イム・シワン、役にかける思い―「ボストン1947」。人生初の体脂肪率6%に!

 

「ボストン1947」
カン・ジェギュ監督、ハ・ジョンウ、イム・シワン インタビュー
2023年9月11日、マスコミ試写会後の記者会見より

1937年に開催されたベルリン五輪のマラソン競技にて、日本は金メダルと銅メダルを獲得している。だが、それは韓国のソン・ギジョン選手とナム・スンニョン選手が日本代表として出場し獲得したものだった。第二次大戦後、韓国の日本統治は終了したが、メダルの記録はそのまま。二人はなんとか祖国の記録を取り戻そうとチームを組み、1947年、若き才能あふれる選手をボストンマラソンに出場させる……。

韓国の祖国解放から朝鮮戦争の間の時代に起きた感動の実話を、「シュリ」(99)「ブラザーフッド」(04)などを手掛けた名匠カン・ジェギュ監督が描いた「ボストン1947」が8月30日より全国で公開している。主演を務めたのは「ランサム 非公式作戦」の公開も控えるハ・ジョンウと、『イカゲーム2』の出演も決まった最旬俳優イム・シワン。ここでは、韓国公開時には大きな話題となった記者会見の一部をご紹介。3人のそれぞれのインタビューは劇場パンフレットに詳しく掲載されています。

 

 

──「ボストン1947」の中でイム・シワンさんとハ・ジョンウさんは、ソ・ユンボク、ソン・ギジョンという実在のマラソン選手を演じています。どのようなことを考えながら撮影に臨みましたか。

カン・ジェギュ 実在の人物を主人公とする場合、観客が映画に入り込めるかどうかは、俳優がどれだけその人物に近づけるかにかかっています。ですから、内面はもちろん、身体的にも似ていなければならないと思いました。そういった意味で、俳優のみなさんが本当に一生懸命努力してくれました。

イム・シワン 実在の人物がいらっしゃるので、その方たちに絶対に迷惑をかけてはいけない作品だと思い、ある種の責任感を持って取り組みました。ソ・ユンボク選手が初めて太極旗をつけて国際大会に出場したときと同じように、私も国を代表するような気持ちで準備し、撮影に入りました。また、実際に走らなければいけないキャラクターだったので、2~3カ月前から専門的なトレーニングを受け、撮影の合間にもコーチから指導を受けました。

ハ・ジョンウ 通常、あるキャラクターを演じることになると、自分の体と心から出発するのですが、今回のソン・ギジョン先生の場合はカン・ジェギュ監督といろいろな話をしながら、どんな人物だったのかをつかんでいきました。撮影するときもカットごとに「この状況ではどんな気持ちだっただろう」と考えていました。また、ベルリンオリンピックの表彰台のシーンでは、これまで感じたことのない厳粛さがありました。ソン・ギジョン先生はベルリンで祖国の国旗である太極旗をつけられなかったことに責任を感じ、今回こそは太極旗をつけて大会に参加しなければならないという思いを持ってボストンに向かいました。私も俳優として、ソン・ギジョン先生のそんな気持ちを思いながら撮影に臨みました。

イム・シワン 準備の過程でいちばん時間をかけたのは食事と運動でした。撮影が終わるまで、食事はずっと鶏の胸肉とサラダでしたし、毎日、トレーニングをしていました。そして、ソ・ユンボク選手の外見に似せようと努力しているうちに体脂肪率が6%になりました。人生で初めてのことで自分でも不思議でした。

 

 

──映画の終盤に登場するボストンマラソンのシーンがとてもドラマティックでした。撮影の際はどんな点を工夫されましたか。

カン・ジェギュ シナリオの段階からいろいろ悩みました。実はもともとハ・ジョンウさん演じる監督のソン・ギジョンがソ・ユンボク選手と並走するシーンはそれほど多くありませんでした。しかし、この映画では走る人だけでなく、それをじっと見つめて励ます人たちの気持ちの表現もすごく大事なことだと思えたので、ハ・ジョンウさんのアイデアを取り入れながら、撮影、編集を行い現在の形になりました。今回の作品では、さまざまなディテールについて俳優たちといろいろ話をし、アイデアを出しながら作っていく過程がとても楽しかったです。

ハ・ジョンウ ソ・ユンボク先生の役を演じるためにシワンさんがどんな準備をしてきたか、ずっと横で見ていたので、大会のシーンを撮るときは応援したいという感情が自然に湧き上がってきました。完成した作品を見たときも、とても立派に表現してくれていると感じました。おそらくソ・ユンボク先生も喜んでくれているのではないかと思います。

 

 

──1947年を背景とした映画を今、作らなければならないと考えた理由は?

カン・ジェギュ 「ブラザーフッド」(04)の後、SF映画を作りたいと思って準備していたことがありました。結局、その映画はうまくいかなかったんですが、その過程で「未来を表現するというのはどういうことだろう?」と考えるようになりました。そして、私たちが生きてきた過去の姿をしっかりと振り返ることも未来を予見することになる、過去を扱うこともある意味ではSFといえるんだなと、知らず知らずのうちに思うようになりました。そして、過去に存在した偉大な足跡についていっそう関心を持つようになり、本作を作りました。

──最後に観客の皆さんへのメッセージをお願いいたします。

カン・ジェギュ 過去の話というと、少し古臭くさくて面白くないような気がしますし、困難の中で今を生きる人たちの中には「あえて今、見る必要があるだろうか」と考える方も多いかもしれません。しかし、先人たちが生きてきた歴史の中にはすばらしいストーリーや人間たちがたくさん存在します。それぞれの人生を生きていく上で、過去を振り返ってみることは力になるし、勇気を与え、役にも立つということを、この映画を通じて感じていただけたらうれしいです。

イム・シワン 私はこの映画に参加したのをきっかけにマラソンの魅力を深く知ることができ、健康的な趣味を持つことができました。みなさんにもぜひ見ていただいて「いい映画だ」と思っていただけたら、本当にありがたいです。

 

文=佐藤結 制作=キネマ旬報社

 

 

 

「ボストン1947」
監督・脚本:カン・ジェギュ
出演:ハ・ジョンウ、イム・シワン、ペ・ソンウ、キム・サンホ、パク・ウンビン
配給:ショウゲート
2024年8月30日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開中
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