解説
一九六九年十月三十日、千葉県市原市で実際に起こった事件に取材した芥川賞作家中上健次の小説『蛇淫』をもとに、両親を殺害した一青年の理由なき殺人を通して、現代の青春像を描き上げる。脚本は元創造社のメンバーの一人で、作家に転向以来五年ぶりに脚本を執筆した田村孟、監督はこれが第一回監督作品の長谷川和彦、撮影は「祭りの準備」の鈴木達夫がそれぞれ担当。
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「青春の殺人者」のストーリー
彼、斉木順は二十二歳。親から与えられたスナックを経営して三カ月になる。店の手伝いをしているのは、幼なじみの常世田ケイ子である。ある雨の日、彼は父親に取り上げられた車を取り戻すため、タイヤパンクの修理を営む両親の家に向った。しかし、それは彼とケイ子を別れさせようと、わざと彼を呼び寄せる父と母の罠だった。母は彼に「順は取り憑かれてるのよ、蛇にぐるぐる巻きにされてる」となじる。早く別れないとあの体にがんじがらめになるという。もともと、スナックを建てる時にケイ子を連れて来たのは父だった。ケイ子は左耳が関えなかった。その理由を順はケイ子のいう通り、中学生の頃、いちじくの実を盗んで食べたのを、順がケイ子の母親に告げ口をし、そのために殴られて聞えなくなったと信じていた。しかし、父は、ケイ子の母親が引っばり込んだ男に彼女が手ごめにされたのを母親にみつかって、たたかれたからで、いちじくの話はケイ子のデッチ上げだという。母親が野菜を買いに出ている間に、彼は父親を殺した。帰って来た母は最初は驚愕するが、自首するという彼を引き止めた。こうなった以上、二人だけで暮そう。大学へ行って、大学院へ行って、時効の十五年が経ったら嫁をもらって、と懇願する。だが、ことケイ子の話になると異常な程の嫉妬心で彼を責める。ケイ子と始めから相談して逃げようとしていたのだ、と錯乱した母は庖丁を手に待った。もみ合っている内に、彼が逆に母を刺していた。金庫から金を奪った彼は洋品店で衣類を替え、スナックに戻った。彼はケイ子に、店を今日限りで閉めると言った。何も知らないケイ子は、自分のことが原因だから両親に謝りに行くという。彼はもう取り返しがつかないと彼女を制した。衝動的に彼がケイ子を抱こうとした時、高校時代の友人の宮田とその婚約者郁子、宮田の大学の同級生日高の三人が訪ねて来た。彼が高校時代に撮った8ミリを皆で見ようというのだ。ガレージの中で、教師と両親を葬れといった内容の8ミリを見終る。順は、日高がトイレに行った時、風呂場で両親の死体を日高に見せる。親とは仲直りして、ごめんなさい、金下さいって言えばいいという日高に、仲直りできない理由を教えようというのだ。日高は、ぶるぶる震えているだけだ。順はケイ子と一緒に、ケイ子のアル中の母親の家に行って、いちじくの一件をたずねるが、八つ手はあったが、いちじくはなかったと、母親はいう。順は、追って来るケイ子を振り切って、一人で家へ戻る。両親の死体をタオルケットで包んでいる時に、ケイ子が家の中に入って来た。ケイ子は、殺人のことを既に知っていたのか、平然としている。彼女も包みを運び出すのを手伝ってから、二人は燃えた。海に死体を捨てたあと、いちじくの話はケイ子の作り話だと彼女から聞かされた。彼の脳裏に幼い日の彼と、貧しい父と母が浮かぶ。食うもんも食わんで、飲むもんも飲まんで、バカだよ。彼は泣いていた。ケイ子は彼と一緒に死ねると思った。「俺はここを燃やしたい、ここじゃなきや燃やしたことにならない」。二人は、スナックにガソリンをまいて、火を放った。梁にロープをつけて首をかけたが死に切れず、ケイ子を連れて外へ出た。見物人の人混みの中で、ケイ子から離れた彼は、一人、走るトラックの荷台から遠い黒煙を見ていた。
「青春の殺人者」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
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キャスト | 役名 |
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「青春の殺人者」のスペック
基本情報 | |
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ジャンル | サスペンス・ミステリー |
製作国 | 日本 |
製作年 | 1976 |
公開年月日 | 1976年10月23日 |
上映時間 | 132分 |
製作会社 | 今村プロ=綜映社=ATG |
配給 | ATG |
レイティング | R-15 |
アスペクト比 | アメリカンビスタ(1:1.85) |
カラー/サイズ | カラー/ビスタ |
音量 | モノラル |
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