「音のない世界で」のストーリー
フランス・パリのろう学校でフローラン、アブゥ、カレンたち生徒が発声練習をしている。授業には電子機器が導入されており、生徒たちはモニターにビジュアル化された自分の声を見ながら発声法を学び、うがいをして発声感覚を覚えていく。手話に比べて発声の練習には大変な苦労が伴うにも関わらず、生徒たちの表情は明るい。自身もろうあ者であるジャン=クロード・プーラン先生が生徒に体験談を語る。「私はろう学校で、誰にも教わることなく手話を覚えた。耳の聞こえる赤ん坊が言葉を覚えるようにね。ろうあ者は視覚が発達していて、見たものを記憶する能力が優れているんだ」。クリスマス。サンタが生徒たちに贈り物をくばる。手話で生徒にやさしく話しかけるサンタは、プーラン先生だった。年長の生徒たちは、アメリカからやってきた交流団を迎え、エッフェル塔やルーブル美術館といった観光地を案内して回る。国によって手話は違うのだが、彼らはまたたくまに打ち解け、理解しあう。「健聴者が外国に行ったら辞書にかじりついても話せないのに、ろうあ者同士が違う国の人々とわかりあうのは二日もあれば十分だ」と語るプーラン先生。空港での別れ。電話によって連絡が取れない彼らにとって、この別れが意味するものはあまりにも大きい。工場で働く青年ユベールとマリア=エレナ。彼らはろうあ者同士で結婚式をとりおこなった。病気で学校を休んだフレデリックに生徒たちが手紙を書く。ポストに投函した後で、フローランが手紙に触らなかったと泣き出した。なぐさめるクラスメイトたち。彼らは堅い絆で結ばれている。ユベールとマリア=エレナは住居さがしに出かけるが、うまく言葉が伝わらず思いのほか難航する。ろう学校では学年末の成績発表が行われた。先生から励ましの言葉を受けた後、皆は遊園地へ行き羽をのばす。数か月後、マリア=エレナは無事に赤ん坊を出産、彼らの新しい生活はまだ始まったばかりだ。