解説
野上彌生子原作『海神丸』より、「斬る(1962)」の新藤兼人が脚本・監督した人間ドラマ。撮影は黒田清巳。
ユーザーレビュー
「人間」のストーリー
真夏の早朝、小さな荷役船海神丸は東九州南端の漁村を出港した。船長は亀五郎、船頭は八蔵、最年少の三吉は船長の甥、海女の五郎助が便乗した。食料は盆迄に帰る二日の旅には十分だった。午後になって陽がかげり、黒雲が襲いかかった。夜になっても海は凶暴に牙をむいた。海神丸は竜巻の奈落へ落ちた。夜が明け嵐が収まった。雄渾な夏雲。海神丸の無残な姿。ギラギラ照りつける太陽。もう五日も漂流している。食糧の大半は波にさらわれてしまった。米四升、里芋五、六個、大根二本、たくあん一本が命の綱だった。八日目、太陽は相変らず照りつけている。米がなくなった。水は二合ばかり。亀五郎は、自分の割当ての水を金比羅さんに捧げ祈った。その夜、亀五郎は金比羅さんの幻影をみた。“亀五郎、水はあるぞ”朝になった。中空に雨雲が広がっていた。たたきつけるような豪雨。四人は水をたらふく飲んだ。が、飢は迫ってきた。二十四日目だった。八蔵は船長に食糧を分けろと言った。食糧は四等分された。五郎助と八蔵は、その場で分け前の食糧を全部食べた。三十日目だった。八蔵は五郎助をそそのかした。“三吉を食おう!”夜が明けた。八蔵は三吉を鉈で殴った。血が散った。それを見て二人は恐怖におののいた。二人は動物のように泣き伏した。“三吉ゆるしてくれ!”。太陽が真っ赤に燃えて沈んでゆく海に、三吉の屍が水葬にされていった。その夜、亀五郎は、金比羅さんのお告げの夢をみた。船に救われるのだ。朝になった。三人は水平線上の船を見た。五十九日目だった。貨物船で彼らは医者と食べ物の手当を受けた。大島が見えた時、不意に五郎助は立ち上った。狂ったのだ。五郎助は下甲板に落ち死んだ。船は横浜に着いた。突然八蔵が異様な悲鳴をあげ、ナイフで胸を刺し海へ落ちていった。船の鋭い気笛が長く尾をひいて止んだ。
「人間」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
---|
キャスト | 役名 |
---|

「人間」のスペック
基本情報 | |
---|---|
ジャンル | ドラマ |
製作国 | 日本 |
製作年 | 1962 |
公開年月日 | 1962年11月4日 |
上映時間 | 116分 |
製作会社 | 近代映画協会 |
レイティング | |
アスペクト比 | シネマ・スコープ(1:2.35) |
カラー/サイズ | シネスコ |
関連するキネマ旬報の記事
関連記事一覧 | |
---|---|
1962年8月下旬号 |
新作グラビア 人間 三つの異色作を撮影現場に訪ねる 人間 |
1962年9月下旬号 | 特別グラビア 「人間」の新藤組 |
1962年12月下旬号 | 日本映画紹介 人間 |
1963年1月上旬新年特別号 | 日本映画批評 人間 |