「パリ空港の人々」のストーリー

図像学者のアルチュロ(ジャン・ロシュフォール)は、モントリオール空港でパスポートや財布の入った鞄と靴を盗まれた。パリのシャルル・ド・ゴール空港で待つ妻スサーナ(マリサ・パレデス)の元へ急ぐべく、残された搭乗券でとりあえず飛行機に乗ったが、パリの入国管理局で足止めを食らう。フランスとカナダの二重国籍で、居住地はイタリア、でも妻はスペイン人という複雑な身上に加え、日曜日で12月30日の深夜とあってコンピュータによる確認もとれず、明朝までトランジット・ゾーン(外国人用処理区域)に留まらざるを得なくなった。そんな彼に黒人少年ゾラ(イスマイラ・メイテ)が話しかけてくる。アフリカの少年で1週間以上も入国が認められず、父親が迎えに来るのを待っているという。ゾラに案内されたトランジット・ルームには、奇妙な人々が生活していた。国外追放となり国籍を剥奪されたラテン・アメリカ系の女性アンジェラ(ラウラ・デル・ソル)、何処へ行っても滞在を拒否される虚言癖の自称元軍人のセルジュ(ティッキー・オルガド)、そしてどこの国の言語か分からない言葉を話す黒人の通称ナック(ソティギ・クヤテ)で、彼らはもう何ヵ月もここで放置されたままだった。翌朝、空港管理局員がアルチュロに問題解決には時間がかかりそうだと告げ、彼は否応なしに奇妙な仲間たちとの共同生活を始める。一方、スサーナは彼と会うこともままならずヒステリーを起こしていた。彼らは滑走路の脇に生息するウサギを捕まえては空港内のレストランで物々交換したり、ロビーの観葉植物の鉢にパセリやハーブを植えて自給自足の生活を送っていた。そんな折り、ゾラの父親が実は技術者ではなく貧しい道路掃除婦で、不法滞在就労で強制送還されたと聞かされ少年はうちひしがれる。アルチュロはパリの町並みを見たいというゾラの願いを叶えてあげるべく、大晦日の夜、全員でこっそり空港から抜け出す。一行はバスに乗り込み、それぞれの望郷の思いを胸に秘め、パリの夜景を眺めた。新しい年を迎え、アルチュロはアンジェラを優しく励ます。空港に戻り、朝になるとアルチュロは大使館から身分を証明する書類が届き、空港を出られると言われる。彼は仲間たちとの別れにとまどいながら、ナックに彼らへこの思いを伝えてくれと言い残す。アルチュロはいまだに空港内で待っている妻の元へは行かず、空港を後にした。後を追ってきたゾラを、彼は帰るように説得するが、思い直して一緒に帰ることにした。一文なしの彼らは、しかししっかりと歩み始めた。