葛飾北斎、喜多川歌麿をはじめとする江戸の浮世絵師たちが、並々ならぬ情熱を注いだ《春画》。数多の一級作品が生まれたが、明治時代になると “猥褻画” として取り締まられ、日本文化から姿を消した。出版物や展覧会を通し、アートとして再評価の機運が高まったのは、つい最近のことだ。10月13日(金)には劇映画「春画先生」が封切られる。

そしてこのたび、春画の世界に迫ったドキュメンタリー「春の画 SHUNGA(はるのえ しゅんが)」を11月よりシネスイッチ銀座ほかで全国公開することが決定。ポスタービジュアルが到着した。

 

 

映し出されるのは、北斎の有名な “蛸と海女” の絵、歌麿の『歌まくら』、鳥居清長の『袖の巻』、鈴木春信のユーモラスな『風流艶色真似ゑもん』、大名家への嫁入り道具と伝えられる華麗な肉筆巻物、ヨーロッパのコレクター秘蔵の春画幽霊図などバラエティに富んだ傑作の数々。さらに、贅を尽くした源氏物語のパロディ『正写相生源氏』(歌川国貞)の絢爛豪華な “極初摺り” も登場。金・銀などを惜しみなく使い、超絶技巧を駆使した立体的な表現は、現代では再現不可能とまで言われている。

春画に描かれた性愛のかたちは驚くほど多彩。そこに歓喜と興奮、情熱と悲哀、嫉妬、駆け引きなど人間味あふれるドラマが浮上し、《笑い絵》と称される春画ならではのユーモアも滲み、まさに生命そのものの魅力となって観る者を引き込む。復刻やデジタル化などのプロジェクト紹介、春画のアニメ化も見どころだ。

監督は数々のドキュメンタリー番組を手掛けてきた平田潤子。約150年間にわたって禁じられ、忘れられた《春画》のドラマチックさに惹かれ、北海道から九州、さらに海外まで取材し、美術コレクターや浮世絵研究家、美術史家、彫師、画家などを取材した。アニメパートでは、森山未來と吉田羊がボイスキャストを務める。

 

〈コメント〉

平田潤子監督
なぜ日本にはこんなにもエロなアートがあるんだろう?この圧倒的なクオリティと成熟はなぜ?そんな好奇心から春画をめぐる旅をはじめました。ご先祖さまたちの性に対する飽くなき探求心に、感心したりあきれたり…でも撮影を通して感じたのは、生そのものの持つ官能性と、美しさでした。
めくるめく春画の世界に描かれた、ちょっとおかしくて愛おしい人間たち。今と変わらぬ彼らの姿を、ぜひのぞき見てください。

小室直子(企画・プロデュース)
本作は2019年の夏ごろから企画をはじめました。本年10月13日公開の劇映画『春画先生』(塩田明彦監督、ハピネット・ファントムスタジオ配給)を制作する中で、あまりに春画世界が奥深くしかも、書籍でしか知ることのできない興味深いエピソードや作品にあふれていることを知りました。テレビでは放送できないけれど、映画館であれば映像で春画世界をもっと多くの皆様に紹介できると制作を決意しました。今まで春画について聞いたことがあるけど、良く知る機会がなかった皆様に楽しんでいただけると思います。

橋本佳子(プロデューサー)
5年前、日米国際共同制作の番組「江戸あばんぎゃるど」を制作しNHKで放送した。浮世絵をテーマにしながらもテレビという性質上、春画には触れることが出来ず、今回ついにその素晴らしさを描くことが叶えられた。期せずして出演者、スタッフに女性が多く集まった本作。その視点からタブーの存在として秘匿されてきた春画の豊穣な世界を紐解き、軽やかに令和の時代に解き放した。

 

「春の画 SHUNGA」

出演:横尾忠則、会田誠、木村了子、石上阿希、早川聞多、浦上満、アンドリュー・ガーストル、ミカエル・フォーニッツ、橋本麻里、朝吹真理子、春画ール、ヴィヴィアン佐藤、樋口一貴、高橋由貴子、山川良一
朗読:森山未來、吉田羊
監督:平田潤子
製作:中西一雄、小林敏之 企画・プロデュース:小室直子 プロデューサー:橋本佳子
音楽:原摩利彦 撮影:山崎裕、髙野大樹 録音:森英司、阿斯汗 編集:鈴尾啓太 構成:檀乃歩也
製作:『春の画 SHUNGA』製作委員会(カルチュア・エンタテインメント、TCエンタテインメント)
企画・製作:カルチュア・エンタテインメント
制作:ドキュメンタリージャパン
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
2023/日本/カラー/ビスタサイズ/5.1ch/121分/デジタル/レーティング:R18+
©2023『春の画 SHUNGA』製作委員会

※一部劇場では4K上映
文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
公式サイト:www.culture-pub.jp/harunoe/

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