「忠治旅日記 喧嘩太鼓」のストーリー
赤城の山篭りも情勢日ましにわるく、止むなく苦楽を共にした乾分らと袂を分ち、辛じて山を脱出した上州国定村の長岡忠治は、やがて兇状一人旅の信州路にさしかかる。街道筋権堂町の貸元山形屋藤造は近頃売りだしの御用聞き、といえばきこえはいいが、じつは百姓娘の身売りを請負う毒虫稼業の二足わらじ。折しも越後から娘お芳をつれて年貢の算段にきた老百姓喜右衛門を女房おれんともども甘言で釣り、娘と引かえに大枚百両をポンとあたえて去らせる。その帰途を乾分におそわせて金を奪いかえすやり口のあこぎさを、偶然目にした国定忠治、喜右衛門の甥に扮して山形屋に奪った金の返済をせまった。耳をも籍さない相手の態度に、勃然憤った忠治は仮面をぬいでタンカを切る。仰天した山形屋はあわてて忠治のご機嫌をとりながら、そこは曲者、ひそかに乾分をとばして衆をあつめ、ここで一番、忠治捕縛の大手柄をたてようとする。百両と娘をあたえて喜右衛門を無事に立ちかえらせたあと、風のように山形屋をとびだした忠治は、待ち構える乾分の群を縦横に斬りたてつつ、いずこへともなく姿をけした。