スロヴェニアの新鋭監督が、美しい森に紡ぐ寓話「栗の森のものがたり」
- イヴァナ・ロスチ , グレゴル・ボジッチ , ジュジ・メルリ , トミ・ヤネジッチ , ヘクラ・マグヌスドッティル , マッシモ・デ・フランコヴィッチ , 栗の森のものがたり
- 2023年06月28日
イタリアとユーゴスラビアの国境にある森を舞台に、ケチな棺桶職人と夢見る栗売りという孤独な2人の人生を幻想的に描いた「栗の森のものがたり」が、10月7日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。ティザーポスターと特報映像5本が到着した。
時は1950年代。美しい栗の森に囲まれ、かつて安息の地と呼ばれた村。第二次世界大戦後、長引く政情不安から多くの者が他所へ旅立った。老大工のマリオは、家を飛び出した一人息子の連絡を待ち続け、手紙に思いを綴っては投函せず引き出しにしまっていく。栗売りのマルタは、出征して戻らない夫の手紙と写真を手掛かりに、現在住んでいるであろうオーストラリアへ旅立つつもりでいる。そんなある日、マルタとマリオは出会い、互いの身の上を語りながら境遇を思いやる。そして、マリオはマルタにある提案を持ち掛けるのだが……。
チェーホフの短編にインスパイアされ、初長編となる本作を撮り上げたのは、スロヴェニア出身の新鋭グレゴル・ボジッチ監督。フェルメールやレンブラントといったオランダの印象派画家にも影響を受け、35mmとスーパー16mmフィルムで絵画のように美しく風景を切り取っていく。
賭け事が大好きで、病弱な妻にも辛辣な言葉を浴びせるマリオ役には、イタリアの名優マッシモ・デ・フランコヴィッチ。金を貯めて《栗の森》を離れようとするマルタ役には、クロアチアで活躍するイヴァナ・ロシュチッチ。神々しくさえあるマリオの妻ドーラ役には、イタリアの名優ジウジ・メルリ。
音楽を手掛けたのはアイスランド出身のヘクラ・マグヌスドッティルで、幽玄なテルミンの音色が人々の喜びと悲しみに寄り添う。一方で若い女性2人がシルヴィ・ヴァルタンの『アイドルを探せ』を歌い踊るシーンも印象深い。
映画はトロント国際映画祭でプレミア上映され、スロヴェニア国際映画祭では最優秀作品賞、監督賞、男優賞、撮影賞、観客賞など11部門を受賞。なら国際映画祭ではコンペ作品中で「最も美しい」と評され、審査員特別賞に輝いた。
生と死も、現実と妄想も、境界は曖昧。スロヴェニアから届いたメランコリックな大人の寓話に心酔するはず。
〈レビュー〉
フェルメールの絵画の中に閉じ込められたかのような、凜とした静寂が心揺さぶる。
──Cineuropa.org
もの悲しく、不思議な短編小説のよう。
──Variety
心沁みる生と死のあわいの幻想譚。
──Cineuropa
最初から最後まで美しい。その美しさのなかに充満してくる死の空気。
──Movie steve
絵画のような風景を切り取る美しい映像をスクリーンで観る至福。フィルムの撮影が成し得た素晴らしい作品。
──The wee review
深い森には神秘的な癒しと魔性の不思議が宿っている気がする。
──Ortakoltuk.com
おとぎ話の絵本を捲るような、冷たい粒子漂う愁を帯びた深まる秋の気配がもの哀しい。
──Ekran.si
すべてのカットに美が宿る、詩情豊かな映像美。
──Cinexpressions
「栗の森のものがたり」
監督:グレゴル・ボジッチ 脚本:グレゴル・ボジッチ、マリーナ・グムジ 撮影:フェラン・パラデス 編集:グレゴル・ボジッチ、ベンジャミン・ミルゲ、ジュゼッペ・レオネッティ 音楽:ヘクラ・マグヌスドッティル、ヤン・ヴィソツキー
出演:マッシモ・デ・フランコヴィッチ、イヴァナ・ロスチ、ジュジ・メルリ、トミ・ヤネジッチ
原題:Zgodbe iz kostanjevih gozdov 英題:Stories from the Chestnut Woods
日本語字幕:佐藤まな 字幕協力:なら国際映画祭
提供:クレプスキュール フィルム、シネマ サクセション 配給:クレプスキュール フィルム
2019年/スロヴェニア・イタリア/イタリア語・スロヴェニア語/カラー/82分/ビスタ
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公式HP:http://chestnut.crepuscule-films.com/