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夫・弘明を亡くして１年。田中路子はホームヘルパーの会社に登録し、住み込みの家政婦の仕事を探していた。ある日路子は、大学教授・五十嵐等の家の仕事を紹介される。独身の五十嵐は数学の教授で、毎日をスケジュール通りに生活している暗い感じの男だった。「あなたは、言われたことだけをやってくれればいいですから」路子にそう言う五十嵐。路子は、性欲の強い女だ。宛がわれた部屋で位牌を見ているうちに夫のことを想い出し、ひとりＨしてしまう。すると、位牌から弘明の亡霊が飛び出て来た。路子のあられもない姿を見て、状況を察する弘明。「お前、また……!?」　路子に体を求められる弘明。「こんなんじゃ、おちおち死んでもいられない。誰かいい人でも見つけて、さっさと再婚してくれ」翌日。掃除を始める路子。２階に、ひとつの部屋を見つける。中を覗くと、どうやら女性の部屋らしい。伏せられた写真立。見ると、ひとりの女性が写っていた。「奥さんがいたのかしら？」　路子は、五十嵐が帰宅すると、２階の部屋のことを尋ねた。すると五十嵐は、「言い忘れてましたが、あの部屋には入らないで下さい。妻は――死にました。妻は、私の助手であった男と浮気をし、その後、事故で亡くなったのです」と答えた。愛し合っていると信じていた妻・和代が、よりにもよって自分の助手・橋本公平と浮気していたなんて。以来、五十嵐は研究に没頭し、数字以外は信用しなくなってしまった。部屋に戻った路子は、弘明の亡霊にたしなめられる。「お前はいつもそうやってお節介なんだ」反省しきりの路子であった。朝、路子は、五十嵐を散歩に連れ出す。　近所の河原を歩く路子と五十嵐。最初は気乗りのしなかった五十嵐も、気持ちのいい風にあたるうちに心ほぐれていった。夜。気分転換したお陰で研究が進んだ五十嵐は路子とふたりで酒を飲む。やがていい雰囲気。五十嵐は、路子の体を求めた。ところが事後、五十嵐は薬指にはめていた指輪がないことに気づき、ひどく動揺する。「河原だ、きっと河原に落としたんだ。いつもそうなんだ、予定と違うことをするとロクなことにならない」路子は責任を感じて自ら家政婦を辞める。そして路子は河原で五十嵐の指輪を探し始める。必至に探す路子の姿を見て、弘明の亡霊もそれを手伝った。数日後。お陰で、指輪を見つけることが出来た路子は、それをこっそり五十嵐の家に届けに行った。すると、五十嵐と鉢合わせした。五十嵐は、路子が戻って来てくれたと勘違いして、家に招き入れた。五十嵐は、路子が見つけてくれた指輪をはめなかった。「これを落としたのは、きっと妻のことを忘れろということなんだ」　再び、路子は五十嵐の家で働き始めた。だが、以前よりずっと家の中は明るくなった。ある夜、路子は五十嵐に告白される。「学会での発表が終わったら、旅行にでも行きませんか」それは、紛れもないプロポーズに違いない。嬉しさを隠せない路子であった。だが、学会の日、五十嵐の家に和代が現れる。和代は、五十嵐を愛していたが研究ばかりの五十嵐に不安を感じてもいた。そんな心の隙間。和代は、橋本の求めによろめいてしまったのだ。夫を裏切ったことへの自責の念。和代は橋本とも別れ、自ら家を出た。しかし、一日だって夫のことを忘れたことはないと告白する。路子は、五十嵐がまだ和代のことを愛していると伝える。夜、学会を終えた五十嵐を待っていたのは和代だった。ひとり、トボトボと会社へ帰る路子。そこへ、弘明の亡霊が現れる。「お前もホントお人好しだな。でも、そこがいいんだ」１年後、五十嵐夫婦から手紙が届く。どうやら、和代が妊娠したらしい。喜ぶ路子と、それを見つめる弘明の亡霊だった。