「大岡政談・妖棋伝(後篇) 地獄谷の対決」のストーリー

急場を救われた青江と池上は直ぐさま元亀と千住院の後を追った。その頃元亀と千住院は奥上州の山彦村へ歩を踏み入れていたが、道は険しく、暴風雨に悩まされ、食料も尽き、遂に二人は餓えと欲にさいなまれて反目し合った。翌日、青江と池上は谷川に浮ぶ千住院の屍を見つけ、その懐から秘密の地図を発見した。それから数日--、二人は将棋の駒の形をした巨岩を見つけた。その岩のもとには、一箇の印篭と二通の書状を握ったまま元亀が息絶えていた。その印篭こそ関白秀次の実子に与えられたものであり、更にこの印篭持参者は徳川の親藩の一に迎えられ、若し徳川将軍に実子のない場合は将軍職につけるという家康の親筆が加えてあった。二人は一目散に山を降りたが、其処には秘宝を狙う陣馬一令と白蝋鬼が待ち構えていた。その夜死闘があり陣馬らは白蝋鬼に倒され、結局最後迄秘宝を狙う者は白蝋鬼だけとなった。扨、江戸へ帰る途中秘宝が白蝋鬼に奪われてしまったが、名智大岡越前守は見事に白蝋鬼の謎を解いた。与力青江俊之助こそは新将軍吉宗宣下に反対する白蝋鬼そのものであった。兄の悪事を知った梢は重造への思慕を胸に秘めたままみずから命を絶った。かくして新将軍宣下の日も間近い。