「妖異忠臣蔵」のストーリー
赤穂浪士の討入り後十年。江戸の町に死体に四十七士の討入り衣裳をかぶせた殺人事件が相次いで起った。講釈師一心享南山の娘お蝶を犯人から救った奉行所御免の多賀甚三郎は、犯人は赤穂浪士に遺恨を持つものと推測し、元吉良の附人だった千坂兵部に睨みをかけた。一方、現場に落ちていた金簪を手掛りに、錺職弥吉を洗おうとその女房かくを訪れたが、かくは答弁の最中曲者に射れて絶命した。お蝶は旗本勝川主膳と元勘定奉行萩原彦三郎の妹きぬとの婚儀に伝統の五人花嫁の一人に加わる事になった。主膳の先代内膳が以前赤穂方に密通した事があるのを知った甚三郎は、次の被害者は主膳だと断じ、巾着切りお勝に兵部の隠れ家を探らせると共に、婚礼の当日お蝶が曲者の手中に落ちると直ちに兵部の許に乗込むが、兵部は真犯人でなく、同じ頃又しても勝川主膳は殺されその屍には「大石内蔵助」の衣裳がまとわれていた。だが甚三郎は兵部が隣の義士屋敷から出たと称して渡した贋小判を見るに及んで一切を解決した。ある夜、義士屋敷で赤穂浪人が集って義士講が行われたが、席上、一心亭南山は甚三郎の内命通り講釈を語ると見せかけて、彼等の隠謀を一同の前に解き明した。居並ぶ近藤但馬他十数名の赤穂浪人は、義士討入り後その名声を利用して義士講を設け、当時の勘定奉行萩原と結託して小判贋造団を結成し、内情を知った魚屋太吉、その、かく勝川主膳等を次々と殺害したのである。かくて白刃を抜いて南山の前に迫った但馬等の前に飛びこんだ甚三郎は、遂に一味を捕縛した。