「スイート・スイート・ビレッジ」のストーリー
時は春、舞台はプラハの南、どこまでも田園風景が続く小さな村クシュベッツ。村のドクトル、スクルジュニー先生(ルドルフ・フルシンスキー)は、今日も風景にみとれては車を木にぶつける。そんなのどかな村の朝、集団農楊の運転手、でぶのパヴェク(マリアン・ラブダ)にくっついていくのは助手でのっぽのオチク(ヤーノシュ・バーン)だ。パヴェクは、両親をなくした少し知的障害のオチクを父親がわりになって面倒をみてはいるものの、オチクがドジをしでかしては運転手仲間に笑われるのを、困ったものだと思っている。この日も、オチクはトラックに寝そべっていてブルドーザーの落とした砂の下敷になって危うく死にかけたり、トラックのバックを誘導している最中にわき見をしていたため、プラハから来た別荘族の家の門柱を壊してしまった。おこったパヴェクは、集団農場事務所に駆け込み、“もうオチクの面倒をみるのはごめんだ”と宣言してしまう。オチクの家に、いつも世話をやいてくれるおばさんがやって来て、“パヴェクに迷惑ばかりかけていると、乱暴者のトゥレクの助手にされてしまうよ”と忠告する。パヴェクに見離されてはと、オチクは懸命にパヴェクの機嫌をとりなそうとするが、やればやるほどドジばかり。そんなある日、プラハの林鉱公団からオチクを採用したいという手紙が届いた。あのオチクを本気で採用したいと思うはずがない。まして、知的障害のオチクに、都会生活ができるはずもない。集団農場事務所は、ケンケンガクガク--オチクの家で、オトゥクの女房ヤナと不倫をしている獣医研修生カシュパルが、彼の家を狙っているのではないかとか、パヴェクが厄介払いをしたいためじゃないかとか--。しかし、プラハの林鉱公団の男ルムレナがやって来て、事態ははっきりした。どうやら、林鉱公団の理事長がオチクの家を狙っているのだ。収穫祭--村中がおまつりの夜、ドクトルがオチクに、“プラハに行きたいか”と尋ねると“オトゥクの助手になるのはいやだ”とぽつりと言う。そんな頃、ルムレナは村長に、“ウチのボスは顔がきくから、あんたのところの息子さんの進学はまかせてくれ。そのかわりオチクの件は……”と頼んだ。その様子を、カシュパルが目撃する。翌日、今までとうってかわってオチクのプラハ行きを賛成する村長に、カシュパルがかみついた。それでも本人が行きたいと言っているのだから、仕方がないと言う村長。オチクのプラハ出発の前日、ドクトルは、“オチクが村を去るのを止められるのは君しかいない”と、パヴェクをさとす。プラハの朝の雑踏の中、不安げな様子のオチクの前に、パヴェクがトラックで現われた。“家は売ったのか”と尋ねるパヴェクに、大きく首を横に振るオチク。村の朝、今日もよく晴れていい天気だ。新車を買ったドクトルは、今日もガレージに車をつっこんだ。そして、のっぽのオチクとでぶのパヴェクの名コンビが、今日からは息もステップもバッチリあって……。