「呪われた城」のストーリー
一九世紀中ば、ニュー・イングランドの名門といわれたドラゴンウィックのヴァン・ライン家の当主ニコラスは、陰の多い人物だった。ミランダ・ウェルズの父エフレムの忠告を聞かず、この家の娘カトリンの家庭教師として住み込むようになった頃、ニコラスは病妻のジョアナと仲違いをし、また村のキャス・ブレッカーに扇動された小作人たちが、ニコラスを敵視し険悪な状態を呈していた。その間に立って、八方まとめ役をしていたのはジョフ・ターナーという若い医師だった。村祭りの日、ニコラスは自邸の舞踏会でミランダと踊ったが、その夜、ジョアナはジェフの手当も間に合わず急死してしまう。妻の死後、ニコラスはミランダに求婚し、二人の間に生まれた子供が心臓が弱くてすぐに死んでしまったことから、ニコラスは再び昔のような、はげしい憂鬱性に襲われるようになった。彼は塔の上の小部屋に閉じこもって、麻薬の力を借りてわずかに生を楽しんでいる廃人になっている事を知ったミランダは慄然とするが、どうすることもできず、彼女もまた次第に不幸になっていった。この様子をヴァン・ライン家の女中から聞いたジェフは同家にゆき、ニコラスが完全に狂人となっていることを発見するとともに、ジョアナが病死したのではなく、彼が殺害したこともつきとめた。ニコラスはジェフに首にするといい、なおドラゴンウィックの全能の人であるとの自負に酔いながら狂死した。ミランダははじめて解放された気持ちで、本当に信頼すべき人がジェフであることを知ったのである。