「シネマ歌舞伎 一谷嫩軍記 熊谷陣屋」のストーリー

源平合戦の最中、源氏の武将・熊谷直実(中村吉右衛門)は一の谷の合戦で平敦盛を討ち取り、陣屋に戻ってくる。直実は妻の相模(坂田藤十郎)と敦盛の母・藤の方(中村魁春)に敦盛討死の様子を語り、敦盛の首の検分に備える。やがて主君の源義経(中村梅玉)が現れ、直実は首を差し出すが、その首は直実の息子・小次郎の首だった……。実は、敦盛は後白河法皇の子であり、その母・藤の方はかつて熊谷を救った恩人だったのだ。そのようないきさつから、直実は敦盛を救うため、同じ年齢のわが子を身替りにしたのである。直実は悲しみをこらえ、驚き取り乱す相模と藤の方を制する。敦盛を救う務めを果たした直実は暇を願い、“十六年は一昔、夢だ夢だ”と涙ながらにわが子の短い人生を嘆き、世の無常を悟って、出家するのだった。