「コンラック先生」のストーリー

1969年の春。パット・コンロイ(ジョン・ヴォイト)は、サウスカロライナ州ビューフォートからモーターボートに乗ってヤマクロウ島に渡った。この島の小学校の教師として赴任するためだ。ヤマクロウ島は美しい自然に恵まれているが未開の地で、住民は雑貨屋の主人を除いて全部黒人だった。コンロイは赴任早々、校長のスコット夫人(マッジ・シンクレア)は同じ黒人でありながら黒人を見くだし、生徒を人間扱いしないことを驚くと同時に、生徒が無気力で無知であることにも驚いた。生徒たちはコンロイという彼の名を発音できず“コンラック”と呼んだ。彼らは地球は平たいと思い込み、映画を見たことも、バスに乗ったこともなく、スコット夫人の鞭の教育が生徒を教室から遠ざけていた。生徒の1人メリー(ティナ・アンドリュース)は夫人を憎むあまり、殆ど学校には近よらなかった。こんな状態の中で、コンロイの進歩的な授業が始まった。まず生徒たちとの隔たりを除くため、クラシックを主とする音楽を聴かせ、つとめて生徒たちを野外に連れ出した。コンロイの成果は容易にあがりそうになかったが、学校を嫌っていたメリーが教室に姿を現わすようになった。そして妻を亡くして気が変になった男ビリー(ポール・ウィンフィールド)が自分で作ったウィスキーを持ってくるからその代償として読み書きを教わりたいといってきたりした。そんなことが契機となったかのように、生徒たちはコンロイのやさしい心づかいに育まれ、知、情、意ともに発達し、コンロイが聴かせるベートーベンの第5シンフォニーを喜んで聴き、詩の暗誦などもするようになった。だが、生徒を白人のおエラ方の気に入るような人間に仕立てあげたいというスコット夫人と対立しない筈がなかった。夫人がおエラ方という白人の1人は、気むずかしい反動的な老教育委員スケフィントン(ヒューム・クローニン)だが、彼はヤマクロウ島にやってきたとき教育は従来の型に準じて行うべきで、教師として常規を逸した行動をとることを禁じると警告した。数日後、コンロイのもとに解職通知が届けられた。スケフィントンの命令を無視して、生徒たちを万聖説に参加させるためビューフォートへの一泊旅行を試みたからだ。コンロイ解職のニュースが島民に伝わると、彼らは憤慨してコンロイ支持のデモを行いストライキを起こそうとした。だが、コンロイはそのことで逮捕されたり、生活保護を受ける資格を失う人が出ることを恐れ、島民をなだめてストライキをやめさせた。コンロイは最後の手段として復職願いを裁判所にもち込んだが、敗訴となり島を出るしかなかった。彼が島を離れる日、生徒や家族が河岸で見送った。コンロイは、悲しそうな彼らの気持を引きたたせるために、いつも教室でやるように生徒に次々と質問を浴びせた。生徒はハキハキと元気よくそれに答えた。やがてコンラック先生を乗せたモーターボートが河面を滑りだすと、メリーは持ってきたテープレコーダーを廻した。思い出深いベートーベンの第5シンフォニーが流れた。それは、生徒たちがコンラック先生に送る哀しい別れの曲だった。