ウクライナの伝統曲に平和の祈りを込めて。「キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩」
- キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩 , オレシア・モルグレッツ=イサイェンコ
- 2023年04月07日
ウクライナ民謡から生まれた楽曲『キャロル・オブ・ザ・ベル』を支えに、戦時をひたむきに生きる家族を描いた「キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩(うた)」が、7月7日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほかで全国公開。ポスタービジュアルが到着した。
1939年1月、ポーランドのスタニスワヴフ(現ウクライナのイバノフランコフスク)。ユダヤ人一家が住む家に、ウクライナ人とポーランド人の家族が引っ越してくる。ウクライナ人の娘ヤロスラワは歌が得意で、歌うと幸せが訪れると信じて『キャロル・オブ・ザ・ベル』をたびたび披露してきた。
やがて第二次世界大戦が始まり、ポーランド人とユダヤ人の親たちが連行される。ウクライナ人の母であり歌の先生でもあるソフィアは、残された娘たちを人種で分け隔てることなく、等しく守りながら生きていく。だが戦況は悪化し、夫がドイツ軍に処刑されてしまった。そんな中で出会ったドイツ人の男の子すら、「この子には罪はない」と面倒を見始めるソフィアだったが……。
監督はこれまでドキュメンタリーを主戦場にしてきたオレシア・モルグレッツ=イサイェンコ。彼女は次のように述べている。
「この映画は、ロシアによるウクライナの本格的な侵攻の前に制作されましたが、その時点でさえ私たちが住む国は戦争中の状況でした。老いも若きも、ウクライナに生きる人々の中に戦争や悲劇的な出来事を経験せずに生き延びている人は一人もいませんので、この映画に取り組むことは私にとって非常に重要でした」
「今、この映画はさらに現代との関連性が高まっています。映画で描かれたように、実際の戦争において、女性や子供は常に戦争の人質です。妊娠中だった私の姉と姪は、占領地の地下室で28日間過ごすことを余儀なくされました。なので、私は私たちの映画が記憶から消し去られてはいけない過去を反映したものであり、そして未来はウクライナ人と世界にとってより良きものになるはずだと考えています」
「この映画はあらゆる国家における〈文化と伝統〉が人間性においてもっとも偉大な宝物であることを提示します。登場人物たちは、作中ほとんどの時間を外界から隔絶されていますが〈音楽〉が彼女らをその悲しみから守っているのです」
プロデューサーのアーテム・コリウバイエフと、駐日ウクライナ特命全権大使のセルギー・コルスンスキーも以下のコメントを寄せている。
「この映画は戦争こそ人類が発明した最悪のものであると人々に訴えかける重層的な物語です」「物語は女性たちと子供たちに焦点を当て、そして脚本のクセニア・ザスタフスカそしてオレシア・モルグレッツ=イサイェンコという女性映画人によって制作されました。彼らは20世紀にこの国が直面した最も暴力的で、残酷な人災であった戦火の真っ只中を生きたポーランド人、ユダヤ人、そしてウクライナ人の女性の声を代弁しています。古来より女性は家族的な伝統と国家の文化的価値観を子供たちに託す役目を担わされてきました。より良い未来を築くために、新しい世代は過去を記憶しなければなりません」「この物語において過去と現在を結び付けているのは、今や世界で最もポピュラーなクリスマスソングの一つとなった“キャロル・オブ・ザ・ベル”の基になったウクライナの新年の歌〈シェドリック〉です」(アーテム・コリウバイエフ)
「ウクライナは古くから侵略され続け、特にロシア革命以降ソ連とドイツから脅かされ続けてきました。その後の第2次世界大戦下では最も激しい戦闘地域のひとつでした。置かれた立場も非常に厳しく、やはりソ連やナチスに侵略され、大戦が終わってもソ連に侵略されたのです」「この歌の基になったのは、ウクライナ人がここに存在しているよと、希望の声を届けてくれるウクライナに伝わる民謡です。この映画は激動する時代の流れの中で懸命に生きる家族を描いています。ウクライナ人としての尊厳を守り続けた両親の愛に育まれた子どもたちの無垢で美しい歌声は、我々の心の奥底に染み渡ります。未来を生きる子どもたちの平穏な日々を奪う権利は誰にもないのです」(セルギー・コルスンスキー)
〈キャロル・オブ・ザ・ベル〉とは?
クリスマスキャロルとして有名な『キャロル・オブ・ザ・ベル』は、ウクライナ民謡『シェドリック』を、1916年に“ウクライナのバッハ”の異名を持つ作曲家マイコラ・レオントーヴィッチュが編曲し、英語の詞をつけたもの。映画「ホーム・アローン」(90)内で歌われ、世界中に知られるようになった。この歌は「ウクライナ語、ウクライナ文化が存在している」という明確な証として今も歌い継がれる。
「キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩(うた)」
出演:ヤナ・コロリョーヴァ、アンドリー・モストレーンコ、ヨアンナ・オポズダ、ポリナ・グロモヴァ、フルィスティーナ・オレヒヴナ・ウシーツカ
監督:オレシア・モルグレッツ=イサイェンコ
脚本:クセニア・ザスタフスカ 撮影:エフゲニー・キレイ 音楽:ホセイン・ミルザゴリ
プロデューサー:アーテム・コリウバイエフ、タラス・ボサック、マクシム・レスチャンカ
2021/ウクライナ・ポーランド/ウクライナ語/シネマスコープ/122分/原題:Carol of the Bells
配給: 彩プロ 後援:ウクライナ大使館 映倫G
©MINISTRY OF CULTURE AND INFORMATION POLICY OF UKRAINE, 2020 – STEWOPOL SP.Z.O.O., 2020