「フェイク」のストーリー
78年、ブルックリン。FBI捜査官ジョー・ピストーネ(ジョニー・デップ)は囮捜査官として、マフィア組織に潜入することを命じられた。彼の潜入名はドニー・ブラスコ。マフィアとの接触を狙っていた彼が最初に近づいたのは、末端の気さくな男レフティ・ルギエーロ(アル・パチーノ)だった。当時、マフィアファミリーは、リトル・イタリーを拠点とするソニー・レッドの組と、ブルックリンを拠点とするソニー・ブラック(マイケル・マドセン)の組と、2つの組が対立して存在していた。後者に属していたレフティは、忠実に仕事はこなすものの運にはまるで見放され、ボスへの上納金に四苦八苦し、出世とは縁がない男だった。そんなシケた暮らしの中に現れたのがドニーで、レフティは聡明で行動力に溢れた彼との出会いに、諦めていた昇進の夢を再び抱くようになる。また、誠実な彼にドラッグに溺れる息子の姿を重ね合わせ、単なる弟分を超えた愛情を感じ始めていた。レフティは、ドニーを組の上層部に紹介したり、ことあるごとにマフィアの掟を教えるなど、親身に世話を焼く。そんなレフティを足掛かりに、ドニーが仕掛けた盗聴器やビデオテープは定期的にFBIに渡され、作戦は着実に成果を挙げていた。一方で、マフィアとして暴力に加担するなど、ドニーとジョーの2人の人間の境界線は少しずつ曖昧になっていく。たまに家に帰っても、娘たちは口をきいてくれず、妻のマギー(アン・ヘッチ)とは口論が絶えない。仕事の重責の中、彼の私生活の歯車は次第に狂い始めていた。FBIから、行き詰まったマイアミの囮捜査の協力を要請されたドニーは、儲け話を持ちかけてソニー・ブラック一行をマイアミへおびき出すことに成功。ソニーは廃れたバーを階層オープンして大金を掴もうとするが、開店当日に警察の手入れが入ってしまう。これらは全てFBIによって仕掛けられた罠だった。レフティは「警察が来るのが早すぎる。この中に裏切り者がいるはずだ」と指摘するが、誰もドニーを疑う者はいなかった。やがて、マイアミのボスを招待した客船が、かつてFBIが囮捜査に使ったものだとレフティに知られてしまう。彼はドニーに詰め寄るが、ドニーはうまく切り抜け、レフティも自分を慕う彼の言葉を素直に信じるしかなかった。2組のマフィア間の抗争は次第に激化し、ドニーの身の危険を感じたFBIは、マフィアからの撤退を勧告した。しかし、今、捜査を抜けることはレフティに死をもたらすことを意味する。自分を信じ、愛してくれるレフティを見殺しにすることは、ドニーにはできなかった。抗争に巻き込まれた彼が、今まさに引き金を引こうとした瞬間、FBIが突入。6年に及ぶドニーとレフティの生活にピリオドが打たれた。死を覚悟したレフティは、ドニーの妻に「彼に伝えてくれ。お前だから許せる」と告げ、夜の闇に消えた。その頃、ジョー・ピストーネはドニー・ブラスコとしての潜入捜査の功績をFBIから表彰されていたが、ついに彼とレフティの人生は交わることはなかった。