彼の見つめる先にの映画専門家レビュー一覧

彼の見つめる先に

思春期の心の揺らぎを掬い取り、第64回ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞およびテディ賞に輝いた青春ドラマ。幼馴染のジョヴァンナに支えられながら高校に通う目の見えないレオ。ある日ガブリエルが転校してきたことから、3人の気持ちが変化していく。2010年製作のエル・ヒベイロ監督短編作品「今日はひとりで帰りたくない」(原題:Eu Não Quero Voltar Sozinho /英題:I Don't Want to Go Back Alone) が人気を博したことから、同じキャストを起用し長編映画化した。2015年アカデミー賞外国語映画賞ブラジル代表作品。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014長編コンペティション部門脚本賞受賞。ブラジル映画祭2015上映作品。
  • ライター

    石村加奈

    南国ブラジル・サンパウロに降りそそぐ夏の光、ダンスにはもってこいの、ベル・アンド・セバスチャンのポップなナンバー「トゥー・マッチ・ラヴ」、なかよし男子の自転車の二人乗り……我が好物がズラリと並んだ、みずみずしい青春映画だ。主人公のレオナルド少年が、盲目でありゲイであることに、観る者が身構える必要がないストーリー構成は、それらのモチーフに対するダニエル・ヒベイロ監督の厳しさ、熟慮に因るものだろう。レオの幼なじみ役、テス・アモリンも素朴でかわいい。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    目の見えない少年が両親の保護圏から脱し、同性愛に目覚める経緯がじつにいじらしい。サンパウロの山の手地区でのロケは、貧困や非行、暴力や無秩序というブラジル映画の一般的イメージを、優雅な佇まいによって根底から覆してくれる。少年は困惑と愉悦の入り交じった場へと身を置いていく。点字タイプライターの打鍵音や、折り畳み杖が伸びる際の金属音など、彼はさまざまな聴覚の中に生きる。これに映画館で説明役を務めるBFの囁きが加わるだろう。彼の聴覚的人生に幸あれ!

  • 脚本家

    北里宇一郎

    なんだろう、この自然さは。盲目の少年が主人公といえど、その不自由さに重きを置いてないし。性の目覚めがあって同性が好きになっても、話はシンコクにならないし。男子2人と女子の三角関係のもつれに行くのかと思わせて、そっちにも傾かないし。ただもうそこにこんな奴らがいて、気が合うから付き合ってるんだけど、そのどこが悪いの? てなスタンスで。障碍とかゲイとか性差とか、声高に大仰に、その悲しみ苦しさを訴えるより、この在りのままでいいじゃんがいいと思った。好篇。

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