「東京自転車節」の⻘柳拓監督新作。障害福祉サービス事業所の人々を見つめた「フジヤマコットントン」

 

甲府盆地のど真ん中にある障害福祉サービス事業所〈みらいファーム〉。そこで働く人々を見つめたドキュメンタリー「フジヤマコットントン」が、2024年初春にポレポレ東中野ほかで全国順次公開される。

監督は、コロナ禍の東京を自転車配達員の視点で描いた「東京自転車節」の⻘柳拓。母の職場であり幼い頃から通っていた〈みらいファーム〉に着目し、相模原障害者施設殺傷事件の加害者による「障害者は生きている価値がない」という言葉へのアンサーとして制作した。

 

 

ラジオ体操をして、仕事をして、お昼休憩を挟み、また仕事をする。花を世話する、絵を描く、布を織る。その手つきから、《その人らしさ》が見えてくる。また、友情や恋心を抱き、喪失から回復し、季節が移ろうように人々は少しずつ変わる──。〈みらいファーム〉を見守る富士山と、柔らかく包み込む綿という二つのモチーフから生まれた、カメラに映るすべてを優しく力強く肯定するヒューマン・ドキュメンタリーだ。

 

 

 

⻘柳拓監督コメント
「次回作は?」という問いに、すぐに頭に浮かんだのが母の職場である「みらいファーム」のことでした。古くから知っている大好きな人たちのことを思いながら、相模原障害者施設殺傷事件のことも考えていました。加害者の植松聖さんの「障害者は生きている価値がない」という言葉を、僕は僕の友人たち、つまり「みらいファーム」の人たちに向けられているように感じていたのです。そもそも「生きている価値がない」人間って本当にいるんでしょうか?僕は「いるかもしれない」と思いました。前作『東京自転車節』で僕が観たのは嘘と欺瞞にまみれた世界でした。そこで僕自身、孤独感や絶望感を味わい、「どうにでもなれ」という破滅衝動に苛まれました。僕は「自分には価値がない」と考えたことが確かにあったのです。人間の価値とは何か。なぜ事件は起きたのか。考えながら撮影に挑んだけれど、でも、それは撮影を引き受けてくれた「みらいファーム」の人たちに失礼な態度でした。僕は人の価値を「ある/なし」の土俵に乗せない。目の前にいる人たちの魅力を、出演してくれた一人ひとりの日常の中にある「良い!」をみつめたい!それが『フジヤマコットントン』であり、僕のアンサーです。

 

 

 

「フジヤマコットントン」

監督・撮影:⻘柳拓 撮影:山野目光政、野村真衣菜 編集:辻井潔 音楽:みどり(森ゆに、⻘木隼人、田辺玄) 整音:渡辺丈彦 構成・プロデューサー:大澤一生 製作:水口屋フィルム、ノンデライコ 宣伝:リガード 配給:ノンデライコ 文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業) 国立行政法人日本芸術文化振興会
2023/カラー/95分/日本/ドキュメンタリー
©nondelaico/mizuguchiya film
公式サイト:http://fujiyama-cottonton.com/

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