瀬戸内海の島でハンセン病からの回復者に密着。熊谷博子監督「かづゑ的」

 

「三池~終わらない炭鉱(やま)の物語」(2005)「作兵衛さんと日本を掘る」(2018)など炭鉱に関わる人々を追ってきた熊谷博子監督が、5年ぶりの新作としてハンセン病の元患者に密着したドキュメンタリー「かづゑ的」が、3月2日(土)よりポレポレ東中野ほかで全国順次公開。メインビジュアルと特報が到着した。

 

 

瀬戸内海にある国立ハンセン病療養所〈長島愛生園〉に10歳で入所し、約80年ずっと島で生きてきた宮﨑かづゑさん。病気の影響で手の指や足を切断、視力もほとんど残っていない。それでも買い物も料理も、周囲の手を借りながら自らこなす。

「本当のらい患者の感情、飾っていない患者生活を残したいんです。らいだけに負けてなんかいませんよ」と力強く語るかづゑさん。他の患者にいじめられ、つらかった子ども時代。家族の愛情とたくさんの愛読書が、絶望の淵から引き上げてくれた。そして夫となる孝行さんと出会い、海沿いの夫婦寮で自然とともに暮らしてきた。

かづゑさんはいつも新しいことに挑戦している。そしてどこか可愛いらしい。76歳でパソコンを覚え、84歳で初の著書『長い道』(みすず書房)を出版。類まれな表現力で日常を瑞々しく綴った同書は、版を重ねている。90代半ばになったかづゑさんは言う。「できるんよ、やろうと思えば」

 

 

熊谷博子監督メッセージ
宮﨑かづゑさんは、私が初めて会ったハンセン病の元患者さん(回復者)でした。
信頼する知人に、会わせたい人がいるからと、半ば強引に長島愛生園に連れていかれました。10歳からハンセン病療養所で生活している、という人に。その日々の暮らしを描いた著書「長い道」を会う前に読み、大変心をうたれました。かづゑさんの部屋で話しながら、この人生を撮って残しておかねばと心に決め、2016年から愛生園に通いはじめました。それから8年間、私たちはカメラとマイクを携えて、かづゑさんの人生に伴走することになりました。この映画はハンセン病を背景にしていますが、決してハンセン病だけの映画ではありません。人間にとって普遍的なことを描いたつもりです。

 

   

 

「かづゑ的」

監督:熊谷博子 ナレーション:斉藤とも子
撮影:中島広城 録音:奥井義哉 助監督:土井かやの 編集:大橋富代 映像技術:柳生俊一 整音:小長谷啓太 音楽:黒田京子 宣伝美術:安倍大智
配給協力:ポレポレ東中野 宣伝:きろくびと 製作・配給:オフィス熊谷
2023年/日本/DCP/119分
©Office Kumagai 2023
公式サイト:beingkazue.com