解説
この作品のレビュー
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ミャーノフ大佐
マキノ雅弘が日活で映画を撮っていたなんてびっくり。マキノは東映の監督だとばかり思っていた。ウィキおじさんによると、マキノは同じ題材で1950年にも東映で撮っているんだね。しかも1950年版は脚本が黒澤明だ。これも観てみたいねえ。本作は脚本もマキノが書いている。2度目の映画のせいか脚本もよくこなれていて、台詞回しも役者の演技も上手い。
役者は、主人公殺陣師段平役に森繁久彌、妻で髪結いのお春役に山田五十鈴、そして預かり娘おきく役に左幸子。このとき、森繁は40歳を少し超えたくらい。山田が40歳前、左が20代半ばだ。森繁は脂ののっている頃だろう、最初誰か判らなかったくらい老け役をよくこなしている。
映画の中で、新国劇、沢田正二郎、倉橋仙太郎の名前や固有名詞が出てくるので、事実からの脚色であろう。新国劇って言っても殆どの人が知らないだろうなあ。島田正吾や辰巳柳太郎、緒形拳がいた劇団と言っても判らないか。沢田正二郎、倉橋仙太郎の役をやった河津清三郎、水島道太郎は後の映画で悪役のイメージなんだけど、確かに画面で見ると悪役の顔かな、と思う。
映画の最初、森繁と山田の掛け合いを観ていると「夫婦善哉」かと思ってしまった。この2人の掛け合いが実に上手い。森繁もこんな遊び人の役は得意の物で板についているし、それに対する山田の掛け合いも愛情を感じさせる上手い演技だ。山田演じるお春が実に愛しく見えてくる。前半のこの2人の掛け合いに時間があっという間に過ぎていく。そこにちょこちょこと左幸子が絡んで来て、それが浮いていないんだよな。前半はこの3人で引っ張っていく。山田が前半でいなくなるのが非常に惜しい。
前半から十数年経って後半。中風で倒れ寝込んでいる段平に友人が訪ねてくる。友人と新国劇の舞台”国定忠治”を観劇して、自分だったらラストはあんな殺陣はしないと言って寝床で殺陣を演じる。段平に変わっておきくが新国劇の劇場に向かい、沢田正二郎に殺陣をつける。
ラスト15分は左幸子の独壇場だ。もう彼女の演技で持っていっている。これだけの役者たちの中で、一歩も引けを取らずに引っ張っている。もう大女優になっている。
ストーリーはお涙頂戴の昭和のメロドラマだって?それのどこが悪い。役者が良ければお涙頂戴映画だって立派に観客を唸らせてくれるのだ。
高品格が出ていることで日活映画と判るくらいかな。
「人生とんぼ返り(1955)」のストーリー
「人生とんぼ返り(1955)」のスタッフ・キャスト
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