至芸を受け継ぎ、晴れ舞台を迎えるまで。「絶唱浪曲ストーリー」コメント到着
浪曲師・港家小柳の魅力にとりつかれた川上アチカ監督が8年の歳月をかけて完成させたドキュメンタリー「絶唱浪曲ストーリー」が、7月1日(土)よりユーロスペースほかで全国順次公開。メインビジュアルとコメントが到着した。
映画は、港家小柳に惚れ込んで弟子入りした港家小そめが、晴れて名披露目興行を迎えるまでの学びの日々を追っていく。そしてもう一つの“主役”は、関東唯一の浪曲の常打ち小屋である浅草木馬亭。その舞台裏ではさまざまな人生が交錯し、小柳や曲師・玉川祐子、沢村豊子といったレジェンドの芸が若手へ継承されていく。
もちろん、迫力満点の口演場面も見どころ。玉川奈々福、玉川太福ら当代きってのスターも登場し、浪曲の魅力を存分に伝える。
川上アチカ監督メッセージ
映画が完成したとき、この映画そのものが浪曲で語られる人情物語の一席のようだと気づいた。昭和初期の最盛期に比べれば、いま浪曲は下火だという。けれど、寄席の中ばかりでなく、街や生活に浪曲はあって、人知れず絶唱し、赤々と燃えている。容赦なく流れていく時間の中で、いつ途切れるともわからないその声に耳を傾けたら、愛の投げ合いの物語が聞こえた。人間を少し好きになれた。(猫はもっと好きになった。)
〈著名人コメント〉(敬称略・五十音順)
なんて美しくて誠実な映画だろうか。過剰な演出は一切なく、カメラは語るものをひたすら見つめ、耳を澄ませ続ける。そこで映し出されるのは港家小柳や玉川祐子らの名人芸だけではない。彼らを支える弟子や関係者の思い。何気ない日常と、その終わり。芸能が暮らしの延長にあり、人生と共にあることを実感させられる。なかでも港家小そめの名披露目興行の場面は、芸能をテーマとする近年のドキュメンタリー作品でも屈指の名シーンではないだろうか。大切な人に無性に会いたくなり、酒を酌み交わしたくなる、そんな愛すべき映画である。途方に暮れるような時間と労力をかけてこんな傑作を作り上げた川上監督に乾杯!
──大石始(文筆家)
何度も何度もこすれてできた、一節のたこ。街に、生活に、芸に、それがある。
たこに人は集う。行き交う足跡が、またたこになる。一代で終わらない、憧れの痕。
この空は明るくも、暗くもない。ただただ、うまくなりたい。
──折坂悠太(シンガーソングライター)
浪曲師たちのパワフルな愛情!
いっしょくたになった人と芸と生活が、いまを生きる浪曲の魅力を伝えてくれる。
──九龍ジョー(ライター、編集者)
ともに過ごした時間より、とても近くに居るという距離をカメラは掬い取っていた。
師匠と小そめさんが並んで歩く後ろ姿、背中に添える手が、稽古だけではない継承の営みを、その尊さを描いていた。
受け継いだ人の中に生き続ける記憶もまた、同じ近さで、その人を支えていくのだと教えてくれる。
青空に揺れる桜は、別れのときを報せながらもあたたかかった。
彼方から見守る人たちを、見上げる視線から想像した。
──小森はるか(映像作家)
人間の情念をストレートに語ってみせる浪曲。さらにその浪曲を生み出す“浪曲師・曲師のパトスを描く映画”である。
港家小柳が途中で舞台を降りる場面から、小そめの名披露目までの展開は、まさに映画自身が浪曲をうなっているようである。
──釈徹宗(相愛大学学長・宗教学者・僧侶)
師と仰ぐ人に出会い、学び、叱られ、可愛がられ、時として誰かの役に立ち、新たな門出に立ったときに祝福される。
これはなんと幸せなことだろう。
人の営みの中で継承されてきた芸をまるごと受け止める若き浪曲師の姿に、何度も胸が熱くなった。
──岨手由貴子(映画監督)
ほとばしる人情、熱いLOVE。スクリーンのなかの人々が、時代の荒波をくぐり抜けながら浪曲がしぶとく生き続ける理由を描き尽くす。
耳から耳へ、声から声へ、魂から魂へ。日本の芸能の宝、浪曲の核心に迫るドキュメンタリーだ。
──平松洋子(作家、エッセイスト)
「絶唱浪曲ストーリー」
出演:港家小そめ、港家小柳、玉川祐子、沢村豊子、港家小ゆき、猫のあんちゃん、玉川奈々福、玉川太福
監督・撮影・編集:川上アチカ
プロデューサー:赤松立太、川上アチカ、土田守洋
アソシエイトプロデューサー:秦岳志、藤岡朝子、矢田部吉彦
編集:秦岳志 整音:川上拓也 カラリスト:西田賢幸 本編タイトル:大原大次郎 写真撮影:五十嵐一晴 協力:木馬亭、(一社)日本浪曲協会 配給:東風
文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業
2023年/日本/111min/DCP/ドキュメンタリー/英題:With Each Passing Breath
©Passo Passo + Atiqa Kawakami
公式HP:https://www.rokyoku-movie.jp