「菊とギロチン」のストーリー

大正末期。関東大震災直後の日本には、不穏な空気が漂っていた。軍部が権力を強める中、それまでの自由で華やかな雰囲気は徐々に失われ、人々は貧困と出口の見えない閉塞感にあえいでいた。そんなある日、東京近郊に女相撲一座“玉岩興行”がやって来る。力自慢の女力士たちに加え、元遊女の十勝川(韓英恵)や家出娘など、ワケあり娘ばかりが集まったこの一座には、新人力士の花菊(木竜麻生)の姿もあった。貧しい農家の嫁だった花菊は、夫の暴力に耐えかねて家出し、女相撲に加わったのだ。“強くなりたい。自分の力で生きてみたい”と願う花菊は、周囲の人々から奇異の目で見られながらも、厳しい練習を積んでいく。そして訪れた興行の日。会場には、妙な若者たちの顔ぶれがあった。それは“格差のない平等な社会”を標榜するアナキスト・グループ“ギロチン社”の面々。師と仰ぐ思想家の大杉栄が殺されたことに憤慨し、復讐を画策すべく、この土地に流れ着いたのだ。そして、女力士たちの戦いに魅せられた“ギロチン社”の中心メンバー、中濱鐵(東出昌大)と古田大次郎(寛一郎)は、彼女たちと行動を共にするようになる。“差別のない世界で自由に生きたい”。その純粋な願いは、性別や年齢を越え、彼らを強く結びつけていく。次第に惹かれあっていく中濱と十勝川、古田と花菊。だが、彼らの前には、厳しい現実が容赦なく立ちはだかる……。