音楽家でアニメーション作家のピエール・フォルデスが、村上春樹の6つの短編小説『かえるくん、東京を救う』『バースデイ・ガール』『かいつぶり』『ねじまき鳥と火曜日の女たち』『UFOが釧路に降りる』『めくらやなぎと、眠る女』を翻案して制作した長編アニメーション映画「めくらやなぎと眠る女」が、7月26日(金)よりユーロスペースほかで全国公開。ビジュアルと予告編、アメリカ文学研究者で翻訳家の柴田元幸氏のコメントが到着した。

 

 

「言葉にならないほど繊細で、想像を超えるほど奥深い感情を掻き立てる小説」をもとに、「ミステリアスなものが絶え間なく問いを生み出すような雰囲気」をまとわせて制作したというフォルデス監督。アニメーションには、俳優の動きを撮影して取り込むオリジナル技法を採用した。

このたび公開されたビジュアルには、“かえるくん”をはじめとする登場キャラがずらり。かえるくんに寄り添う猫の“ワタナベノボル”にも注目だ。

 

 

「平凡な日常世界において、現実と内面の両方で起きた劇的な出来事によってその世界が揺るがされるちょっとマジカルな物語を、独自の方法で語りたかったのだ。マジックリアリズム的世界観でこの精神生活を見せるには、アニメーションは完全な手法だと感じている。なぜならすべてを一から作り直す必要があり、それが現実とのずれを生みだすからだ。このずらしと転移の必要性が私の監督としてのアプローチには不可欠なのだ」と語るフォルデス監督。独創的な映画世界に注目したい。

 

柴田元幸(米文学者・翻訳家)コメント
どんな物語も映画も多かれ少なかれ、現実と想像、外界と内面、現(うつつ)と夢とのあいだにいつのまにか建てられてしまった門を開けてくれる装置であるわけだが、この映画はその役割をとりわけしなやかに、深く軽やかに果たしてみせる。

 

Story
2011年、東日本大震災から5日後の東京。被害を伝えるテレビのニュースを見続けたキョウコは、手紙を残して夫・小村のもとを去る。呆然とした小村は、図らずも中身の知れない小箱を女性に届けるため、北海道へ向かうことに。
一方である晩、小村の同僚の片桐が帰宅すると、体長2メートルの〈かえるくん〉が待っていた。かえるくんは次の地震から東京を救うため、控えめで臆病な片桐に協力を求めるのだった。
めくらやなぎ、巨大なミミズ、謎の小箱、どこまでも続く暗い廊下──。大地震の余波は遠い記憶や夢に形を変え、小村、キョウコ、片桐に忍び込む。人生に行き詰まった彼らは、本来の自分を取り戻せるのか……。

 

配給:ユーロスペース、インターフィルム、ニューディアー、レプロエンタテインメント

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