「ラ・バタイユ」のストーリー

ヨリサカ侯爵はパリに於ける重大なる使命を果たして長崎に帰って来た時に彼を驚かすものが彼を待っていた。万事洋風を則ったなら夫が喜ぶであろうからと云うホックリイ夫人の言葉によって様式にと心懸けている妻のミツ子がそれである。更に妻の新しき魅力に心惹かれて近づくイギリス海軍士官フェアガンを観ては彼の心は悶えた。しかしイギリスの海上に於ける覇者たる事の秘密を彼の口から知ろうとした。日本海大海戦の日は来た。副官たりし彼は敵弾に傷ついた。傍らにフェアガンを見た時、傷ついた彼は言った。「俺に代わって指揮をしてくれ。君は俺にそれをしなければならぬ義務がある。」義務。フェアガンは指揮をした。そして弾に当たってたおれた。海戦は勝った。祖国の勝利だ。しかし貴き犠牲。ヨリサカ侯爵は妻ミツ子の許まで運ばれて息を引き取った。その後、ミツ子は余生を尼として送ったのである。