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「喧嘩安兵衞」のストーリー
越後の国新発田の藩で御前試合を前にして中山安兵衛と俵星玄蕃はその馬鹿らしさを痛感して、脱藩、江戸へ出て来た。安兵衛は八丁堀の通称「喧嘩長屋」に住みついたが、喧嘩が何より好きな長屋の連中に、喧嘩嫌いの安兵衛はあまり人気がなかった。しかし、占者梅柳の一人娘お光だけは彼に想いを寄せていた。ある日、高利貸の武士寺島主水に難題を吹っかけられている水茶屋「芳野」の娘お照を、長屋に住む籠かきの助十と権三が助けてかえって来たことから安兵衛がのり出して主水にかけ合いに行くが、返ってお照の身の代金十三両を都合しなければならないことになってしまった。思い余って叔父の菅野六郎右衛門をたずねて快く十五両の金を借りた安兵衛は、叔父が村上兄弟に仕官にからまる遺恨で果し合いをつけられているとは知らず、旧友玄蕃と久しぶりに酒びたりになっていた。そこへお照とお光までも主水の一味にさらわれたとの報せに駆けつけ三人を救い出し、又しても居酒屋へ戻って呑み明かした。翌日昼頃やっと長屋へ帰った安兵衛は叔父と村上兄弟の果し合いが高田馬場であるときいて駆けつけるがすでに遅く叔父は殺されたあとだった。しかし村上兄弟を斬って叔父の恨みを晴らした。このとき切られたたすきの代りに腰ひもを貸してくれた堀部弥兵衛の娘美弥の婿となって、遂に安兵衛は長屋を去ることになった。喧嘩に強かった安兵衛に長屋の連中は悲しい別れを告げた。なかでもお照とお光は特別に悲しいのであった。