濱口竜介(監督)と石橋英子(音楽)の共同企画「悪は存在しない」、ヴェネチア国際映画祭出品
「ドライブ・マイ・カー」で組んだ濱口竜介(監督)と石橋英子(音楽)。2人の「音楽 × 映像」プロジェクトから生まれた長編劇映画「悪は存在しない」が、第80回ヴェネチア国際映画祭(現地時間8月30日~9月9日開催)のコンペティション部門に出品、ワールドプレミア上映されることが決まった。
また、「悪は存在しない」と同じ映像素材からつくられた石橋英子の音楽ライブ用サイレント映画「GIFT(ギフト)」が、10月にベルギーのゲント国際映画祭でお披露目され、以降は石橋のライブ・パフォーマンスとともに世界各地で上映される。
ヴェネチア国際映画祭でのワールドプレミア上映と記者会見には、濱口竜介(監督)、石橋英子(音楽)、出演の大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁らが参加。映画は2024年に日本公開予定だ。
濱口竜介監督
濱口竜介監督コメント
『悪は存在しない』は元々、石橋英子さんからのライブパフォーマンス用映像依頼を受けたことをきっかけに制作が始まりました。石橋さんとデモ的な音楽と映像をやり取りするうちに、「ミュージックビデオのようなものは自分には撮れない、普段やっているように映画として演出しないと石橋さんの音楽に太刀打ちできない」という思いが固まり、物語映画の脚本を書き下ろしました。その物語映画のフッテージからライブ用映像を作ろうと考えたのです。三月に長野・東京での撮影を終えて、非常に強い手応えを感じました。出演者一人ひとりの声やありようが、私が想像していたものを遥かに越えていたからです。結果として『悪は存在しない』は、石橋さんの美しい劇伴音楽とともに一本の独立した映画として完成しました。今はヴェネチア国際映画祭が、この奇妙な成り立ちの映画の魅力を受け止めて、コンペティション部門に選出してくれたことを心から嬉しく思っています。この場を借りて、キャスト・スタッフの素晴らしい仕事にも感謝します。
また共通の映像素材から生まれた『GIFT』は、『ドライブ・マイ・カー』で石橋英子さんに「ディスカバリー・オブ・ザ・イヤー」賞を授与したベルギーのゲント国際映画祭で、石橋英子さんのライブパフォーマンスとともにお披露目されます。私自身も、石橋さんの一ファンとして、この夢のような機会を心から楽しみにしています。
石橋英子
石橋英子コメント
2年前、海外のプロモーターの方から、“映像と一緒にライブをやってみる気はないか?”という漠然とした提案をいただきました。
私はジャンルや演奏をする場所にこだわりをあまり持たずに活動してきたこともあり、そのアイデアが自分を面白い場所に連れて行ってくれるのではないかと、これも漠然とした単純な期待から本気で考えてみることにしました。
多くの素晴らしい実験映像作品、アート映像作品と言われている作品もありますし、おそらく最初にプロモーターが提案したのはこういった作品を作っている作家をイメージしたのではないかと推測しますが、私は一緒にお仕事して楽しかった人にお願いしたいと思い、まだ授賞式ラッシュなどでお忙しかった濱口さんにだめもとでご相談させていただきました。
『ドライブ・マイ・カー』でご一緒させて頂いた経験がとても素晴らしかったからです。
物語を紡ぐ才能の持ち主であると同時に、「東北記録映画三部作」のドキュメンタリー作品等からみられるように音楽的詩的な作り方をされていて、あらゆる制限から自由を渇望しつつも思いやりと洞察力に溢れた濱口さんとなら何か一緒に面白いことができるのではないかと思いました。
素晴らしい作品になることは最初からわかっていてもなお、脚本や映像を共有していただくにつれ、これは凄いことになってきたぞ、、と私が当初考えた事を遥かに超えた作品が出来上がって行くのを目の当たりにし、その事に驚きながら音楽を作りました。今もまだ驚いています。
そして一つの独立した映画作品になり、こうしてヴェネチア国際映画祭に出品されることをとても嬉しく思います。
“悪は存在しない”、ライブ用サイレント映画『GIFT』が今後どんな旅をしていくのか、とても楽しみです。
「悪は存在しない」
製作:株式会社NEOPA/合同会社フィクティヴ
プロデューサー:高田聡
企画・監督・脚本:濱口竜介
企画・音楽:石橋英子
撮影:北川喜雄
録音・整音:松野泉
出演:大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁
© 2023 NEOPA / Fictive