「手錠のままの脱獄」のストーリー
豪雨のハイウェイで1台の囚人護送車がハンドルを切り損ない崖から転落した。死者はなかったが白人のジャクソン(トニー・カーティス)と黒人のカレン(シドニー・ポワチエ)の2囚人が脱走した。2人は互いに手首と手首を4フィートの鎖でつながれていたが、心は双方とも相手に対する人種的偏見と憎悪で固まっていた。時をおかずギボンス警部の率いる武装警官隊とルー・ガンスを隊長とする民間人徴集隊が協同で捜索をはじめた。獰猛なドーベルマン2頭を含む警察犬も動員され雨中の山狩りがはじまる。指揮官には治安官のミュラーが当たった。2人の囚人は増水した谷河を渡り、崩れ易い陶土採掘坑に身をひそめ、沼地で食用ガエルをとり、必死の逃走をつづけた。鎖で繋がれた2人は心ならずも協力しなければならなかったが、互いの憎悪はつのる一方だった。食物を求めて、夜更けにある集落の店に2人は忍び入ったが、誤って足を滑らしたジャクスンは手錠で手首を切り、カレンも共に床に転落して、物音により村人たちに捕らえられた。男たちは2人にリンチを加えようとしたが、危うく、長い獄中生活をしたらしい手錠のあとのある大男サムに救われた。なおもあてのない道を進む2人の不安と焦りは爆発して、なぐり合いとなった。この時、2人の鼻先に22口径のライフルがつきつけられた。何とそれは10歳位の男の子だった。カレンは銃を奪うと子供の家に向かった。母親は2人に食物を与え、タガネと金槌を出して鎖を切った。ジャクソンは手首の傷から発熱して倒れた。半年前から夫に捨てられ、2人で暮らしてきたという女は、翌朝、熱の下がったジャクソンに連れて逃げてくれと頼んだ。そして、北に逃げたいというカレンに沼地を抜ける近道を教えた。しかし、カレンが発った後、それが流砂に埋まる死の道だと知ったジャクソンは、女を振り切って憎みきっている筈の黒人のあとを追って行き、カレンを助けた。しかしその時少年の撃ったライフルの弾丸がジャクソンの胸を貫いていた。追手は銃声で迫ってき、警察犬の吠え声がする。鉄道線路にたどりついて2人は、通過する列車にとびついた。しかし、先にはい上がってのばしたカレンの手をジャクソンが掴みながらも、力つきた2人は車外に転落した。捜索隊が追いついた時、虫の息ながら微笑みするジャクソンを膝に、黒人のカレンは静かに民謡を口ずさんでいた。