「ストロボ・エッジ」(15)など幅広い作品を手掛けてきたベテランの廣木隆一監督。その確かな演出力で、圭太が誤って殺人を犯してしまうシーンなど、重要な場面の多くを1カットの長回しで撮影し、ヒリつくような緊張感を生み出している。特にクライマックスの5分以上に及ぶ長回しのシーンは、台本では7頁にもわたることや内容の複雑さから、俳優陣は長丁場の撮影を覚悟していたそうだが、リハーサルで廣木監督が1カットで撮ることを決定したことから、俳優・スタッフ共に驚きつつも現場の士気が上がり、いい緊張感の中で集中し、短時間で撮影が済んだという。

プロフェッショナルな俳優とスタッフが結集した本作は、観客が我に返ってしまうような不自然な演出や芝居、作為的な描写などの“ノイズ”がなく、2時間8分の全編をノンストップで物語に没入して見ることができる。まさに日本映画界が誇るプロの仕事の結晶ともいうべき、見応えたっぷりの映画となっている。

 

クライマックスの1カット長回し撮影の裏側に迫る貴重なメイキング

6月22日発売のブルーレイ&DVDの豪華版には、約2時間にも及ぶ映像特典が収録されているほか、カラーブックレットも封入。映像特典には、メイキング映像、完成披露や初日の舞台挨拶などのイベント映像集、PR映像集が収められている。

イベント映像集では、「デスノート」以来、約15年ぶりに本格共演(2009年の藤原主演「カイジ 人生逆転ゲーム」では松山が友情出演)した同じ事務所の先輩後輩でもある藤原と松山の仲の良さや刺激し合える関係性であることが垣間見えるほか、二人がネタバレしないように苦心しながら作品をアピールする微笑ましい姿や、ファンから寄せられた様々な質問に楽しく答える様子を見ることができる。また、撮影現場のエピソードを、永瀬正敏が現場で撮影した貴重なオフショットを見ながらキャスト陣が語りあう模様なども収録している。

そして、最も見所なのが、随所にキャスト陣の現場コメントも挟みながら綴られるメイキング。藤原、松山、神木、永瀬らが、初めて組んだ廣木監督の演出ぶりに全幅の信頼を寄せている様子がよくわかる。廣木監督について、藤原は「ここまで才能があって(今まで)出会ってなかったのがショックだった。もっと早く出会いたかったけど、いま出会えて幸せだった」、松山は「役者に好かれる監督と言われる理由がよくわかった」と、それぞれが語っている。また、監督が撮影当日の現場リハーサルで長回しの撮影を提案し、現場に緊張感が走ると共に士気が上がる様子なども収められている。その本番に向けて俳優やスタッフが準備する姿やその撮影が無事に終了した後に、役者たちが「もうお終い? そんなことあるんだ!」「監督すごすぎるわ」と感嘆の声をもらす姿などは、まさに撮影現場を覗き見ているかのような臨場感があり、貴重な映像特典となっている。

 

文=天本伸一郎  制作=キネマ旬報社

 

「ノイズ」

●6月22日(水)Blu-ray&DVD(レンタル同時)
Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら

●ノイズ 通常版 DVD 4,180円(税込)  

●ノイズ 豪華版 Blu-ray&DVD 8,250円(税込)  
★<特典映像>メイキング映像、イベント映像集、PR映像集
★<封入特典>カラーブックレット

 

●2022年/日本/本編128 分
●原作:筒井哲也「ノイズ【noise】」(集英社 ヤングジャンプ コミックス GJ刊)
●監督:廣木隆一
●脚本:片岡翔
●企画・プロデューサー:北島直明
●出演:藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介、黒木華、伊藤歩、渡辺大知、酒向芳、迫田孝也、鶴田真由、波岡一喜、菜葉菜、寺島進、余貴美子、柄本明、永瀬正敏 ほか
●発売・販売元:VAP
©筒井哲也/集英社 ©2022映画「ノイズ」製作委員会